三国志・高順伝~忠勇清廉の陥陣営~
長い三国志の物語の中で、僅か数年間の間だけ表舞台に登場する名将、高順。
呂布と言う反覆常無い男の元で戦い続けた清廉な人柄は、多くの英傑達に感銘を与えている。
その彼の一生を声劇台本化してみました。
声劇台本:三国志・高順伝~忠勇清廉の陥陣営~
作者:霧夜シオン
所要時間:約40分
必要演者数:最低9人、最大10人
※配役例+総セリフ数
高順(94):
呂布(46):
張遼(17):
陳宮(22):
魏続(6)・呂布軍兵士1(9):
曹性(8)・呂布軍兵士2(7):
曹操(13)・夏侯惇(10):
劉備(3)・呂布軍部将(16):
ナレ(19):
※これより少なくても一応可能かもしれません。
はじめに:この一連の三国志台本は、
故・横山光輝先生
故・吉川英治先生
北方健三先生
蒼天航路
の三国志や各種ゲーム等に加え、
作者の想像
を加えた台本となっています。また、台本のバランス調整のた
め本来別の人物が喋っていたセリフを喋らせている、という事
も多々あります。
(正史の成分が多めなので、前後の作品に食い違いが出るかも
しれません。)
その点を許容できる方は是非演じてみていただければ幸いです
。
なお、人名・地名に漢字がない(UNIコード関連に引っかかっ
て打てない)場合、遺憾ながらカタカナ表記とさせていただい
ております。何卒ご了承ください<m(__)m>
なお、上演の際は漢字チェックをしっかりとお願いします。
また上演の際は決してお金の絡まない上演方法でお願いします
。
ある程度はルビを振っていますが、一度振ったルビは同じ、
または他のキャラのセリフに同じのが登場しても打ってない場
合がありますので、注意してください。
なお、性別逆転は基本的に不可とします。
●登場人物
高順・♂:字は伝わっていない。
呂布配下で張遼と双璧をなす猛将。攻撃した敵部隊を必ず壊滅した事
から【陥陣営】の異名で恐れられる。寡黙で酒は飲まず、贈り物も一切
受け取らない清廉潔白な人物であったという。
呂布・♂:字は奉先。
飛将軍とあだ名される三国最強の武勇を持つ将の一角。
その場しのぎの頭は回るが、遠大な計を立てることはできない。
それゆえの裏切りを繰り返し、丁原、董卓をその手に掛けている。
張遼・♂:字は文遠。
後に泣く子も黙ると恐れられた武勇を持つ人物。この時は呂布配下で高
順と二枚看板をなす猛将。己の意思とは裏腹に、丁原、董卓、呂布と次
々に仕える主君を変えざるを得なかった。
陳宮・♂:字は公台。
もと中牟県の県令で、董卓に追われていた曹操を一時捕らえ
るも、説得されて共に反董卓連合軍を立ち上げる。しかし、その人間性
についていけなくなり、ちょうど曹操の親友の張邈の元に身を寄せてい
た呂布と共に挙兵、反旗を翻す。高順とは非常に仲が悪い。
魏続・♂:字は伝わっていない。
呂布の縁戚関係にあったことから重用された。呂布が高順を疎んじる
ようになると、呂布は高順の兵を魏続に率いさせている。
曹性・♂:字は伝わっていない。
呂布配下のカク萠の部将。袁術からそそのかされたカク萠に反乱に協力
するよう相談されるが逆に反乱をやめるよう説得する。しかし聞き入れ
られなかった。
曹操・♂:字は孟徳。
治世の能臣、乱世の奸雄と評される、三国志版の覇王。
文化、軍事、政治、全ての分野に名を残す”破格の英雄”。
夏侯惇・♂:字は元譲。
曹操からの絶大な信頼を得ている曹操軍第一の大将。三国志演義では
武勇に優れる猛将と描かれるが、実際は政治や領国統治、
曹操と仲が悪い臣下との人間関係調整に長けていたと伝わる。
曹操の根本方針である、唯才是挙【ただ才能に優れた者を挙げよ】の
唯一の例外者。
劉備・♂:字は玄徳。
漢の中山靖王・劉勝の末孫を自称。乱れた世を正す為、義兄弟の
関羽、張飛と共に乱世を駆ける。
呂布軍部将・♂♀不問:主に高順配下として登場する。
呂布軍兵士1:・♂♀不問:そこそこ出番が多い。主に高順の配下その1。
呂布軍兵士2:・♂♀不問:そこそこ出番が多い。主に高順の配下その2。
ナレーション・♂♀不問:雰囲気を大事に。
※演者数が少ない状態で上演する際は、被らないように兼ね役でお願いします。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ナレ:今よりおよそ1800年前、後漢王朝末期にあたる建安4年、冬の2月。
徐州の下ヒ城にて、一人の名将がその生涯を閉じようとしていた。
曹操:高順、汝にも苦しめられることが大きかった。
どうだ、余に仕えぬか。
高順:……。
(武運、ここに尽きるか・・・だが、悔いはない。)
曹操:陥陣営と称されるその武勇、余の為に、いや、この乱れた天下を鎮める為に
貸してくれぬか。
高順:………。
ナレ:高順はいつしか瞼を軽く閉じる。それと共に流れ始めた走馬灯の奔流に、
しばし身をゆだねた。
【二拍】
時は数年前にさかのぼる。
都・洛陽を追われ、南陽郡を治める当時の名族、袁家の一人である袁術を頼
って落ちてきた男がいた。
呂布、字は奉先。
三国志最強と謳われる武勇を持つ将である。
彼は袁術の厚い待遇を受けながら、人材を集め、兵を募っていた。
呂布:お前か、仕官に応じたのは。
高順:はっ…高順と申します。天下に名高い呂将軍とお会いでき、喜びにたえ
ません。
呂布:よし、我が配下として存分に働いてもらうぞ。
高順:ははっ…微力を尽くします。
呂布:さっそくお前に部隊を預ける。手足のごとくに動かしてみるがいい。
高順:(な…いきなり兵を与えて下さるとは…!)
