第290話 新しい宇宙 タキノとルカ⑨
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称は架空で有り、実在のものとは関係ありません。
◇新しい宇宙 ルカ
一週間が経った。その一週間でこの小型戦闘艦の装備を整えた。
砲塔が二門装備されているが、これを光魔法を使い改造。光魔法による灼熱の光線で敵を穿つ。この操作は基本手動となるがタキノに担当してもらう。一応は新たに作った作業ポッドを二体配備してタキノの命令に従う。
他にもこれも光魔法のアロー系を使い、船艇周囲に魔法陣を展開してホーミングにて狙い撃つ。数は片側一五づつの三十。
かろうじて付いていたシールドも廃して結界を五重に展開させる。これで防御も良いだろう。
船自体の操作は私がコントロールルームにてポッドをかいしてする。通常はポッドによる自動航行だ。
これだけならポッドを使って三日で出来たのだが、他にも細かく気になり手を入れているうちに一週間掛かってしまった。
でもその甲斐あって快適に過ごせるはずだ。タキノには少し退屈かもしれないけれどね。
珍しくタキノがコントロールルームへと入って来た。
「順調か?」
「もう発進できるわよ」
「そうか!」
「そうよ。明日の朝に出発するで良い?」
タキノは腕を組んで少し考えてから、
「そうしてくれ。何か俺がやることはあるか?」
「前にも話した通り戦闘になった時に砲塔二門の操作をお願い」
「分かった」
「アーマーを用意出来なくて申し訳ないのだけれど」
「それはしょうがないな」
とタキノは笑う。何かドキッとしてしまった。不意に見るたまにの笑顔は何か心に来る。それがタキノであっても。
タキノは話は終わりと食堂へと向かったようだ。食堂のキッチンには食材や酒類も置いてあるから一杯やるのだろう。
さて私も少し飲むかな。
翌朝。
コントロールルームにはタキノも来ている。基本はポッド操作なので見ているだけだ。前面を映すモニターに魔法陣が展開されるのが映し出される。
短距離転移の魔法陣だ。ここから上空へと転移する。
「出発して」
と私がポッドに指示を出すとゆっくりと船が前へと動き出す。ズブズブと魔法陣を抜けると上空へと転移する。
成功だ。
「やったな」
とタキノは嬉しそうにしている。私も少し安心した。まだ完全にみんなと会えるとはかぎらないけれど、これで会える確率は上がると思う。
徐々に高度を上げていくと宇宙空間へと辿り着く。周回起動を何周かして、この星のデータを収集する。
それも終わりみんなの元へと船を向ける。
「会えるといいな」
思わず声に出してしまった。それを聞いていたタキノは、
「会えるさ」
とボソリというとコントロールルームを出ていく。
ふふ、あれで励ましているつもりなのかしら。本当に不器用なのね。タキノの後ろ姿を見て微笑んでしまう。基本は悪い奴ではないからね……ただ一言多い。
徐々に小さくなっていくモニターに映る、今までいた星を眺める。それを見ていると少しづつ心が軽くなっていく。
さてとタキノも食堂だろうから私もいくかな。油断は禁物だけども一杯飲むくらいは許されるだろう。
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