第99話 別れ
オルガリを出発したコウ達は順調に進む。
確かにオルガリを過ぎると魔物との遭遇は多くなって来ました。オルガリでは次の町に首都方面に向かう際には護衛に探索者を雇うそうです。
コウは馬車周囲に結界を張り魔物を見付けると結界で囲み水で溺れさせて死体はアポートで引き寄せて収納していきます。なのでコウ達には護衛不要です。
次の町ロンドに到着しました。この町は第二の町エリオラへと向かう中継地となります。
ここでは2泊する予定。門の衛兵にオススメの宿を聞いて宿をとります。
当たりの宿でした。値段の割に綺麗でトイレも各部屋にあり食事も朝夕ついていて、それも中々美味しかった。
翌日は町を観光です。レオンと一緒に散策します。
お昼は屋台で色々食べました。この辺だと魔物の肉が安くて手頃な値段で各種串焼きが食べれました。レオンも口の周りをタレでべっとりになりながらモグモグと食べます。気に入った様ですね。
お腹も満たされて商店を見て周ります。探索者も多く歩いています。武器を持った探索者が珍しいのかレオンはキラキラした目で探索者を見ています。やはり男の子ですね。
宿に帰り夕食を食べたら明日に備えて寝ます。明日は第二の都市エリオラに夕方前には到着予定です。ちょっと寂しい気もしますがレオンともお別れです。まぁ、レオンにとっては近親者と一緒にいるのが良いですね。
私は結局他人ですから・・。ああ、情が移ってしまいましたね。
翌朝、朝食を食べたらエリオラへと出発。魔物の強さも数も今までより強く多いですが問題無くエリオラへ夕方前には到着しました。やはり衛兵におすすめの宿を聞き泊まります。
さあ、明日はレオンの伯父であるキルカンさんを探します。直ぐに見つかれば良いのですが。先ずは商業ギルド辺りで聞いてみましょう。
夕食を食べたらレオンとゆっくりしてレオンがコックリコックリと船を漕ぎ出したので寝ます。おやすみなさい。
翌朝、朝食を食べてゆっくりと宿で聞いた商業ギルドへとレオンと一緒に散策しながら向かいます。
朝から人が多く店も大半は開いています。確かこの街エリオラは副首都となるようです。何らかの事が首都エリオンで起きた場合にはここが首都機能を持つそうです。
成程、賑わっています。何か興味深い店もあります。探索者用のファントムアーマーとかね。後で寄ってみましょうか。楽しみです。
商業ギルドに到着しました。ギルドカード見せてキルカンという人物を知らないかと聞く。すると受付けのオネェさんがエリオラに居る商人リストを見ながら探してくれているが数が余りにも多く見つからない。
そこに青年がお姉さんから事情を聞くと何か心当たりが有るらしくお姉さんと代わり応対してくれる。
どうやらオラル商店という所に勤めている方がそうでは無いかと教えてもらう。場所も丁寧に地図を書いてもらい向かう。
何かレオンは緊張をしているようですね。何だかこれからお別れかと思うと寂しいですね・・。
大通りに出て進むとオラル商店という看板が見えます。かなり大きな商店です。
他の店舗と比べると3倍は規模が大きい。
中に入ると、
「いらっしゃい」と老年な方に声を掛けられる。
「あのう」
「何でございましょうか」と丁寧に返される。
「こちらにキルカンさんという方はいらっしゃいますか?」
「キルカンですか?私どもの店にキルカンはいますが、どのような事で?」
「はい、この子はキルカンさんの妹さんの子供になり、その妹さんが亡くなる時にこの子をキルカンさんのところまで連れて行って欲しいと頼まれまして」というとレオンはギュっと私のズボンを掴む。
「そうなのですね」と老年の方はレオンを笑顔で見る。
「では呼んでまいりましょう」と店の奥へと歩いていく。
数分が経つと老年の方が青年を伴って店の奥から出てくる。
「この子が」と青年はレオンを見る。レオンも警戒しながら青年を見上げる。
「はい、確かな事は言えませんが妹さん夫婦の持ち物があります。ご確認願えますか?」
「はい、ここでは何ですから奥までどうぞ」と言うと老年の方も頷く。老年の方は女性に声をかけて店を任せると一緒に応接室と思われる部屋へと入る。
ソファーに座ります。私とレオンが並んで座り、対面にはキルカンさんと思われる青年と老年の方が並んで座っています。
「では自己紹介からしましょうか、私はこの商店の商会長を務めるオラルと申します」と老年の方が挨拶する。この人がこの店の主人であるオラルさんか。
「私がキルカンです」と青年が挨拶、
「私は探索者で商人でもあるコウと申します。横に座るのがレオンです」と言うとレオンはしっかりとお辞儀する。よく出来ました。
「先ずはこの荷物を確認してください」と収納から夫婦の荷物を取り出してテーブルの上に置く。しばらくは外観を調べてキルカンさんは中身を一つ一つ確認していくと調べていた鞄から細工が施された櫛を取り出して見つめている。心なしか手が震えているようだ。
「ま、間違いありません。これは妹のものです。この櫛は妹が成人する時に私が親代わりに贈ったものです」と顔を伏せて肩を震わせる。
「ではレオンはキルカンさんの甥ということで間違いありませんね」
「はい、間違いありません。確かに妹から結婚して子供が生まれたと聞いていました。今度、今度連れて見せに行くと」と目に涙を溜めながらキルカンさんは顔を上げてレオンを見る。
「多分ですが妹さんはライノにお住まいだったのでしょうか?」
「そうです。ライノで結婚して夫婦2人で宿で働いていると言っていました」
「そうですか。多分ですがこちらに家族で向かっていたのでは無いかと思います。ライノとオルガリとの間の街道で魔物に襲われていました。ライノとオルガリの間は魔物が出ないと言われていましたから護衛がいなかったのかと思います」
「そうですか」とキルカンさんは肩を落とす。
「レオンですがどうしますか?」
「どうしますかとは?」
「お引き取りなさりますか?お引き取りなされないなら私が引き続き面倒をみますが」
「いえ、私が引き取り育てます。たった1人の妹の忘れ形見ですから」とレオンを見る。
「うむ、私も協力して面倒みようではないか」と商会長のオルカも言ってくれる。
「ではレオンの事を宜しくお願いします」とコウは頭を下げる。それから暫く話をして今日からレオンは引き取られることとなった。
レオンは寂しそうに俯いている。
店を出る。レオンとキルカンさんに商会長も見送ってくれる。最後にレオンの目線までしゃがむと、
「レオン、これで最後ではないよ。また会いに来るからな。良いか?」とコウが言うとレオンはコクンと頷く。
「そうか、元気でな」とレオンの頭をわしゃわしゃと撫でると立ち上がり、
「では私は行きます。レオンの事宜しくお願いします」とコウは頭を下げる。
「勿論です」とはキルカンさん。
レオンに背を向けて歩く。ああ、寂しいですね。
レオンは歯を食いしばり泣くのを我慢している。もう店に戻ろうとキルカンがレオンに声をかけるがレオンは動かない。
レオンは何か決意したのか一歩前に出ると、
「コウ!」と大きな声でコウを呼ぶ。コウが振り返ると、
「コウ!ありがちょう!」
と大きな声で叫ぶ。そして大粒の涙を流して手を振る。
コウは手を振り返し、また歩き出す。
また今度必ず来ますからねレオン。
さて次は首都エリオンに向かいましょう。
お読みいただきありがとうございます。
今日3話目となります。これにて今日の投稿は終わりとなります。
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