ありがたき幸せ…必ずや、ご期待に応えてご覧に入れます。
ナレ:呂布には他にも張遼、魏続などが行動を共にしていたが、その関係は決し
て純粋な主従ではなかった。
それゆえ南陽の地で登用された高順は、呂布の初めての子飼いの武将と言え
た。その人柄も相まって、彼は厚い信頼を得ることとなる。
高順:よし、次は魚鱗の陣形だ!
呂布軍部将:ははっ! 右翼、左翼、前進ッッ!!
【二拍】
よォし、停まれッ!
高順様! いかがでございましょう!?
高順:うむ。申し分なし。
お前達、いつもよくやってくれているな。礼を言うぞ。
呂布軍部将:もったいないお言葉…!
呂布軍兵士1:なぁ、俺達、いい上官に恵まれたよなあ。
呂布軍兵士2:まったくだぜ。張遼様のとこもいいんだが…なんか怖いしな、あ
の方は。
呂布軍兵士1:そこへ来たら高順様は、俺達兵の一人にまで気をかけて下さってる
。
呂布軍兵士2:だよなぁ。だからこそ命を張って戦う気にもなるってもんだ。
高順:そこ、私語はつつしめ。
呂布軍兵士1:は、ははっ!
呂布軍兵士2:も、申し訳ありません!
高順:いや、良い。今のお前達の言葉で、これまでの私のやり方は、間違っていな
いと確信できた。
呂布軍部将:こ、高順様…!
呂布:やっているな、高順。
高順:! これは…呂布様。
呂布:末端の兵にまで良く統率が取れている。見事だな。
高順:ありがたきお言葉…。
呂布:これはいざ戦となった時が楽しみだ! はっははははは!!
ナレ:高順が仕官してまもなく、袁術と呂布の関係は悪化。呂布は北方の袁術の
兄、袁紹を頼る。袁紹は快く受け入れはしたが、ただ遊ばせておくような
ことはしなかった。
北方の覇権をかけて争っている相手、公孫瓚が同盟を組んでいる黒山賊。
その討伐をすることとなったのである。
呂布:敵はかつて反董卓連合軍に参加したこともある黒山賊の張燕か。
確かに数は多いが、我が軍の結束にはかなうまい。
高順:仰せの通りかと。
呂布:よし、出陣だ! 俺は正面から当たる! 高順は右翼、張遼は左翼から
雑魚共を蹴散らしてやれ!
高順:ははっ。
皆、行くぞ。右翼から突撃だ!
呂布軍部将:高順様に続けーーーッ!!
呂布軍部将・高順役以外:【喚声・SE代用可】
高順:む…あの部分が手薄だな…、あの一点を突破だ!
呂布軍部将:ははっ! それッ、者共、後れを取るなァ!!
呂布:でぇぇい! ふんッ、人中の呂布と謳われる俺を前に、この程度の備えで待
ち構えているとはな! 舐められたものだ!!
! 敵の右翼がすでに崩れ立っている? おお、高順が早くも敵を打ち破っ
たか!
高順:次は敵左翼の後方だ! 張遼殿に加勢する!
呂布軍部将:よォし、この勢いのまま進むぞ!
呂布軍兵士1:すげぇ…敵の弱い所をすぐに見抜くなんて…!
呂布軍兵士2:さすがは高順様だ! どこまでも付いて行きますぜ!
高順:あそこから突撃だ! 続けッ!!
呂布軍部将・高順役以外:【喚声・SE代用可】
呂布軍部将:て、敵陣が…まるで紙のように切り裂かれていく…!
呂布:見事だ…見事だぞ、高順! 俺は良き家臣を得たわ、はっはははは!!
攻撃した敵陣を必ず陥とすとは…まさに陥陣営よ!
高順:! ありがたき…!
呂布:よしっ、こちらも負けてはおれんな。
行くぞ! 敵の第二陣へ向けて突撃だ!!
ぬぅうううおおおああああーーーッ!!
