肉体改造計画③
ルイお兄様の肩越しから覗いてきた男性は
サラサラの銀髪を短く刈り上げ少し日焼けした
肌がなんとも色っぽくエメラルドグリーンの
瞳は宝石のように光っている。
男の色気満載の美少年だ。
その美少年がニヤリとしながら言った。
「これは、これは、団長殿の姿が見えないと
思ったらディア姫とお話し中でしたか」
『ディア姫』……。『ディア姫』!!!
懐かしい呼び方!!!
私、この人知ってる……。
「キルア、早く訓練にもど……」
ルイお兄様が後ろを振り返ると訓練場にいた
騎士様達がわらわらと集まって来た。
「これが……」
「……さ……かぁ……」
「いや……やま……み……」
と、私を見ながらザワついている。
はやり幻のツチノコ扱いか?
「お前達!訓練に戻れ!!!!」
ルイお兄様が素早く私を自分の後ろに隠しなが
ら騎士様達を一喝すると皆んな蜘蛛の子を散ら
すように戻って行った。
わぁ!ルイお兄様ってばきちんと団長なんだね!
「あははは〜。ディア姫のこと誰にも見せたく
ないもんだから。ルイの宝物だからなぁ」
「お前も戻れ。それに『ディア』呼びを許した
覚えはないよ?」
「いいじゃないか。俺とルイの仲だろう?」
そう言ってルイお兄様の首に腕を巻き付ける。
その腕を引き剥がそうと踠くルイお兄様。
何だか珍しい光景だ。
そんなじゃれ合っている2人を見ながら私は靄が
かっている記憶を探る。
あぁぁ。そうだ。この人はキルア様だ。
『グリ』の中でもトップクラスの貴族様。
モーデ家の長男だ。
ルイお兄様よりひとつ上で18歳の幼馴染。
幼少の頃にレオンお父様に魔力と剣術の才能を
見出され目をかけられている。
小、中、高とルイお兄様と同じ学園に通いずっと
一緒にいると言っても過言ではない。
ルイお兄様は先に学園を卒業してしまったけど。
「……クッキー王子?」
その言葉を口にした途端にキルア様との記憶が
鮮明に蘇る。
「おぅ?そうだ!クッキー王子だぞ!!覚えてて
くれたんだな!」
「あっ、は、はい」
キルア様……話し方や笑い方がセイさんと似てる。
だからかな、記憶に残ってるのは。
「5年前だったけ?ディア姫、あの頃は小さかった
のに今では立派なレディーになったなー!そして
お付きのお二人さんも成長してる!」
ニッコリと微笑みながら私に近づいてきた。
お色気ビーーームが私を貫く!ぐはっ!
「5年前?何故お前がディアと会ってるのかな?」
ダークなオーラ出まくりのルイお兄様……。
「だってあの日よ、お前に呼び出されてここに
来たのにまだ王城から帰って来てないって言われ
て。暇だからうろうろしてたら丁度ディア姫が1人
でお茶してて。そこにご一緒させてもらったんだよ
そこのお2人さんも居たよな?」
キルア様はエドとメアリーを見た。
「はい。お嬢様とご一緒にクッキーを召し上がられ
ておりましたよね?殿方とは殆どお話しされない
お嬢様が初対面でしたのにキルア様には心を開いて
おいででした!」
メアリーが懐かしげに微笑んだ。
「あの時は1ヶ月ぶりくらいにお嬢様がヴィンセット
家の方以外に笑顔をお見せになり驚いたのを覚えて
おります」
エドが頭を下げた。
は〜?何なの私。偉そうな!一丁前に人見知りか?
記憶戻る前の私ってホント殴ってやりたい時が
多々あるな。
「へぇ〜。キルアはディアの可愛い笑顔をその時
みたんだね……。ところで何で『姫』なのかな?
その時からなんだろう?どんな話しをした?」
ルイお兄様の体が小刻みに震えだしたけど大丈夫
か!?体調悪いの?