決心③
言い訳を考えていたらドガーンと大きな音と
ともに私の体がふわっと浮き上がった。
何事!?
と、思って顔を上げたら今日も綺麗なルイお兄様
の顔があった。
どうやら私はルイお兄様に抱っこされている様だ。
「ノア……。ディアが泣いているようだけど何故
かな?何をした?」
低い声でノアに訊く。
え?あ?何でここにルイお兄様が??
私の「?」が伝わったみたいで説明してくれた。
「それはね、ディアにあげたピアスだよ。護身用に
ってプレゼントしたよね?ほら今も付けてくれてる」
天女のような微笑みで私の耳に軽く触る。
あの誘拐未遂事件があってからヴィンセット家
は異常な程警戒していて私の居場所が直ぐに分かる
ようにとルイお兄様がピアス型ディア探知機を作っ
てしまったのだ。それを付けてはいたけど……?
「それはディアの居場所特定だけではなくてね、
大雑把にだけど感情も分かる様になっているん
だよ。さっき『悲しい』の感情が流れてきた
から何かがあったと思って来てみたらこれだ」
と、ノアを睨む。
うひゃ〜。マジか……。全て監視されてる感じ!?
溺愛ってさ……。もう殆ど犯罪に近くね?
私に自由はないのか?
とりあえず誤解を解かねば!
「ルイお兄様?確かに私号泣していましたけれど
それはノアのせいではないのです」
「この状況はノアが何かしたとしか考えられ
ないけど?」
ニッコリ笑ってホラーなルイお兄様ご登場。
「エドとメアリーを遠くに離してまでお前は
ディアに何をした?嫌がる事をしたのではない
のか?」
地獄を這うような低い声でノアを責める。
「違います。兄上。僕は姉様に……」
ノアが言い終わらないうちにルイお兄様が私を
抱えたまま右手を挙げると真っ直ぐな光が放たれ
ノアを直撃する。
ノアはそれをひらりと躱し雪の上に着地した。
「ルイお兄様!待って下さいませ!ノアは……」
話しているのにガン無視される。
えー。ちょっと聞いてよ。
「兄上!姉様を離して下さい。いつも、いつも
そうやって何かしら理由を付けて姉様に触るの
は止めて欲しいのですけど!」
ん?『理由をつけて触る』?何だかルイお兄様が
変態みたいになっとるけどいいのかい?
ノアの手から無数の氷の塊が放たれこちらに
勢いよく飛んできた。
それを炎を出して溶かすルイお兄様。
つかさず大きな氷の塊を出して風で押し出し
ノアを攻撃するもノアがそれを粉々にした。
そのカケラがノアの後ろにあるヴィンセット家の
温室へ当たった。温室大破……。
あぁぁ。あの温室には珍しいお花とかいっぱい
あってジャングルみたいで気にってたのに。
魔力持ちの兄弟喧嘩ってこんな派手にやり合う
わけ?喧嘩も命懸け……。
「ノア!あのような氷がもしディアに
当たったらどうするのだ!」
「姉様を避けるように飛ばしてますよ!兄上
だけに当たるようにしか攻撃していません!」
ほ、ほぉぉ〜。中々やるな。って、実兄に
もう攻撃……。
「ふ〜ん。そうか。ディアを避けるよにした事は
褒めてあげるよ。でもノアこそ何も知らない無垢な
フリをしてディアに近づかないで欲しいけど?」
おっと?そりゃあノアが腹黒天使になちゃう。
一触即発の状態で睨み合う2人。
ち、ちょっとぉ〜。何だか喧嘩の趣旨が変わって
きてないかい?コレじゃまるで私を取り合いして
る様に見えるよぉー!
と、その時ノアと私達の間に雷のような光線
が落ちてきて吹っ飛ばされた。
ルイお兄様に抱きしめられていた私は
気がつくとレオンお父様の胸の中に収まって
いる。何で?何が起こった?
ちょっとよく分からないな。