ナレ:呂布軍は黒山賊を連戦連勝で破った。
配下の高順や張遼の働きも目覚ましく、中でも高順とその部隊は、
ひとたび攻撃に転ずれば敵の陣営を必ず陥落させたことから、
敵味方を問わずに讃え恐れられた。
”陥陣営”と。
その後、袁紹とも不仲になった呂布は河内を経て曹操の領土であるエン州へ
辿り着く。陳留の張邈と共に裏切った陳宮は、呂布に参謀として迎えられ
ると、エン州制圧の策を献じていた。
陳宮:曹操はいま、徐州の陶謙に家族を殺され、その復讐戦に出向いています。
このエン州を奪い、将軍の根拠地とするのは今をおいて他にはありませぬ。
? …聞いておられるのですか、高順殿?
高順:…ああ、聞いている。
陳宮:【軽く舌打ち】
すでに張邈殿はこちらに呼応して、城の占拠に動いております。
高順:(一度は主と仰いだ人間を簡単に裏切るとは…それに張邈といえば、曹操
の親友ではないか…なぜ陳宮と共に曹操を…。)
呂布:よし、濮陽城を奪いエン州を我が物とするのだ!
高順:はっ…!
(納得はいかないが…呂布様の為に死力を尽くすまでだ。)
ナレ:陳宮の策と張邈の裏切り、そして高順ら猛将達の働きもあって、
八十以上もあるエン州の城があっという間に呂布の物となる。
しかし、東阿、甄、范の三城を守っていた曹操の腹心の荀彧、程昱や
棗祇らに阻まれ、完全制圧は成し得なかった。
その後二年の激戦を経て呂布軍は敗北、エン州から撤退し、次に拠るべき地
を徐州に定めることになる。
呂布:くそ…もう少しでエン州を完全に我が物にできたというのに…!
陳宮:荀彧、程昱…彼らの知謀にしてやられるとは…無念です。
呂布:陳宮、徐州は我らを受け入れるだろうか?
陳宮:ええ、うまくいくかとは存じます。劉備は先に病死した陶謙から託されて徐
州の領主となったばかりです。かつて曹操に攻められた際、我らが背後を突
いて助ける形になりましたゆえ、その恩を盾に取ることも出来ましょう。
呂布:確かにな。よし、道を急ごう。
高順:……。
(劉備…仁義に厚く、力に頼らず仁徳をもって徐州の領主となった男…
どのような人物であろうか。)
呂布:高順、気落ちするな! 兵力さえあれば、お前達と共にまた州の一つや二つ
を平らげるのは、この俺にとってたやすい事だ!
高順:はっ…。
(配下にも義兄弟の関羽、張飛という剛の者がいると聞くが…。)
陳宮:む…呂布殿、あれを。どうやら徐州からの迎えの者のようですな。
劉備:呂布殿、徐州へようこそ参られた。劉玄徳です。
呂布:おお、劉備殿か! 出迎え痛み入る。よろしく頼む!
高順:(劉備玄徳、噂にたがわぬ人物のようだ…。だが、彼の周囲の顔色を見るに
、歓迎せぬ者もいるか…当然だ、厄介者だからな…。)
劉備:さあ、まずは旅の疲れを癒してください。
他の皆様はこちらへ。いま案内させます。
高順:かたじけない…。
ナレ:劉備の元に身を寄せた呂布達はひとまずの安息を得る。しかし、乱世の荒波
は次々に彼らに襲い掛かる。
先にあげた南陽の袁術。彼が曹操の策に掛かり、劉備と戦火を交える事にな
った。その時、徐州の小沛の城に袁術の使者がやって来る。
劉備の背後を襲えば兵糧その他の軍需物資の提供を約束する、との密約を
携えて。
陳宮:呂布殿、今こそ徐州を奪う時です。袁術から物資を得た後は、かねてより
保護の要請が来ている皇帝陛下をお迎えする事も出来ましょう。
呂布:うむ…劉備には悪いが、この俺の為に犠牲になってもらうしかあるまい。
高順:ッ呂布様! 家や国が亡ぶのは、忠臣や知恵に優れた者がいないのではなく
、その意見を用いない為に起きるのです。
呂布様はいつも深く考えずに行動します。また、いつも得失を考えない言動
で数え切れないほど失敗しております。このようなことは慎まねばなりませ
ぬ!
呂布:む、むむむ…。
陳宮:高順殿、この乱世、そのような真っ正直だけで通れるものではありませぬ。
それに、先ほどの話を聞いていれば、私が忠臣ではない、と申されているよ
うにも聞こえますが…?
高順:ッ…そんなつもりでは。
呂布:高順、俺は決めた。この徐州を奪って献帝をこの地にお迎えし、
再び天下を狙う! 速やかに軍を率いて劉備の背後を襲え!!
高順:…はっ、承知しました…。
陳宮:頼みましたぞ、【若干強調して】高順殿。
高順:…心得た。
ナレ:呂布は再び餓狼の性質をむき出しにすると、袁術の誘いに乗った。即時、
三万の精兵を高順に与え、劉備の背後を襲わせたのである。
張遼:高順殿、浮かぬ顔をされているが…。
高順:いや…、このような不義理な事ばかりをしていてはいつ、どうなるのか
と不安になってな…。
張遼:確かに不義理は許されることではないかもしれぬ。しかし、今は乱世だ。
一時の不義理は、後に義理を通すことであがなえば良いのではないだろうか
?
