女神様の教会②
「女神様が最初にお建てになった教会は
『シュピール教会』といいます。シュピール
とはその村の古い言葉で『希望』という
意味だそうです」
へぇ〜。希望か。良いね。
「そしてシュピール教会の聖歌も村に昔から
伝わっていたと言われている子守唄だそう
ですよ」
教会の聖歌って学校で言ったら校歌みたい
な感じか?
それが子守唄とはそれまた独特だな。
「そこまで聞くと平和の象徴のようですが
シュピール教会を建てた3年後その村は
戦場の舞台となってしまうのです。
そうです。あの有名な魔王討伐です」
へ?そうなの?その村でアクアのお父さん
鏡に入れられちゃったの?
「それは、それは凄い戦いだったと伝え
られています」
アクアも言ってたな。凄かったって。
でもそれ冤罪な。
私はチラリと隣のサイラスを見た。
無表情だ。彫刻のような美青年が無表情
だと怖い。
当時を思い出しているのだろうか?
ここは触れないでおこう。
それはそうと、私、そのシュピール教会
にとても行ってみたい気がする。
何故だか分からないけど凄く気になる。
そう思っていたらチャイムが鳴り授業が
終わった。
「サイラス様、今日ランチご一緒しても
よろしいですか?」
同じ歴史を取っていた女生徒がサイラスに
近寄って来た。
もう1人居た女生徒も
「私も是非ご一緒したいですわ」
と言って少し恥じらってる。
2人共めちゃくちゃ可愛いじゃん。
あとは若い者たちで……ってサイラスは
おじいちゃんだったか。
まあいい。若者よ!アオハルしてね!と
私はサイラスの隣で教科書とノートを
持って教室を出ようとした。
するとニョキっとサイラスの腕が伸びて
きた。
「ごめんね。先約あるんだ。また今度
誘ってよ。ね?」
そう言いながら私の肩を引き寄せた。
何だと!?先約って私かい!
約束しとらんがな!
うん。分かったと残念そうに女生徒2人は
教室を出て行った。
「えー!折角可愛い子からのお誘いです
のに。ランチしてきたら良いのではない
ですか?」
「ディア以外の女とはランチしねーよ」
うん。そーゆー言い方が学生らしく無い。
いいけどさ。
「姉様!もう授業終わりましたか?ランチ
に行きましょう!」
ノアが教室の中に走って来た。
ああ……今日も我が弟が可愛い。
朝も会ったがいつ何時会っても可愛い過ぎる
のですけど。
「わ。サイラスも同じ授業受けてたんだ」
「何だ?その無感情な言い方は」
そんな戯れ合う2人を見ながら食堂へと
向かった。
「でね?その教会とても気になってしまって。
行ってみたいのですわ」
私は相変わらずノアにランチを食べさせて
もらいながらシュピール教会の話をした。
時々横からサイラスのフォークも出てくるが
ノアによって阻止されてる。
サイラスのフォークに刺さってる料理も
美味しそうなんだけどな。
あ、一応言っておくけど毎回、自分で
食べると言ってフォークを持つんだよ?
でもそのフォークをノアに取り上げられ
ちゃうんだよね。抵抗してみた時もあった
けど、もうね、力の差っていうの?
諦めた。
「その村ってバルガー村ですよね?そこなら
父上が治めている場所ですよ?父上におねだり
してみてはどうですか?行ってみたいと」
ノアがニコニコしながら教えてくれた。
何と!そんな偶然ってある?
それはラッキーだ。お許し出るかも?
私はモグモグしながらニンマリと微笑んだ。
「学園でもノアに食べさせてもらってる
とは……。驚きだな」
斜め後ろから聞こえた声に振り返るとそこには
イザーク殿下とアベル様が立っていた。