袋の中身は、天使の羽の髪飾り(百合。片想い)
「……髪、切ったんだ」
「うん」
新学期。下足室。
久しぶりに会った彼女の髪の毛は、ばっさり短くなっていた。
艶やかで、まるで天鵞絨のようだった彼女の髪。
短くなっても綺麗だけれど、何かが違う。
「いいの? せっかく伸ばしてたのに」
「いいの。だって」
彼女が、上履きを投げ捨てるように置きながら言った。
「あの人が『綺麗だね』って言ってくれたから伸ばしてただけだし」
「でも」
「いいんだって! ……ふり向いてくれないなら」
彼女の声が、ほんの少し上擦る。
「どれだけ綺麗にしてたって、同じでしょ」
「……」
「さ、それより早く教室に行こっ」
けれど、すぐさま彼女は笑顔を取り戻し、私の手を引いた。
私は、その温もりにときめきつつ、暗い気持ちになる。
私だって、綺麗だねって褒めたのに。
何だったら、あの人なんかよりも、ずっと多く。
いつでも、その髪を褒めてたよ。
そんなこと、言えないから。
「よっしゃ。帰り、ミスド寄ろっ」
明るく言って、彼女の肩に腕を回す。
鞄の中で、切なく紙袋が鳴った。
END.