学園で事件です⑪
ポレットは体に巻きついていた悪魔の腕を
一気に引きちぎり体から離す。そして自分
の首元をさすり右手もチェックするように
見る。首も指も治っている。
これが自己治癒力なのか?
「お前達、悪魔が言っていた通り平和ボケ
だ。バカたれ共が」
ポレットは呆気に取られている皆んなの
方へと歩き手前で止まった。
すると皆片膝をつき一斉に頭を下げた。
ポレットのオーラが凄すぎて自然とそう
なるのだ。圧倒的な上に立つ者の
オーラだ。
「今のトップはお前か?あ?そっちのお前
もか?いいか?この国を守りたければ
これから言うことをよく聞け。まずは平和
ボケを解消しろ。いつ悪魔が攻撃して来ても
いいように騎士達に戦い方を教えろ」
ポレットが皇帝陛下とユーリ様に向かって
言った。
「「はっ!」」
2人は今までにないくらい真剣な声で
返事をした。
「ポレット、それは俺が少し前から一部の
騎士達に教え始めたばかりだ」
アダン殿下が友達にでも話すように気軽に
話してくる。
え?アダン殿下ってポレットの前だと一人称
が『俺』なの?なんか意外だわ〜。
「アーサー、もっと早くに教えておけ。遅い。
お前まで平和ボケか!呆れるぞまったく!」
「あはは。1000年振りにポレットに怒られた
な。やはりいい。お前に怒られると気合いが
入る。言い訳ではないが俺も前世を思い出した
のが少し前なんだ。許せ」
アダン殿下が嬉しそうに話してる。
やっぱりアーサー王の生まれ変わりだったんだ。
「それにサイラス。お前は馬鹿なのか?何故
不老不死になった。一生死ねないのだぞ?」
ポレットに怒られたサイラスは涙ぐんで
笑った。嬉しそうだな。
「それはお前を探す為だ。後悔はしていない。
そしてお前だけが俺の命を終わらせる事が
出来る術もかけた。次に魔王を倒したらお前と
一緒に死ぬつもりだ」
うっそぉぉー。重い。重いわ〜。
ポレットすなわち私がサイラスの命を終わらせ
られるって事でしよう?
ちょっと勘弁してくれ。そんなの勝手に相談なく
かけないでくれ。
「それは更に馬鹿だな。まったく」
そう言ってポレットは微笑んだ。
自分なのに全然違う人だ。
なんて魅力的なんだろう。
なんて素敵な女性なんだろう。
「ヴィンセット家の者ども。今世で私を
守り育ててくれた事に感謝する。今言って
おかないともう礼を言える時が無いからな」
「「「はっ!」」」
3人も緊張した声を出す。
「それはどう言う意味だ?」
アダン殿下の眉間にシワがよる。
「私がこの体の表に出て来れるのはこの
一回きりだ。クラウディアが死にそうに
なって誰も助けられない時に一度だけ
再生出来るように魂に術を仕込んでおいた。
まさかこんなに早くに使う事になるとは
思っていなかったがな。まったくお前達
が情けないせいだぞ?」
ポレットはため息をつく。
「では、お前はまた居なくなってしまう
のか?嫌だ。絶対に嫌だ!」
そう言ってサイラスが子供の様に泣き
始めた。
「1000年も待っていてくれたのに悪いな。
でもクラウディアも私なのだ。彼女の中に
私は居る」
ポレットは柔らかく微笑んだ。
そして皆んなに向かってこう言った。