第282話 サイとヘルミナ⑦
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称は架空で有り、実在のものとは関係ありません。
◇新しい宇宙 サイ
俺らの回答を聞いた王女は素早く行動して遺跡へと向かう準備を整えた。
「それでまた馬車か…」
王都まで来た時よりはマシな馬車だが、それでも揺れは酷い。結界で何とか凌いでいる状況だ。ふと隣に座るヘルミナを見ると平気な顔で何かの本を読んでいる。
この一行は王女とそのお付き二人が乗る豪奢な馬車を中心に、その馬車を囲む様に女騎士が乗る馬が四頭。その後ろに俺らが乗る馬車、これにはギルドからの同行者も乗っている。
最後の三台目の馬車には文官四名が乗っていて、その一行を守るように十騎の騎士が乗る馬が追随している。
陽が少し傾いて来た頃に遺跡へと到着した。今日の所はここで野営となる。遺跡の守備を担当している兵士達と騎士達が手早く天幕を設置すると俺らと同行者に一つの天幕を使うことを許される。
「何かめんどくさいな」
と思わず呟くと
「もう少しの我慢よ」
とヘルミナは意に介さない。その後は不味い食事が配られて、何とか口に突っ込んで食べたら直ぐに就寝した。
翌朝は朝食を食べた後に全員が集まり予定を聞かされる。どうやらこの場に四人の騎士と守備の兵士を見張りのために残して、他の者は遺跡へと入ることとなった。
先頭を女騎士二人が先導して遺跡へと入っていく。手に持たされたランタンの明かりが心細くなる程に弱い。
暫く通路を進むと崩れた壁が見え、そこを抜けると下へと続く螺旋階段を降りていく。かなりの深さだ。
もう一時間は階段を降りている。
時折、ランタンの明かりで壁を照らすと今までの風化した遺跡とは違いツルリとした壁になっている。
どうやら状態保存の魔法が掛けられているようだ。
更に三十分程階段を降りると入り口が一つの空間に辿り着いた。その入り口を入っていくと……。
「これは凄いな」
魔導具の明かりで照らされた巨大な空間が現れ、その空間の先に大きな物体の影が見える。
「あれが宇宙船ね」
とヘルミナは楽しそうに、その黒光する船体を眺める。
「ああ、本当に宇宙船の様だな」
と俺は安堵の息を吐く。何とかなりそうだ。
「あれが例の物体です」
と王女の隣にいる文官が説明を始める。どうやら船の種類は三つ。王城で確認した絵図では戦闘艦らしき物と輸送船が二種あるらしい。
近づくにつれて船体が良く見える様になってくる。
「戦闘艦は小型艦位の大きさかしら」
「そうだな思ったより大きくないな」
と見つめる先には砲塔が三つ付いた戦闘艦らしき物が二隻見える。その隣に中型艦位の輸送船二隻に少し草臥れた小型輸送船が一隻見える。
「あれが本当に空を飛ぶのかしら」
と王女は無邪気に目を輝かせている。
さてといつまでも眺めている訳にもいかない。戦闘艦へと近づいていく。
「あれが搭乗口ね」
とヘルミナが船体下部から伸びている搭乗口を発見する。そこに近づいて扉と思われる周囲を確認すると、
「これね」
とヘルミナが壁の一部を押すとコンソールが現れる。ヘルミナは無造作にモニターの上に手を翳すと、
ピピピ!
と音声が鳴り画面に明かりが灯り文字が映し出される。
「なるほどね」
とヘルミナは呟くともう一度画面に手を翳す。すると画面の色が緑に変わり認証登録完了の文字が浮かぶ。
ヘルミナは画面の指示に従い画面を操作すると搭乗口の扉が開いていく。
「開いたわ」
とヘルミナは警戒もせずに中へと入っていく。その後へと続き中に入ると船体へと伸びる階段が見える。そこをヘルミナは登っていく。
「お、おい。少し待てよ」
とヘルミナに声を掛けるがヘルミナはお構いなしに登っていく。
階段を上り切ると船体へと入る扉が見える。そこもヘルミナは壁の端末を操作して扉を開けると船体内へと入っていく。
ふと後ろを振り返ると必死になって付いて来ている王女様達が見える。
とりあえず中の事はヘルミナに任せて俺は王女達を待った方が良さそうだ。
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