第289話 新しい宇宙 サイとヘルミナ⑨
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称は架空で有り、実在のものとは関係ありません。
◇新しい宇宙 ヘルミナ
サイの交渉により小さな一番小さく年季の入った宇宙船を報酬としてもらえるようになった。宇宙船へと入る前にサイと私の船の登録を済ませると中へと入る。
中は思っていたよりは綺麗ね。コントロールルームへといく前に個室が五部屋あった。
一つ目は正しくVIPルーム。応接設備に豪華なベッドが二つ。それに加えて簡易キッチンと浴槽付きの風呂場にトイレがついている。この部屋はサイと話して打ち合わせなどに使うこととする。向かいにある部屋二つはツインルーム。トイレにシャワーがついている。
この並びに2段ベッドが二つある部屋。多分だが護衛用だろうと思う。トイレやシャワーは付いていない。
奥まった所に食堂とキッチンにシャワールーム二つにトイレも二つある。更に奥に三段ベッドが二つある部屋が一つ。料理人や使用人用の部屋だろう。
更に奥には後部ハッチがある倉庫。冷凍冷蔵の魔道具や棚が並んでいる。勿論、中身は空だ。
戻ってコクピットへと入ると操縦席が二つある。二人で操縦出来るようだ。これは小型戦闘艦と違って私たちに合っている仕様だ。
「ふう」
なんとか起動に成功する。各種モニターには現在の船の状態などが表示されている。
「問題ないわね」
と安心して漏れてしまう。そこにサイも来て問題ない事を知るとホッとしているようだ。
モニターに表示される、この船のマニュアルを見ていると、この船が見た目より良い船だとわかる。
要人を乗せる用の宇宙船で武装は無いが足が速い。王女達の小型戦闘艦より十倍の速度が出る。これは良いわ。
あらかた確認するとサイと相談してサイには食料を調達してもらう事となった。王国側で用意してくれるようだ。
収納にも食料はあるが多い分には問題はない。サイが船から出ていくのを見送りながら食堂へと向かう。
「キッチンか……私は使えないわね」
と溜息を吐く。
?
何か忘れているような………そうだわルカから試験運用を任されているものがあった。
ゴソゴソと収納を確認すると、
「あったわ」
ご機嫌になって収納から物を出す。
「ふふふ」
目の前には万能試験ポッドが三体と食堂の机の上には操作ユニットである魔導タブレットが一つ。
タブレットを起動させてメニューを確認していく。そのメニューに表示されている項目を見て口角が上がる。
この万能ポッドは元々は地球からの移住者である農地や酪農といった事に従事する人達用に用意された物だとルカから聞いている。私が依頼されたのはそれ以外の使い方。
家での家事のサポートだったりいった独り身の人をサポートするためのポッドだ。ルカは色々と出来るが私は家事といった事はダメダメだ。それで渡されたのだろう。
一体目にはキッチンでの料理や各部屋や宇宙船内の清掃をセットして、二体目には宇宙船の操縦補助や宇宙船のメンテナンスといった物をやってもらう。
ポッドを起動すると一体目はすぐにキッチンや船内を確認しにいった。二体目はコクピットへと向かいコクピットにて宇宙船と接続してデータを取得しているようだ。
三体目は特に役目は割り振らずに色々と足りない場所をサポートさせる。
サイが戻ってから二時間もすると宇宙船の外に食料が運び込まれてくる。すぐに後部ハッチを開けて三体目に指示して倉庫へと収納してもらう。
かなりの量があるわね。肉類に魚、野菜に香辛料各種などなど大量だ。ポッドは確認しながら魔導冷凍冷蔵庫や棚へと収納していく。
そこに一体目のポッドが来て必要と思われる物を食堂へと運んでいく。
後部ハッチを閉めて食堂へといくと二体目ポッドがキッチンを整理している。これで夕飯も大丈夫かなと思う。
コクピットへと行くと二体目が宙図をモニターで確認しているのが見える。他の宇宙船には宙図データは無かったのを確認している。これは当たりだ。
早速、サイを呼んでポッドを交えて、ここを出る際のルートを相談する。
「これならなんとかなりそうね」
「ああ、人種の生存権方面へと向かえばなんとかなるだろう」
「そうね」
と私はサイへと返し宙図をもう一度確認する。
数日が経って何十人もの王国が用意した人員へと宇宙船の操作を教える。それもなんとか終わり自分達の船へと歩いていると、
「何かつけられているな」
とサイが後ろを見ずに呟く。
「そうね、騎士かしら反応からすると昨日来た連中ね」
「数は二十といった所か」
「私は船の準備をするわ」
「分かった。俺が対処する」
といってサイは足を止める。私は身体強化をフルで掛けて走る。後ろでは結界と剣が交差する音がいくつも聞こえる。あの程度の騎士の能力ではサイを抜くのは無理ね。
すぐに船に乗り込むと宇宙船を飛び立てる状態へと持っていく。五分もすれば準備が整いサイも船へと戻って来た。
「どうだった?」
「殺しはしないが当分は動けないだろうな」
「王女の指図かしら?」
「違うな。他の王城のものだろう」
「出るで良いわよね」
「ああ、もう十分だ」
と聞いて隣で操作するポッドへと指示を出して船に付いている物を全てパージする。
「ルカちゃんに感謝ね」
と私はポッドに記録されていた短距離転移の魔法陣を船の前に展開させる。
「ここから上に千mで良いかしら」
と手探りで設定すると船を前進させる。ヌルリと魔法陣を抜けると下には地表が見える。
「なんとかなったな」
とサイが笑っている。
「彼らは船をどうやって地表へと出すのかしら?」
「わからないが頑張ってもらおう」
ともう関係ないとばかりにサイはモニターを見ている。
「ではいきましょうか」
と宇宙船は上昇していく。
お読みいただきありがとうございます。
17時にもう1話投稿。
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