疑惑浮上
「父からいつか女神様が現れて鏡を
受け取りに来るだろうからアグオス
帝国でその兆しがあれば見逃すなと
言われここ何百年と偵察していた
のです。我々には女神様がどういう
現れ方をするのか見当もつきません
でした。1000年前に行方不明になった
女神様本人が何処からか現れるのか
それとも生まれ変わって来るのか。
すると密偵から女神様らしきオーラを
持っている少女が生まれたと知らせを
受けました」
なんとまー。そんな前から張ってた
とは。
「それがディアだったのですか」
レオンお父様が愛おしそうに私の頭を
撫でながらエルフ王を見る。
「そうです。先日もお話しをしましたが
本当かどうか女神様が出席してい
たパーティーに行って初めてお会いし
そうかもしれないと私は思いました」
あ、私が数回しか出席していない幻の
パーティーな。
「女神様は生まれ変わったのか?だとしたら
1000年前の女神様はお亡くなりになった
という事になります。それを父に報告致し
ましたらあの女神様が!?あの誰よりも
お強い女神様が?と父も驚き最初は信じ
ていませんでした。1000年前の女神様を
知っている父の反応を見て私は確信が持てず
迷っていました。そのような時、女神様の
ご両親が亡くなられたと聞いてこれは
女神様に何かあってはと思いこの三男の
メルカルロを内密に向かわせたのです」
エルフ王からそう言われてメルカルロ様
はぺこりとお辞儀をした。
可愛すぎるから止めろ。
「エルフ王の三男メルカルロです。
女神様を内密に守る為に幼い頃から
一緒にいさせて頂きました。私を
メイドとして女神様の側に付かせて
頂いた事をレオン様に感謝致します」
心地よい低音の声で事情を語る。
「ああ、それは礼には及ばない。私は何
も知らされていなかったのだし。本当に
王女様だと思っていたのだ。今回の事件
まで。倒れていたメアリーを見て驚いた。
男性になっていたからな」
そうだったんだね!
「え?じゃあ、本当に内密の内密だったん
ですか?」
「そうです。この事を知っていたのは祖父と
父の現エルフ王そして私だけです。大体の事は
既に聞いていると思いますが私は皇帝陛下に
王子のメルカルロではなく王女のメアリーと
偽ってこちらの国に留学したいと言ったのです。
そして自らレオン様のお屋敷にメイドとして
社会勉強をさせて欲しいと願い出たのです」
「ああ、俺もまんまと騙された。『私の
娘のメアリー王女です』なんて普通に言って
きたからな」
皇帝陛下がニヤ顔で言ってるけどこれは
知ってたって顔だなー。絶対そうだ。
本当の目的が分からないから泳がせてた
ってとこか。ヴィンセット家なら何かあって
も対処出来る力があるもんね。
とんだタヌキ親父だな!
皇帝陛下は私と目が合うと一瞬『お?お前
分かったのか?』
って表情をしたけど直ぐにいつものニヒルな
イケオジに戻った。
「それでメアリーとしてずっと一緒に居てくれ
たんですね。ありがとうございます……」
って、ちょっと待って。
お風呂の時ってどうだった?
着替える時ってどうだったよ?
疑惑浮上だ。
トイレは……。うん。大丈夫だ。
扉の前で待っててくれた。中まで
は入って来なかった。
その事にレオンお父様もルイお兄様も
ノアも気が付いたらしく部屋の温度が
一気に下がった。
「ぶわぁ!何だ?突然冷気出さないでもらえ
るか?」
サイラスがヴィンセット家の面々に抗議した。
「もしやディアのお世話事についてか?」
アダン殿下が青スジを立ててるルイお兄様に
問いかけた。