真実②
「お前がその汚れた口で言って良い名前
ではないのだよ?ソフィア姉上の名前は」
学園長がまたクラリス様を蹴ろうとした
ので私は咄嗟に口を開いた。
「母様の事……き、聞きたいなぁ〜なんて……」
うわっ!めちゃくちゃおばちゃん語になちゃっ
てるんだけど。でも、もうそんなの気にして
られん。
「ふふふ。私の妻が聞きたがっているから昔話
でもしようかな?」
何回も言うが妻では……ない。
「ソフィア姉上は天使だった。9歳でブロスト家
に引き取られた私は今更馴染めるとは思って
いなかったんだ。そんな暗闇の私の世界にソフィア
姉上が『初めまして。私の弟くん』と笑顔で話しかけ
てくれた時から小さな光が差した」
もう最初から闇落ちしとる。
「私はソフィア姉上の為だけに生きる事を決めた。
成人したら結婚を申し込もうと決め相応しい
男になる為に色々頑張ったよ」
昔を思い出しているのか遠くを見つめている。
「え?血が繋がってる姉弟ですわよね?結婚は
無理……」
うぉぉぉーーーーい!私も思ってたけど口に出したら
いかん!即抹殺されるぞ!?
「11歳の時にソフィア姉上に大きくなったら
結婚して欲しいと言ったんだ。そしたらニッコリ
笑って分かったと言ってくれた。その時は本当に
嬉しかったよ」
よ、良かった。クラリス様の言葉が届いてない
ようで……。ていうか聞いてないよね。
「ですからそれはまだ幼いから本気の言葉とは
思っていなかったのではないですの?」
あちゃー。ダメ、ダメ、ダーーーーーメ!
お口にチャックしなさい!
「それなのにある日婚約者だと言って
ロノフ・ヴィンセットを連れてきたのだ。
私は最初何を言っているのか理解が出来な
かった。しかし結婚の日取りなどが着々と
決まっていく」
当時を思い出してしまっているのか絶望的な
雰囲気を出して顔を両手で覆う。
美丈夫だからそんな舞台俳優みたいな仕草も
お似合いです。
「結婚してソフィア姉上が屋敷から出て行って
しまってから私はもう空っぽになってしまっ
てね……。空っぽになった体にドス黒いモノが
入って来る様な感じがしたよ。そしてそれは
私の中をいっぱいにした」
ふふふ。と笑って私を見る。
えーと、話を聞く限りでは最初から闇落ち
してましたけどね。
「ソフィア姉上?私はその時にとても良い
事を思いついたのです!」
「そ、その人は貴方のお姉様ではないわ……」
学園長の目には私は映っていない。
彼の目に映っている私は母様なのだ。
そのおかしくなっている学園長にクラリス様
は現実を見せようと言葉をかける。
ええ奴じゃん、クラリス様!
でも、もう学園長には届かないよ。
完璧におかしくなってるし。いや、最初
からおかしいのか。