19、マーティンと学園長
次の話でまた、キャラクターがたくさん出てきます。楽しみにしていてください!
……ハァ、ハァ、長い廊下で息を切らしながら走っていたのは、ルイス達の担任であるマーティンだった。
「くそ!あのバカ!なんでどこにもいねぇんだ!この学院で起きたことなら把握してるはずだろ!」
周囲に人が居ない為か少し声が大きくなって一人で喋っていると、廊下の奥の方から何者かの視線を感じた。
「そこにいるのは誰だ!」
元魔法騎士団所属のマーティンは、視線を感じた方向に「罠魔術 洗脳香・薔薇」を放った。
視線を感じた先の周囲に魔法陣が6個ほど現れるとそこから巨大な薔薇の花が咲き、その周囲には少し甘ったるい、いい匂いがしてきた。
「暴れても無駄だ。この匂いを少しでも嗅いだら大型のモンスターでも60分は動けねぇよ。諦めて捕まるんだな!」
そんな事を言いながら魔法陣の方に目をやると、そこには誰の姿も見当たらなかった。
「マーティンちゃん。そんな発動の遅い魔術じゃ誰も捕まらないよ?見本を見せてあげるね?」
突如マーティンの後ろから聞き慣れた声が聞こえてくると、次の瞬間にはマーティンは目に見えない何かに、引き寄せられ身動きが取れなくなっていて、その様子を笑いながら見ていたのは、見た目10歳前後の幼女だった。
「お、おいエマ!笑ってないでこの何かをすぐに外せ!」
「はいはい。それにしてもいい驚き方を毎度毎度してくれるよねマーティンちゃんはww 」
「」
エマと呼ばれた幼女は、笑いながら指を鳴らすとマーティンを引き寄せていた何かは消え、いつの間にかマーティンは、自由に動けるようになっていた。
「いやー。本当にごめんね。いやね、マーティンちゃんの反応が余りにも面白くてね。つい揶揄いたくなっちゃうんだよねー」
……
「このバカ!学院で何が起こったのかわからないお前じゃ無いだろう?学院の周りに張ってあった障壁はどうした!なんでこの学院のダンジョンに魔族の痕跡があるんだ!まさかお前が仕向けたのか?まだ、入学して1ヶ月もたってないんだ!聖騎士候補の召喚獣のおかげで誰も死ぬ事無く戻ってきたがな。一体お前は、何を考えてるんだ!」
エマは、先ほどまでにこやかに笑っていたが、真剣な顔つきになり喋り出した。
「魔族の侵入を許したのは、本当にすまなかったよ。まさか僕の張った障壁を僕に悟らせずに潜り抜けて来るとは。僕も少し甘くなったかな?」
マーティンは、エマの言葉に驚いていた。
「お前ほどの実力者の目を盗んできたとは。まさか、魔族の王……魔王が復活したのか!」
マーティンはエマの実力を知っていた。
知っていたからこそエマを出し抜いたその事実に本当に驚いていたのだった。
「うーん。まだ魔王と決まったわけじゃ無いよ。でも確実に魔王に関係はしているだろうね」
マーティンはエマのその言葉に背筋がヒヤリとしたのだった。
「だったら尚更しっかり頼むぜ。学院長!」
そう、このエマという見た目10歳前後の幼女こそ、エルドラーン王国騎士養成学院の学院長 エマ・ダスピクルエッタだった。
エマは、マーティンの顔を見るともう一言告げた。
「それでなんだけどね?マーティンちゃん。明日、王城で騎士団会議が開かれるの。マーティンちゃんの担当クラスの4人も呼ばれてるからちゃんと来てね」
「あぁ、そうなると思って4人には伝えてる。面倒臭ぇことに巻き込みやがって!」
マーティンは、大きなため息を吐きながら呟くのだった。