高順:む…ぅ。
張遼:ともあれ、今の呂布様には拠って立つ地が必要だ。その為には仕方あるまい
。
高順:…やむを得ぬか。
よし、全軍、ここに陣を張れ!
明日、攻撃を開始する!
張遼:敵の奇襲があるやもしれぬ。油断なく辺りを見張れ!
雨も強くなっている。川の氾濫に注意するのだ!
ナレ:夜が明け、彼らが劉備軍の陣地へ殺到してみると、敵は既に逃げた後で敵兵
一人の影もなかった。
張遼:これは…、敵は高順殿の名を聞いただけで逃げ失せてしまったか!
何と笑止な事だ!
高順:(内心、剣を交えずに済んでほっとしている自分がいる…なぜだ。)
ともあれ、これで劉備軍を追い落としたことにはなる。さっそく袁術軍の大
将、紀霊に使者を出そう。約束の物資を受け取らねばなるまい。
張遼:うむ。それが今回の第一の目的だからな。
高順:よし、誰かあるか。
呂布軍部将:はっ、これに!
高順:袁術軍の紀霊の元へ赴き、約束は果たしたゆえ代価の物資を頂きたい、
と申し入れて参れ。
呂布軍部将:承知しました! ただちに行って参ります!
ナレ:雨風はますます強くなり、草は風雨に伏し、木は折れ、河は溢れていた。
そう遠くないところに位置する袁術軍とはいえ、使者の往復には普段以上の
時間を費やすこととなった。
高順:…一刻経ったか。
張遼:うむ、この天候では往復も容易ではあるまい。
焦らず待とう。
呂布軍兵士1:申し上げます! ただいま袁術軍へ向かった使者が戻りましてござ
います!
張遼:おお、すぐにこれへ!
呂布軍部将:高順様、ただいま戻りました…!
高順:うむ、使いご苦労だった。して…返答は?
呂布軍部将:はっ、それが…、物資の件は主君同士でのやり取りゆえ、それがしは
聞いておらぬし、また聞いていたとしても自分の一存ではそのような
多額の財貨はどうすることもできない。帰国の上、我が君へ申し上げ
ておくゆえ、貴軍もひとまず引き上げられよ、との返事でございまし
た。
張遼:確かに言う事ももっともだ。…高順殿、ここは引き上げよう。
高順:うむ…呂布様にはそう復命するしかあるまい。
全軍、撤退せよ!
呂布軍兵士2:はっ!
全軍引き上げ! 引き上げだー!
ナレ:高順らは徐州へ帰還すると事の次第を復命。呂布もそれを信じ、
袁術へ正式に使者を出して代価を求めた。
しかし袁術からは、まだ劉備が生きているから早くその首を取って
こちらへ渡せば約束の物を与える、との横柄な返事だった。
呂布は激怒して袁術を攻めようとするが、陳宮が制止する。彼の献策
によって、逆に劉備と再び同盟、小沛の城へ置いて袁術への前衛とした。
そしてその年の六月。
高順役以外全員:【遠く聞こえる喚声・SE代用可】
高順:む…?
なんだ、風に乗って喚声のような音が…?
呂布軍部将:? 高順様、いかがなされました?
高順:いや…風の音を聞き間違えたのかもしれぬ。
呂布軍部将:そうですか。夜明けまではまだ間があります。もう少し休まれては?
高順:うむ、済まぬな…。
呂布軍兵士1:も、申し上げます!!
呂布軍部将:なんだ、真夜中だぞ! 静かにせぬか!
呂布軍兵士1:そ、それが、その、りょ、呂布様が奥方様と共にこの陣へ!
高順:!! 聞き間違いではなかったか…!
すぐに出迎えねば…!
【二拍】
呂布様、こんな真夜中にいったい何事が起ったのですか?
呂布:う、うむ…敵襲だ、高順!
高順:なんですと…!?
呂布:不意に騒がしくなったと思ったら、庁舎を完全に包囲されていてな。
幸い内門が固く、敵が手間取っているうちに取るものもとりあえず、
妻を連れてここまで来たのだ…!
闇夜に紛れて襲ってきたから、どこの手の者かもわからん!
高順:なるほど…呂布様、他に何か気づいた事はありませぬか?
呂布:【唸る】
そういえば、敵兵にずいぶん河内地方の訛りを持つ者達が多かったな。
高順:! …呂布様、襲撃したのは恐らく、味方のカク萠かと思われます。
河内の訛りが多い兵を持つ部隊はカク萠のみです。
呂布:な、なんだと!? し、しかし、なぜカク萠が…!?
高順:事の真偽を確かめている暇はありませぬ。呂布様はここでお待ちを。
それがしが行って参ります…!
呂布:わ、わかった。お前に任せよう。頼むぞ!
高順:ははっ!
【二拍】
弓兵隊を先頭に立て、静かに進軍するのだ。
庁舎を囲んでいる敵兵共の背後を包囲し、合図と共に一斉に矢を射かけよ。
呂布軍部将:ははっ!
