これからの事⑤
「そうだ。私はアーサー王の生まれ変わりだ。
それに気がついたのは昨年の春頃だが」
昨年の春頃?私がアフロなおばちゃんになった
頃と同じ。
そう思った時、エドの体もピクリと動いた。
同じ事思ったよね。
やっぱり魔王を倒す為に1000年の前の仲間が
集まる感じになっているのだろうか?
「私にはアーサー王の記憶がある。1000年前の
記憶だ。今はその記憶を頼りに悪魔に対抗出来る
戦い方や魔力の使い方を騎士達に伝授している
ところだ」
昨年の秋ぐらいから赤騎士団だけに特殊訓練をし
ていたのは悪魔対策だったのか。
キルア様も最後にアダン殿下から教えてもらった
術で悪魔に反撃してた……。
「サイラスも本当の大魔導師のサイラス・テイラ
ーだ。学園で話しかけられた時には気がついてい
たのだが私の前世を公にしていなかったものだか
らあの場では知らない事にしたのだ」
「あ、それで女神エールと」
「分かってくれていたのかい?そうアレは1000年
前に流行ったエールだ。今は無い。その言葉で
サイラスも私が分かっていると確信してくれて
大人しくなってくれたのだ」
「私は1000年前の記憶がございませんので女神
エールの存在は知りませんが今飲めるエールの
種類にそのような名前のが無かったですしわざわざ
『女神』と言ったのが気になっていましたので、
もしやサイラス様に暗号のようなモノを言ったの
かと」
「コレは凄い。流石ディアだな。何でもお見通し
なのかな」
アダン殿下が目を細めて微笑んだ。
ぴぇ〜!いい男だよ、まったくよ!
ドキッとするよ〜。
ん?こんな気持ち前もアダン殿下に対して持った
気がする。恋なのかって悩んだやつだ!
もしかしてこの気持ちって……。
ポレットの気持ちだったりする?
「それでサイラス様は今どうしているのですか?」
私はドキドキしながら質問した。
「ああ、奴は城で保護している。保護という
より住んでいると言った方がいいな。ディアに
も会いたいと言っていた。今、呼んでも?」
私も少し話したいかも。
厨二病呼ばわりしたことも謝りたいし。
いや、サイラス本人には厨二病だって言ってない
けどさ、なんか、ね?
「はい。私も少しお話をしたいですわ」
そう言った途端に扉が開いてサイラスが入って
来た。おぬし!最初からそこに居て聞き耳立て
てたな!?
「良かった〜。会いたくないなんて言われたら
ショックで気絶するところだったぜ」
サイラスが戯けながらアダン殿下の隣に座った。
ルイお兄様が一瞬嫌な顔をしたが直ぐにスン顔に
戻る。あ〜、サイラスとルイお兄様って絶対に
相性悪いやつ。
「そんな会いたくないなんて言いませんわよ?」
ふふふと私は笑う。
「そうやって笑ってるとあのポレットが笑って
るみたいで信じられないな」
ポレットってそんなに笑わない人だったのか?
「記憶の事は本当に申し訳ないですわ。全然
思い出せないのです」
「仕方ないよ。何か事情があるんだと思うし。
それに今のディアも自分だからってポレットも
言ってたしな」
サイラスがニンマリと笑う。
「ポレットとは全然性格も表情も違うけど
それはそれで面白いからいいよ」
サイラスが軽い感じで言った。
「いいよ、とは?いいよ、などと言って
欲しくはないのですが。我々にとって
お嬢様は唯一のお方なのですよ?」
エドが突然に口を開く。
しかも怒っている。
「エド、良いのです」
揉めそうなので。それにそんなん
どーでもいい。おばちゃんだからか?
面白いからいいよで全然いいよ。
ルイお兄様もエドの言葉に頷いている。