第287話 タキノとルカ⑧
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称は架空で有り、実在のものとは関係ありません。
◇新しい宇宙 ルカ
宇宙船だ。宇宙船がある。隣でポカーンと宇宙船を見上げているタキノを見ると何故か冷静になれる。
宇宙船から下へと伸びている入り口らしき物へと近づいて行く。
「入り口ね」
と思わず声に出てしまった。後ろから着いてくるタキノも何かワクワクした顔つきになっている。
入り口周りを調べると小さいコンソールが出て来た。これに魔力を流すと扉が開き、その扉を抜けると階段があり登って行く。
階段を上り切ると宇宙船へと入る気密ドアが見える。そこにも小さなコンソール、それに魔力を流して扉を開くと通路が見える。
中へと足を踏み入れると通路の明かりが灯る。
「生きているようだな」
と天井を見上げてタキノが呟く。そのまま通路を直進していくと突き当たりに扉があり、扉の前に立つと自動的に扉が開く。
開いた扉の先へと足を踏み入れると、そこは宇宙船のコントロールルームらしい場所。正面にあるコンソールを弄ると他のコンソールにも明かりが灯る。
「いけそうだわ」
「そうか」
とタキノも何か嬉しそうにしている。
ふむとコンソールを弄っていると色々と分かって来た。ナブのようなAIが無いせいで殆どが手動だ。そうだと収納を確認するとナブと相談して作った物があるのが確認できた。
「これでいけるわね」
と収納からタブレットと万能型作業ポッドを四体出して、タブレットを操作してポッド達を起動させる。これは地球からの移民者向けにナブの恩恵受けられない農業、畜産中小規模へと貸し出す用途で作り、試験で使おうとしていた物だ。
そして宇宙船には制御用のAIは無くても、それなりのコンピュータは各所に搭載、設置されていて繋がっている。
ではどうするか?
無いならば簡単なAIを繋げて制御してしまえば良い。一体のポッドの点検ハッチを開いてポッドの制御AIから点検用のコードを引き出して、コンソール近くにあるソケットへと繋げる。何故かソケットのサイズが同一規格になっている。どうしてだろうか?
少し考え込むが、それは後で考えれば良いと頭を振り目の前の作業に集中する。
タブレットを介してポッドのAIへとアクセス。そこから宇宙船の各コンピュータへと繋げて行く。
これで準備は出来た。さて上手く行くかな? とタブレットに表示されたボタンを押す。
するとタブレットへと各種データが流れ込んで来てポッドの制御AIが機能し始める。
「上手くいったか?」
「ええ、何とかなったわ」
とタキノへと笑顔で答える。ふう、これで少し宇宙船に手を加えれば、この星を出れるわ。次はと考えてタキノが壊した壁を修復して塞ぎに行く。
タキノは少し飽きたらしく、この宇宙船がある大きな格納庫を走りにいった。元気ね。階段を再度登って壁を修復して通路を魔法で埋める。これで誰も入って来れない。
宇宙船へと戻るがタキノは楽しそうに走っている。
宇宙船へと戻り、内部を確認・点検する。うん、何とかなるわ。とりあえず四つある個室の一つを占有して宇宙船の改修計画を考える。
まずは強固な防御機能である結界をつける。一応は元から宇宙船には小さなデブリ程度を弾けるシールド? らしき機能は付いているようだが防御機能としては弱すぎる。
それから武装も追加で用意した方が良いだろう。この小型艦程度の宇宙船の武装として光学系の砲塔が付いているが、これも弱すぎる。魔法系の攻撃手段なら追加できそうだ。
「こんな物かな」
一応は艦載機らしい物を積むスペースはあるが手持ちの材料では艦載機等は作ることは出来ない。タキノには武装の制御をお願いしよう。
あとは魔法陣と魔石で便利機能も追加かな。タブレットで宇宙船にあったデータを眺めていると簡単な宙図が出て来た。
これによると正確かは分からないが、ここらはこの宇宙船を作った者たちの勢力がいる端っこにあたるらしい。
遺跡がこんな状態でいると言うことは、この宇宙船を作った者たちが生存しているかどうかは疑問だし、生存しているとしても友好的とは限らない。
一応は勢力図の中心を目指すべきだろうとは思う。あとは他の仲間たちと合流できるかが問題だわ。直ぐに見つかると良いのだけれど。
中心へと向かいながら、途中にある星を探索するしか無いわね。収納にかなりの食料があるといっても無限では無い。途中で補給も必要だ。
はぁ。思わず溜息が出る……。
タキノはというと一度戻って来て自分の部屋を決めたら直ぐに船外へと出て瞑想を始めた。ホント、呑気なものね。
さてと食堂のキッチンを調べて何か作ろうかしらと部屋を出る。
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