【三拍】
高順様、あれです…!
高順:よし、弓兵隊、構え。
【二拍】
放てッ。
ナレ:高順は素早く敵の背後に部隊を展開、弓の一斉射撃は敵を混乱に陥れた。
自身で馬を飛ばし、あちこちの戦場を疾駆していたが、遂に目的の一騎を見
つけた。カク萠である。見れば味方の曹性と一騎打ちし、既に片腕を切り落
とされていたが、曹性の方も重傷を負っている様子だった。
高順:カク萠ッ! 反乱の罪は死をもってあがなえ! 覚悟ッ!!
【二拍】
カク萠は既に誅殺した! 兵ども! これ以上は無意味だ、降れ!
今なら罪には問わぬ!!
ッ、曹性殿! 大事ないか?
曹性:うう…こ、高順殿か…助太刀、かたじけない…!
高順:ともあれ、手当てせねば…。
誰か、板に乗せて陣へ運ぶのだ!
呂布軍部将:ははっ! お前達、手伝え!
呂布軍兵士1:はっ! おい、そっちを持て! 揺らすなよ!
呂布軍兵士2:わかってる! 曹性様、お気を確かに…!
呂布:高順、見事だ。即座に反乱を鎮圧するとはな…。
高順:これは呂布様。もう心配はございませぬ。
陳宮:ッ…み、見事ですな、高順殿…。
曹性:おお…りょ、呂布様…!
呂布:曹性、カク萠は何故反乱を起こしたのだ?
曹性:そ、それは…背後に袁術がいてそそのかしていたのです…!
呂布:な、なにい!? 袁術だと!?
曹性:はい…それがしはカク萠にこの話を打ち明けられた時、反対したのです。
しかし、カク萠は既に陳宮も力を貸してくれているからと・・・今夜の反乱
に踏み切ったのです…!
陳宮:!!! ッ…【小声】くっ…カク萠め、余計な事を…!
呂布:陳宮!? 陳宮と言ったか!? 何故だ!?
高順:もともと袁術との外交窓口でしたからな…、呂布様! 曹操を裏切り、
そして今また呂布様を裏切ったこの陳宮、斬らねばなりますまい…!
陳宮:むぅぅ…もうこうなっては言い訳いたしますまい。
ええ、確かに袁術にそそのかされてこの挙に及びました。
どうぞ、ご存分にご成敗下さい、呂布様。
呂布:ぬ、ぬうううぅぅうう………!
【三拍】
いや…陳宮、お前は我が軍の一方の大将だ。大将であるゆえをもって、
今回の事は不問に付す…!
高順:なっ、何故でございますか! この男は、呂布様のお命を狙ったのですぞ!
呂布:高順、何も言うな。もう決めた事だ…!
高順:………承知、しました……!
(陳宮は名声もある、そして袁術と深い繋がりがあるのだろう。
それゆえに斬れないのか…!)
呂布:………。
ナレ:高順はカク萠の反乱を阻止し、討ち取ることに成功した。
だが、陳宮や河内で子飼いの配下にしたカク萠にまで裏切られた呂布は、
猜疑心の虜となる。そして疑いの目は、皮肉にも高順にまで向けられた。
「不意を突かれたとはいえ、逃げるしかなかった自分にひきかえ、高順はい
とも簡単に反乱を鎮圧してのけた。そしていつカク萠のように裏切るか…。
もう信じられるのは身内しかいない…!」と。
呂布:高順、済まぬがお前の直属の兵達を魏続に預けることにした。
良いな?
高順:!! な、何故でございます、それがしに何か落ち度が…?
呂布:い、いや、落ち度と言う程のものはないが、そ、そうだ、お前の兵達の結束
の強さを魏続の部下達に学ばせてやりたいと思ってな!
高順:(そうか、先日の反乱…カク萠も呂布様の子飼いの臣、陳宮は腹心の参謀
…その二人に裏切られたのだ。疑心暗鬼になるのも無理はない…。
信じられるのは身内だけと…いや、いずれ分かっていただけるだろう…。)
そういうことでしたら…承知しました。
呂布:う、うむ。
魏続、しっかり高順の兵達を頼むぞ!
そしてその結束の強さを学ばせてやれ。
魏続:ははっ。
では高順殿、貴殿の兵、お預かりいたしますぞ。
高順:…よろしく、お願いいたす。
では、失礼仕る。
張遼:ッ!
【二拍】
高順殿!
高順:…張遼殿か。
張遼:なぜ、なぜ呂布様はあのような扱いを…高順殿が何をしたと言うのか!
武将として屈辱的な待遇であるのに何も言わず…、理不尽な扱いには
異を唱えるべきだ!
それがしも口添えいたすゆえ——
高順:【↑さえぎるように】
張遼殿!
君、君たらずといえども、臣、臣たらざるべからず、と…
そう申されるではないか。
張遼:ッ! しかし!
高順:何も申されるな、張遼殿。
…いずれ、わだかまりが解ける日も来よう。
では…。
張遼:確かに臣下の道としては正しいのかもしれぬ。
だが、過ちは正さねばならぬのではないか…!?
