第70話 開戦
バルモア王国へと向かう街道で王都からの冒険者の集団と合流。
そこにはファントムギアに乗った銀狼の咆哮の3人もいた。
「久しぶりだなコウ」とは銀狼の咆哮のウリル。
「銀狼の3人も元気そうですね」とコウが言うとダリスとランガも手を挙げて応じる。
「でだコウ。その歌はなんだ?」
「うん?帝国殲滅の歌ですよ」と小首を傾げるコウ。
「まぁ、コウが帝国に狙われた事は知っているが、なんというかその歌な」と周りの冒険者を見ると苦笑いしている。
「では行きましょう!帝国殲滅の地へ」とコウは歌う。
バルボア王国へと入り帝国との国境を目指す。途中の街や村では歓迎的な扱いを受けて一行は進む。
バルボア王国に入ってから4日後に国境砦に続く森へと到達。森の道を抜けると砦に到着。そこを迂回するように国境へと向かうと広い平原が目の前に広がる。
1㎞先に帝国側の砦が見える。そして敵の軍勢が横に広がって見える。かなりの数だ。
そこから400mも離れた位置にトルドア王国とバルボア王国の軍勢が布陣している。
凄い兵の数だ。帝国側が20万、トルドア王国とバルモア王国が合わせて15万の軍勢が対峙している。
子爵軍は伯爵軍と並び中央に配置。その横に冒険者が例外的に配置される。これは子爵軍及び伯爵軍がファントムアーマーを所有していることからの配置である。冒険者にしても合計50機を超えるファントムギアがあるために他のファントムアーマーと共に集中運用する為の配置となる。
コウは遠見の魔法で敵陣を確認。前面に出ているのは中央に200機を超えるファントムアーマー。これは旧ミリガド王国との戦争においてミリガド側が使った機体に似ている機体となっている。ミリガドで使われた物より新しい機体なのだろう。
左右の前面に展開しているのは貧相な装備で痩せほそった民兵。殆どの民兵は士気が低いと見える。
その後ろに貴族の騎士団や魔法師団がずらりと布陣している。
「あの歌はなんだ?」と伯爵。丁度、打ち合わせに来ていたウッドランド子爵は苦笑しながら、
「あれは冒険者達が歌っています。帝国殲滅の歌だそうです」
「あれのせいか?」
「はい、例の冒険者です。リンドルンガで帝国の者に襲われましてそれで・・」
「ククク、これから起こることを考えると帝国が哀れだな」
「はい、それでその冒険者からの提案で初手で彼の持つファントムアーマーの武装を使いたいと申し出ています」
「よかろう。楽しみにしていると伝えてくれ」と戦場を見つめる。その顔に悲壮感は無い。
その後、大きな天幕でトルドア王国とバルモア王国の主だった諸将が集まり軍議。これにより若干の配置変換はあったが概ね当初布陣した通りになる。
翌朝、敵方の陣に動きがある。敵ファントムアーマーが準備始動している。それを見たトルドア王国軍もファントムアーマーとファントムギアを準備。
魔法師団が宮廷魔法師を守るように前に出る。
トルドア王国のファントムアーマーは伯爵軍20、子爵軍20、王家騎士団20の合計60機。その内王家騎士団の物は総指揮を任される公爵家の天幕の前に布陣している。
敵陣で太鼓が鳴らされる。それと共に民兵がゆっくりと前進。
トルドア王国でも太鼓が鳴らされると中央の陣からモスグリーンの機体が前に出る。
その機体が背負っている背面装備の左肩に装備されている杖が前を向く。杖の先端には火魔法の増幅触媒である大きなルビーが光っている。
モスグリーンの機体の周りの魔力が機体へと吸い込まれて杖の先端のルビーが光り、その光りが大きくなっていく。
杖の先端のルビーの前に光り輝く大きな魔法陣が展開。
大きな高温で圧縮された火の球が敵陣中央へとゴゥーッと言う音と共に高速で飛翔。
敵ファントムアーマーの頭上を通過。そして・・・。
火の球は数千の拳大の火の球に分裂。それは飛翔方向へ幅30m、長さ200mの帯状にばら撒かれる。
高温圧縮クラスター火球魔法。
数千度の火の球が敵騎士団や魔法師団、豪奢な天幕を襲う。これにより敵は消し炭となる。更に左右に発射。
敵陣、中央から左右285mが火の海と化す。この初手の攻撃により敵の数は半数が何もせずに壊滅。司令系統にも支障をきたす。
だが、左右の被害を逃れた敵はそれでも前進を開始。無被害の前面の民兵は混乱して足を止める。
トルドア王国が前進を開始。
射程距離に入ると魔法師団が結界を張る。その後ろから宮廷魔法師と各領の魔法師団から魔法攻撃が敵へと降り注ぐ。
敵の生き残った魔法師も反撃を開始が・・。
子爵家のファントムアーマーの背面装備が火を吹く。
4機の子爵家のファントムアーマーが結界を前面に展開。その2列後ろの左肩に装備された杖を前に向ける。先端にはルビー。
魔法陣が光ると火魔法が射出される。曲射にて火魔法が着弾。半径15mを焼き尽くす。
4列目のファントムアーマーが杖を展開。杖の先端には青い大きなサファイヤ。
それが光り魔法陣から氷の槍が曲射にて射出。
着弾した氷の槍は砕けて半径20mを凍てつかす。
5列目の4機が杖を展開。先端には茶色く光る大きな琥珀。その前に魔法陣が展開されると岩石が曲射にて射出される。それが敵頭上10mで弾けて敵に降り注ぐ。
1列目の結界を張っているファントムアーマーがしゃがむ、2列目に配置されたファントムアーマーが左肩の杖を展開。先端には光り輝く大きなエメラルド。
魔法陣が煌めくと水平方向広範囲に風の刃が放たれる。
これにて敵兵力の抵抗は微小になるが敵ファントムアーマー200機は健在。その200機が前進を開始する。
「見せて貰おうか帝国の最新のファントムアーマーの力とやらを」とコウは機体を操作。背面の装備を外すと収納して巨大な武器を出して担ぎ走りだす。
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