第37話 米
山賊のアジトへと向かうのは俺1人。4人には休んでもらう。頑張ったからね。
結果から言うとエルフや獣人との出会いはありませんでした。特に目ぼしい収穫も無し、ワインの樽が3つと隣国が山賊に食糧支援していた証拠の書状のみ。
荷馬車に戻ると山賊の遺体を埋めていた。生き残りの山賊も殺した。連れて歩く訳には行かないし、解放して他の商人を襲わないとも限らないからね。
葛折りの山道を荷馬車で登る。
夕方前に開けた場所に出る。今日はここで野営だ。馬によく頑張ったなと生命の実を半分食べさせる。もう半分は俺が食べる。
すぐに食べきった馬は俺が齧っている生命の実を見ている。しょうがないと食べかけの実を食べさせる。嬉しそうだ。明日も頑張ってくれよ。
焚き火を起こしてみんなで囲んで夕食を食べる。マルさん以外は収納もちなので出来立ての食事が並ぶ。
俺は山賊のアジトから貰って来たワインの樽を一つ出してみんなに配る。飲んでみると悪くない味だ。
夜は銀狼の3人と俺で交代で見張りをする。
1番初めの当番となった。みんなは毛布にくるまり寝ている。
薪をくべる。薪が弾けて火花が散る。焚き火の火って見飽きないよね。空を見上げると星空が広がる。
この世界も星で惑星なのだろう。そんな事を満天の星空を見ながら思う。
ウリルが起きてきて見張りを交代する。結界で柔らかいベッドを作り毛布を掛けて寝る。
翌朝は簡単に朝食を済ませて出発する。何か馬が元気で山道をモリモリ登って行く。生命の実が効いたかな。
1時間も登ると山頂に到着。うん、眺めが良いね眼下には隣国との境にある村が見える。
ゆっくりと降りていく。降りは早い。夕方前には村に着いた。村人の数は70人程度の村だ。
村長とマリオさんが話をして空き家を借りることとなった。代わりにマリオさんは小麦の入った袋を渡していた。
空き家に入り中をクリーンで綺麗にする。少し暗いし、もう少しで夜なのでライトを浮かべて明るくする。
夕食を食べたら古代書を読みながら結界のベッドに寝転ぶ。
今日は見張りはしないが結界を張ることにした。俺がね。
特に問題無く夜が明ける。
村を出発して1時間程進むと簡易の検問があった。モルゾ王国側の検問所だ。
問題無く通過。30分後に今度はモルゾ王国と紛争中のテラノ王国側の検問所に着いた。何やら険悪な雰囲気だ。扱いも悪い。
それでも30分程で通過。良い道とは言えないがこの道はテラノ王国の主要な都市を通らず抜けられる道だ。このまま進んでテラノ王国を抜けてしまう。
右側に村が見えるが通過する。夕方になるまで進み続けて開けた場所で野営する。今晩も交代で見張りだ。念のために荷馬車と全員が収まるように結界を展開しておく。
今回も見張りは俺が1番最初だ。
問題無く朝を迎える。朝食を終えると出発。変わり映えしない景色を眺めながら荷馬車は進む。そんな行程進んで3日程過ぎた。途中ゴブリンの襲撃を受けたぐらいで問題なく目的の国の国境検問所に到着する。
目的の国の名前はラズル王国だ農業国で場所によっては珍しい鉱石が産出される。今回はそれが目当てだ。
検問所を抜けて1時間もすると田んぼが広がる。ああ、ライシィだ。米だよ米。ああ、楽しみだ。
街に入る。入場料も取られない。良い所だ。今日はここで1泊する。宿で手続きしたら街に出る。
米米米米だ。米だ。米は何処だ?
ライシィを買える場所を探す。聞いたら直ぐに教えて貰えた。教えてもらった商店に入る。直ぐにライシィを見せて貰う。
うん、なんとジャポニカ米に近い品種だ。買えるだけ買うと言ったら驚いていたが、収納持ちだと言ったら納得していた。トルドア王国から来たと言ったのも良かった。
お隣のテラノ王国に対しては良い感情を持っていない様だったがトルドア王国に対しては紛争前には交易が盛んだった事からよく来たなと歓迎された。
蔵一つ分のライシィを買うことに成功する。ああ、これで米が食える。宿に戻ると宿の裏庭を借りて米を炊く。
竃を結界で作る。土鍋のような物を結界で作る。米を研ぎ水を入れて炊く。ああ、米が炊ける匂いがして来た。
至福の時間だ。
炊けたよ。少しの時間蒸らしてと、ハイ完成です。結界でしゃもじを作成して切るようにかき混ぜる。
ふっくらツヤツヤした米だ。美味しそう。
結界で茶碗と箸を作り、一口食べる。
あああ、美味いよ。涙が溢れる。生きてて良かったぁ。一度、死んだけど。
次にクリーンで除菌した卵を掛けて醤油を適量垂らす。かき混ぜて一口。
うん、TKGだ。間違いない味だ。美味い美味いぞ。
残りは全て塩むすびにしてしまう。道中食べよう。
夕方、宿の1階で夕食を食べる。この辺でのライシィの食べ方はお粥であった。塩と色々な具が入っていてこれはこれで美味しい。でもやっぱり炊いたご飯が1番だな。
酒のつまみとして出てきた塩肉野菜炒めをおかずにしながら塩結びを食べる。美味い。
「お客さん、それはライシィですか?」と従業員に聞かれる。そうだと答えるとどうやって作るのか聞いてきたので教えてあげた。これで炊いたご飯が流行るといいな。
せっかくなので塩結びを3個あげた。料理長らしき人も出てきて一緒に塩結びを食べている。話をしたら喜ばれて色々教えてしまった。
これでもっと米の文化が広まれば良いな。
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