高順:……。
ナレ:高順から兵を取り上げた呂布は、戦いの時のみ魏続の部隊から兵を戻し与え
るという、将として屈辱的な扱いを課した。
だが高順はこれに対して、ついに最期の時まで恨み言や不満を漏らす事はな
かったと伝えられる。
年を越して建安2年。
泰山の独立勢力、臧覇が呂布に味方していた蕭建を破ってその地を占拠した
、との急報が呂布の元へもたらされた。
呂布:なにい!? 臧覇が蕭建を!?
おのれ、あの山賊どもは一度力をもって黙らせておかねばならんな!
高順:お待ちください、呂布様!
呂布:なんだ、高順。今回は俺みずから出るぞ!
高順:そうではありません。
董卓誅殺による呂布様の威名は天下に轟いており、遠きも近きも恐れ、
遠慮しております。
呂布:それがどうしたというのだッ!?
高順:臧覇など、呂布様のひと睨みですぐに降伏するかと。
御自ら軽々しく出陣してはなりませぬ。勝っても利益は無く、万一敗北する
ような事あれば、呂布様の名声を損ないます。
呂布:なんだと高順、この俺が負けるとでも言うのか!
高順:いえ、そのような事は…ただ、戦わずとも睨みをきかせるだけでいずれ
こちらに味方するであろうと…。
呂布:ええい、何も言うな! 奴はこの俺に逆らったのだ!
実力で黙らせねば気がすまん!
それほど言うのならお前には留守を命じる!
高順:ッ…承知、しました…。
ナレ:呂布は高順の諫言を無視し、出陣した。
しかし高順の予見通り、臧覇は用兵術を巧みに駆使し、呂布軍を散々に
悩ました。
結局呂布は、臧覇の守る城を落とせず退却する羽目になる。
臧覇とは後に同盟を結ぶことになるが、これによって呂布はますます高順を
警戒し、遠ざけるようになった。
年明けて、建安3年。劉備を初めて攻撃した時以降、同盟の締結と破棄を
繰り返していた袁術と再び結んだ呂布は、徐州の小沛の城にいた劉備を
攻撃した。
呂布:高順、袁術と再び同盟したゆえ、劉備を滅ぼす。
副将として張遼を付ける。
奴らの兵力など多寡の知れたものだ。陥陣営の力、存分に発揮してくるがい
い!
高順:…はっ。
張遼殿、参ろう。
張遼:うむ…。
(高順殿…どこか寂しげな…。やはり兵の取り上げが堪えているのか、
それとも…。)
高順:聞け、お前達。これより我が軍は小沛の劉備を攻撃する。敵は既に曹操と
通じているゆえ、攻城戦が長引いた場合、曹操の援軍が到着する恐れもある
。
そのつもりで、援軍が現れてもついでに打ち破る気概で、これに当たれ。
呂布軍部将:ははっ!
高順:よし、出陣する。続け!
張遼:高順殿と共に戦うのは久しぶりだ。胸が躍るな。
高順:…それがしもだ。敵は劉備、そしてあの関羽と張飛だ。
彼らを相手にするよりは彼らの陣を打ち破った方が、時をかけずに済むだろ
う。
張遼:ふ…陥陣営らしい言葉だ。
ならば! この張文遠、高順殿と両輪の槍となって、敵陣を貫こう!!
高順:…うむ!
小沛の城が見えたな。まず城外の陣から破る! 続けッ!!
高順・ナレ役以外:【喚声・SE代用可】
ナレ:劉備軍は籠城にて応戦したが、高順率いる大軍に圧倒される。
間もなく呂布自身も出馬し、小沛の城は風前の灯火となった。
だが、それ以前に曹操の元へ援軍要請の使者が届いており、彼の第一の大将
、夏侯惇が救援第一陣として駆け付けてきたのである。
夏侯惇:曹司空閣下の命により劉備殿、助太刀いたす!
者共かかれィ!!
高順:く…敵の援軍が早くも到着したか。張遼殿はこのまま劉備軍の方を、
それがしは新手の援軍に当たる!
張遼:任せよ! 武運を祈る、高順殿!
呂布:くそっ、もう曹操の援軍が!
いかん、このままでは高順の陣が突破される!
曹性、急ぎ高順の援軍に向かえ!!
曹性:承知!! 皆、我に続け!!
夏侯惇:雑魚共どけィ! この俺の前に立ち塞がって馬に蹴殺されるな!!
高順:待て! これ以上は進ませんッ!
それがしは呂布様の麾下、中郎将の高順なり!
夏侯惇:おう、あの有名な陥陣営か!!」
我こそは夏侯元譲、相手にとって不足なし、来いッッ!
高順:参る、はあッ!!
夏侯惇:ほう、なかなか鋭い打ち込みだな!
だが、これならどうだ! おおうッ!
高順:ぬううッ! さすがは夏侯惇…だが! おおぁッ!
夏侯惇:どうした、陣を破るのは得意だが、一騎打ちはそれほどでもないと見える
な! つあッ!!
