第98話 レオン
オルガリに着くと宿を探す。
適当に良さげな宿を見つけて宿の前に馬車を停める。箱馬車の中に入るとレオンは起きていた。宿に着いたと説明して宿に入ると2人部屋を取る。
う〜ん、何か受付の女性の対応が悪い。この宿を選んだのは失敗だったか?まぁ、1泊しかしないから我慢しよう。
部屋に入るとレオンには魔物の件を探索者協会に知らせて来るから部屋で待っていてくれと頼むと頷いて了承をした。だが寂しそうな顔をしたので、
「なぁレオン君。何も起きないが何か起きたら私を大きな声で呼びなさい。必ず助けに行くからな。ああ、そうでしたね私の名前はコウです」と言ってレオンの頭をわしゃわしゃと撫でる。するとレオンも少し安心した顔をして頷く。
宿を出て探索者協会へと向かい魔物の死体を受付に見せて説明。緊急案件として何人かの探索者を哨戒に向かわせる事が決定した。
報告も終わり宿に戻り部屋に入るとレオンが居ない。どういう事だ?
受付に行き子供が来なかった聞くと態度悪く、
「あんたが出て行った後直ぐ外に出て行ったよ」と言う。
3歳位の子供が1人で出て行くのに、この女は何も感じないのか?
これは何かありますね。
体表面に纏っている結界を緩めて魔力を放出すると女は、
「ヒィっ」と言って後ずさる。
「お前。嘘ついていたら殺す」と威圧を込めると女は尻餅をついて後ずさる。すると受付奥から男が出てくる。
「何事だ!」と言うがこちらに気がつくと顔色が真っ青になる。
「お前は?」
「こ、この宿の主人です」
「おい、この宿は3歳の子供1人で出て行こうとしても止めないのか?」
「わ、私は関係無い。この女だ」と女をみる。
「何を言っているのアンタ!同罪じゃない!」と女は叫ぶ。
女に近づき額を掴み闇魔法で記憶を探る。
「ちょっ、やめてってば」と暴れようとするが結界で拘束。主人も結界で拘束。
分かりました。こいつらはクズです。何人もの子供を誘拐して奴隷商に売っています。違法行為です。
場所も分かりました。直ぐには殺しませんが許すつもりもありませんから、このまま結界で拘束しておきます。
レオン。待っていてください。直ぐに助けに行きます。
「商会長、今回もうまく行きましたね」
「ああ、子供は高値で売れますから、特にお貴族様にはね」と笑う。
「小僧大人しくこの檻に入っていろ」と男はレオンを檻に投げ入れる。
「おい!大切な商品なんだ大切に扱え!」
「へい、商会長」と男は頭を下げる。
レオンは檻の中で膝を抱えてうずくまる。すると思い出す。
“何か起きたら私を大きな声で呼びなさい“
「・・こぅ」と小さく呟くと顔を上げて檻の中で震えながら立ち上がる。
「コ・ゥ・・た・・ちゅけ・・て」と小さく言うと小さな拳を握りしめて涙を堪える。そしてもう一度、
「コゥ!たちゅけ・て!」と大きな声でレオンはコウを呼ぶ!
「ウルセイぞガキ!」と男は檻を蹴るがレオンは勇気を振り絞り大きな声で叫ぶ!
「コウ!たちゅけて!」
「煩いぞ!」と男がもう一度檻を蹴ろうとした時、部屋のドアが弾け飛ぶ。
そこには魔力を撒き散らしたコウが立っている。
「誰だテメェ!」と言うが直ぐに結界で覆われて動けなくなる。
そこに騒ぎを聞きつけた男たちが4人入ってくるが全員拘束。更に部屋を出て全ての部屋を調べて全員拘束していく。
拘束し終わるとコウはレオンが入れられている檻を破壊してレオンを救出。コウはしゃがんでレオンの目線に合わせるとレオンの頭を撫でながら、
「よく頑張りましたね」と言うがレオンは、
「ごめんなしゃい」と俯く。
「レオンは悪くありませんよ」とコウは言うがレオンは横に首を振る。
「では言い方を変えましょうか。御免なさいではなく“ありがとう“と言ってください」と言うとレオンは顔を上げて頷き、
「コゥ、ぁりがちょ」と小さな声で言う。
「はい、よく出来ましたねレオン」と言い笑顔でレオンの頭を撫でる。
その後は街の衛兵を呼んで事情を説明すると衛兵から最近子供の誘拐が多く起きていて調査中だったと聞かされて感謝された。
勿論、宿は衛兵からお薦めを聞いて変えた。衛兵からは捜査の関係上、少しの間オルガリに滞在してくれと言われて了承。1週間滞在することになった。
その後、衛兵に聞いた話では奴隷商から芋蔓式に組織を捕らえて客であった貴族まで捕まったと聞いた。
ここでコウ達はお役御免となりオルガリの街を後にする。
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2話目です。次は17:00に投稿。
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