side ユーリ・ブロスト
明けましておめでとうございます♪
今年もゆるりと更新していきますので
どうぞよろしくお願いします!
全てマーカスの仕業だったなんて。
マーカスは父上の婚外子だ。
母親は平民で金遣いの荒い女だった。
父はその女とマーカスの生活費として多額の
金を毎月渡していた。
しかし女はその金のほとんどを遊ぶのに使い
マーカスは満足に食事もさせてもらえていない
状態だった。
そして女は9歳だったマーカスを1人家に置き去り
にして姿を消した。一時的に施設に保護された
マーカスは背中に神殿一族の証である痣があり
施設の者が連絡してきた。
魔力鑑定してみると神殿一族と同じ聖力を持って
いる事が分かり我が家で引き取ったのだ。
力を持っていなくても引き取ると父が最初に
言っていたからホッとしたのを覚えている。
ブロスト家に来てから我々家族は分け隔てなく
マーカスに接してきた。そう思っていたの
だが違ったのか?その様に曲がった人格に
育ってしまう程ブロスト家は居心地が悪かった
のか?
「僕は少しでも兄上達のお役に立てるよう
頑張って勉強します」
はにかんでそう言っていた幼い頃のマーカス
が思い出される。いつも素直で大人しく
聞き分けの良い子だった。
「神殿殿、マーカスが隠れていそうな場所に
心当たりは?」
その言葉で我に返った。
そうだ、今はマーカスに連れ去られたディアを
探し出す為の会議中だ。
「ここ数年はあまり会話もなかったから彼が
どういった場所に行っていたかなどは全く
分からない……」
「魔力も追えないとなると居場所を見つける
のは困難だな」
皇帝のジャンが渋い顔をして言った。
「あんなに強い魔力を隠し持っていたとは。
私達一族をずっと騙していたのだな」
直ぐ下の弟、ルロがため息をついた。
「何か方法はないのか!?弟の……ロノフの
事件にも関わっていたとするとディアの
命も危ない!あの子は魔力を持っているが
使えないのだ!」
いつも冷静なレオンが叫んでいる。
私も変な汗が出ている。身内が侵した
罪のせいというよりもソフィアの失踪に
マーカスが関わっている可能性が出てきた
からだ。私の大切な、大切な妹。
そのソフィアに何かしたのがマーカス
なら絶対に許さない。この変な汗は
怒りから出ているのだと分かった。
マーカスは誰よりもソフィアを愛していた。
その事を知ったのはソフィアの結婚が決まった
時だった。ソフィアもマーカスから離れる
し良かったと安堵したものだ。
しかしソフィアが嫁いでもずっとその想いを
変わらず持っていたのかと思うとゾッとする。
あの控えめな笑顔の下で恐ろしい事を
考えていたとは……。
マーカスの魔力レベルを鑑定した結果、魔王
と同じレベルだと判明した。
そんなマーカスが簡単に見つかる筈が無い。
ディアはソフィアの娘だ。
嫌な予感しかしない。
レオンの言う通りディアは膨大な魔力を持って
はいるが使えないのだ。
カーペットに残った大量の血。ディアの血だと
いうのは間違い無い。あれ程の量を吐いたの
なら普通の人間ではもう体はもたない。
早く見つけ出さないと。
しかしマーカスの居場所を見つけられる奴
など……。もう魔王か悪魔かしかいない。