高順:くっ…これはいかん…距離を取るか…!
曹性:!! あれは高順殿! 敵将に追われているのか!
あの時の借りを返さねば…助太刀いたす!
敵将め、この矢でも、喰らえッ!!
夏侯惇:!!! うっ、ぐおおおッ!!
高順:な、矢が夏侯惇の眼に!? どこから……、! 曹性殿か!?
夏侯惇:ぬぅぐうううう………ぬあッ!
高順:ば、バカな! 刺さった矢を…目玉ごと引き抜いただと…!?
夏侯惇:これは父の精、母の血、どこにも捨てる場所がない!
ああもったいなや!!
高順:た…食べた…自分の眼を…何という男だ……!
夏侯惇:ぬううう…。
! おのれ下郎、貴様かッ! そこを動くな!!!
曹性:ひいいッ! ば、化け物め!
夏侯惇:【↑に被せて】
ぬぅおおおおあああああ!!!
曹性:ぐぎゃッ!!!
高順:曹性殿ッ!! …それがしを救うために…!
くっ、だが敵は深手を負った。包囲して討ち取れ!!
ナレ:この後、夏侯惇は弟の夏侯淵に救われ撤退。
呂布は勢いに乗って小沛を攻め落とすと、高順と張遼に守備を任せた。
しかし、かねてから呂布軍内部で攪乱の役目を負っていた陳珪、陳登父子の
計略にかかり呂布軍は壊乱、小沛も徐州の城も奪われ、ついに下ヒの城へ
追い詰められる。
高順は陳宮と共に下ヒ城南門の守備を
受け持っていたが、仲の悪いこの二人がいさかいを起こさずに済むはずが
なかった。
高順:むぅ…この下ヒ城を水攻めにするとは…曹操軍には策士がいると見
える…。
陳宮:ふん、呂布殿が我が掎角の計を用いていてくだされば、今ごろ曹操軍は輸送
路を断たれて壊滅していたものを!
高順:(…確かにそうだ。だが、おそらくそれがしと陳宮の対立を気にして策
を実行に移せなかったのかもしれぬ…それをこの男…。)
陳宮:まあいい、袁術殿の援軍が入れば、曹操など今度こそ木っ端微塵よ!
高順:…袁術の今までの動きを見れば、そう上手くいくとは思えんな。
陳宮:ッ! ほう! ほうほう! 高順殿もずいぶん策士になられましたな!?
では袁術殿の援軍無くともこの窮地を乗り切れると!
そう言われるのですな!?
高順:…そう申してはおらぬ。
陳宮:いやはや、さすがですなァ! 呂布殿に信頼されている、戦いの時だけ兵を
預けてもらえる方のおっしゃることは、一味違いますなァ!?
高順:ッ……!
陳宮:おやおや、その目と手の動きは何ですかな!?
まさか、味方を斬ろうと、そういうことですか!?
魏続:二人とも、落ち着かれよ! 皆、抑えろ!
高順:! 魏続殿…! …?
陳宮:な、何ですか、私は冷静です! 放していただきたい!
!? な、なぜ縄を!?
魏続:いや、生憎とお二人を放すわけには参らぬ。
これからそれがしと共に、曹司空殿の元へ行ってもらうからだ。
高順:!! く…裏切りか…!
陳宮:な、なぜ裏切るのですか!
いずれ袁術殿の援軍が到着すれば、曹操などこの吹雪の前に散り残った枯葉
に等しいのですぞ!!
魏続:…現実が見えておらぬようだな、陳宮殿。
あの言動に一貫性のない袁術が、自分の元へ姫君を届けられなかった我らを
救援に動くはずがなかろう!
高順:なぜだ、魏続殿! 貴殿は呂布様の縁戚の間柄ではないか!
魏続:たとえ縁戚であろうと、このままではあの思慮の足らん呂布に引きずられて
死あるのみだ。死んで花実が咲くものか!
さあ、問答はここまでだ! 立て! 歩けッ!
宋憲殿! 侯成殿! 後は手はず通りに。
高順:(何という事だ…呂布様は、一番信じていた親族に土壇場で裏切られた
というのか…そしてそれがしもこんな終わり方なのか…無念だ。)
ナレ:陳宮と高順はそのまま、城外の曹操の陣へ連行された。
それを知った呂布も後を追うようにして自ら降伏。
最後に残った下ヒの城も、魏続らの裏切り内応によってついに陥ちた。
それからしばらくの後、戦後処理の一大項目として彼らは処刑場へ引き出さ
れる。
呂布:汝ら! どの面を下げてこの呂布に会えた義理か!
与えられた恩を忘れたのか!!
魏続:ははは…、その愚痴は日頃、将軍が寵愛されていた妻や寵姫などへ仰っ
たらいいでしょう。
我ら部将は、将軍から百叩きの刑や苛酷な束縛は頂戴し
た覚えはあるが、
将軍の愛された婦女子ほどの寵愛を受けた事はありませんな!
呂布:ぐっ、ぬううぅぅうう……!
曹操:陳宮、久しいな。
今日、こうして汝は余の前に捕虜として引き据えられたが
、なぜこのような事になったと思う?
