アクアの事情④
「色々な道具が発達してるの!決して
変な国ではなぁぁぁい!」
久しぶりに大声出したな。
「分かった、分かった。そんなに興奮すると
また鼻血出るぞ?」
はい。大人しくします。
「ま、そんなんで女神ちゃんに近づいて
みたわけだ。そしたら魔力も使えんし女神
ちゃんだった時の記憶もない。可哀想に思っ
てさ。1000年前の女神ちゃんの計画に支障が
ない程度なら少し教えてあげようかなってね」
「アクアってホントいい奴!」
「その笑顔、あんまり男の前でするなよ〜」
え?無茶苦茶、不気味だった?
地味に落ち込むわ。
「はい」
シュンとしてしまった私を見てアクアが呟いた。
「本当に全然分かってねーのな。チビの方がまだ
マシか?」
『チビ』それ前も耳にした!
「チビとは誰で〜すかぁ〜?」
「……聞こえてたか」
「うん。前にも言ってたよ?想い人?」
「……そうだな」
「そうか。その娘、守りたくて現魔王監視
してたの?」
「変に勘だけはいいな」
失礼な!『変に』は余計だ!
「その娘も現魔王と絡んでんだね。私と同じか。
話してみたいわ。無理だろうけど」
「無理だわな」
「うん。だよね。それで収穫はあった?」
「ああ、それなりにな」
「良かった」
アクアにそう答えたら突然に眠たくなった。
「あ、それ育ててるやつに魔力取られてるぞ。
今は休め。そして明日早速イチャイチャして
魔力を吸収しろよ?体に密着した方が貰える
魔力も多くなるからな?分かったか?」
「う……ん。密着ね……待って……私……
寝ちゃったらアクア居なくな……ちゃう……」
ダメだ。眠くて死ぬ。
次の日の朝。小鳥の囀りで起きた。
爽やかだな。
やっぱり、当たり前だけどアクアは居なかった。
きちんとお礼言ってないのに。
ちょっとだけど結構貴重な事教えてくれた
のに。
「お嬢様、本日はこちらのお洋服でいかが
ですか?」
ボケ〜といていたらメアリーがワンピースを
持って立っていた。
「あら?可愛いですわ」
「お嬢様が落ち込んでいるのではと思い
まして元気の出る可愛いお召し物を持って
きました!」
相変わらず声デカい。
「何故私が落ち込んでいると思うの
かしら?」
顔とか変?
「悪魔の護衛騎士が居なくなってしまった
ので。お嬢様と仲が良かったではありませ
んか」
メアリーが笑顔でサラッと言った。
へ?何でメアリーも覚えてるの?
「お嬢様、私、これでもエルフ一族なもので
普通の人とは少し違うのです」
「そ、そうなのですの!?」
え?エルフ一族も悪魔と戦えるぐらい魔力が
強いの?そうなの?
でもメアリーが魔力使ってるとこって見た
事がない。
この屋敷では魔力禁止だし。
「もしかしてメアリーはとても強い魔力が
使えるのかしら?」
「悪魔が何か言っていたのでしょうか?」
「アクアは皆んなの記憶を消したと言って
ましたわ。でも悪魔と同等に戦える魔力を
持っている人達はアクアの事を覚えて
いるのだとも言っていましたの。
それで……」
メアリーは可愛いワンピースをささっと
私に着せながら微笑んで何も言わなかった。
だから私もそれ以上は訊かないことに
したよ。
クラリス様が投獄されていた監獄から
姿を消したと聞いたのはその日のお昼過ぎ
の事だった。