金魚 裏
私はいつも自分を律し、謙虚であろうとしてきた。
傲慢になってしまいそうな時、私は心の中で「自分は駄目な人間だ」と呟いて、自分を諌めてきた。
でも、そうすると、今度はネガティブになりすぎてしまう。だから、私も含め、この世の中にいるすべての人は、駄目な人間なんだと思うようにした。
そして私はこうする事で、成長し続けることができると思い、それを実践してきた。
私には友だちが沢山いる。そして皆仲良くしてくれる。「こっちへおいで」って。でも、私は性格上、あまり深入りすることは出来なかった。
それに、馴染みすぎても駄目だ。周りが見えなくなるから。でもきっと、少なからず影響されてるんだろうなと思う。
そんなある日、私はとある人に出会った。その人はこれまでずっと独りぼっちだったと言っていた。
そう言うその態度は酷く傷付いた者のそれだった。
正直、私はその人のことを好きになった訳ではなかったが、同情によって、その人の友達となった。
でも、楽しかったのは最初だけ。途中からその人は豹変し、私に突っかかってくるようになった。
よく分からないし、怖い。気持ち悪い。
私はそれでもその人から逃げようとはしなかった。何とかなるような気がしてしまってたからだ。
それでも、限界が訪れた。私はその人の言葉よって深く傷付いた。
そこでやっと私はその人の側から離れることを決意したのだ。
逃げることは辛かった。何だか負けたみたいで惨めだった。
その後私は精神的に塞ぎ込んで、笑っていても、何をしてても楽しくない状態にまで陥ってしまった。
まるで暗い穴の底にいるみたいだと思った。
その状態で私は考えた。あいつは何で嫌なやつなんだと。今思うとそれは、私の身を守るための思考だったのかもしれない。
でも、私の憎悪は膨れるばかりだった。
なんとかして報いたかった。
私は言の葉を利用することにした。
今まで隠してあげてた、あいつのやった駄目なこと、私に言った暴言やひどい態度の数々を他人に広めてまわった。
私の目論見は成功し、あいつは孤立していった。
ふと我に返ったとき、これで良かったのかという疑問が頭によぎった。それからは罪悪感に苛まれた。でも、あいつは許せない。
ぐるぐると考える。
私は、私は、駄目な人間だ。