陳宮:ふん、勝敗は時の運だ!
この男が私の献策を用いなかった為、こうなったに過ぎん!
曹操:そうか。では次に、年老いた母や妻子はどうするつもりだ?
陳宮:【若干声を詰まらせながら】
ッ…、天下を治める者は人の親を殺したり、妻子を途絶えさせたりしないも
のだ。母の生死は私の手中には無い…!
曹操:っ…。
高順:(…なるほど、曹操は陳宮を助けたいのか…いや、殺すに忍びないのかもし
れぬ…。だが、陳宮に助かりたい気持ちはあるまい…。)
陳宮:もう、無用な問いはやめたまえ。
願わくば、すみやかに軍法に照らして処刑するがいい。
これ以上生きるのは…恥だ。
曹操:! ああ……!【涙ながらに嘆息】
高順:(陳宮…逝くか。)
陳宮:曹操! 最後に問答を仕掛けてくれた事、感謝するぞ!
ナレ:処刑人が剣を振り下ろす。陳宮の首は黒血を噴いて、首は四尺も飛んだ。
曹操はその様を見届けると、酔いが醒めたかのごとく、次に呂布の処刑を
指示した。
曹操:次は呂布だ! 呂布を成敗しろ!!
呂布:ッ司空、曹司空殿!
司空殿の憂いとする呂布は、これこの通り降伏して除かれ
ているではないか。
俺が騎兵を、司空が歩兵を率いれば、天下はあっという間に平定できる!
無用の殺戮をせず、助けてくだされ!
呂布は既に心服している!
曹操:…劉備殿、彼の訴えを聞いてやったものか、どうか?
劉備:…さあ、その儀はいかがしたものでしょうか。
いま思い起こされるのは、その昔、彼が養父の丁原を殺害して董卓に付き
、またその董卓を斬って洛陽の都に争乱を起こしたことなどですが…。
呂布:く、くそっ、この大耳野郎め! こいつこそが一番信用できんのだ!!
かつて袁術に攻められた時、俺が戟を弓で射て和睦させた恩を忘れたのか!
張遼:見苦しいぞ、呂布様!! 死すべき時に死なぬのは恥と心得られよ!!
曹操:処刑人ども、その首を早く絞めてしまえ。
呂布:うっ、ぐっ、ぬぅぅううおおおおおあああぁぁぁああああ!!!
ナレ:いよいよ逃れられぬと悟った呂布は、暴れに暴れて容易に処刑人たちの手に
掛からなかったが、無理やりその場に抑えつけられたまま縊り殺された。
そして高順は走馬灯の流れから、意識を現実に戻した。
曹操:高順、汝にも苦しめられることが大きかった。
どうだ、余に仕えぬか。
高順:……。
(武運、ここに尽きるか・・・だが、悔いはない。)
曹操:陥陣営と称されるその武勇、余の為に、いや、この乱れた天下を鎮める為に
貸してくれぬか。
高順:………。
曹操:…黙して応えず、か。
忠義としては立派だが、呂布のような暗愚で暴勇のみの男に仕えたまま死ん
では浮かばれまい。
高順:(だが、自分は二君に仕える気は無い…また、曹操のような男の元では
、自分は今まで以上に生きづらくなろう…。)
曹操、忠臣は二君には仕えぬものだ…早く斬れ。
曹操:【溜息】
あくまで呂布を主君として共に殉じるか…。
実に惜しい…が、よかろう!………やれ。
高順:………。
(これでよい…さらば…。)
ナレ:建安4年2月7日、高順は下ヒ城の白門楼にて、その波乱に満ちた生涯を
閉じた。
歴史上においては、彼の活躍した期間はわずか数年ほどしかない。
しかし、その武勇と人柄は同時代を生きた多くの英傑達に感銘を与えた。
正史・三国志において個人の列伝を持たない存在でありながら、曹操に後に
仕える王粲が記した漢末英雄記に名前があげられて讃えられたり、その他
幾つかの書物にも名前が散見されているところから、
その人となりをうかがい知る事ができるだろう。
END
●参考動画
●YouTube
・【三国志解説24】寡黙にして忠勇の将・高順【ゆっくり史伝】三國志14発売記念
※修正版
・陥陣営!高順【三国志武将紹介 第33回】
・高順とはどんな人?自らの伝はないが記録に残る呂布軍の名将
●Wikipedia
・高順
●語句
【君、君たらずといえども臣、臣たらざるべからず】
主君に徳がなく主君としての道を尽くさなくても、臣下は
臣下としての道を守って忠節を尽くさなければならない。
《「古文孝経」序から》
正史三国志成分多めの作品としたつもりでしたが、いかがだったでしょうか。
ゲームでは三国志Ⅴから急激に能力が上がっており(84/100)、呂布軍の中では張遼に次ぐ武力を誇る。(呂布は除く)ぶっちゃけ89とか90でも驚かない。
その後も武力は評価され続け、三国志13では最大の87にまで上昇している。統率力も90近い数字と優れている。
楽しんでいただけたなら幸いです。