第28話 最後の講義
狩りと採取を続けてギルドへと戻る。精算が終わるとメリーさんに声をかけられる。
「コウさん。ギルドマスターがお呼びです」と2階のギルドマスターの部屋に連れていかれる。どうやら拒否権は無いらしい。
「おう、来たかそこに座ってくれ」
「では私は戻ります」とメリーさんは受付に戻って行く。お茶は出ないのか?茶菓子は?とか考えていると机の向かいのソファーにギルドマスターが座る。
「今日来てもらったのはな。確かコウは15歳だったな」
「はい」
「来年の4月から王都の騎士・魔法師学院に入ってもらおうと思ってな」
「学校ですか?」
「そうだギルドでは若い有望な冒険者を年に何人か学院に送っている。勿論、費用はギルド持ちだ。どうだ?」
「どうだと言われても」
「そうだな。学院では武術に魔法やマナーなどを学ぶ場だ。勿論、貴族もいる。名目は勉強だがな。冒険者を送るのは人脈を作る為だ。魔獣を狩るだけではないからな。マナーを学び貴族とやり取りできる人材を育てる為だ」
「はぁ」
「それでな今回、コウが選ばれた。最近の冒険者では登録してからCランクに上がるまで最速だな。そういう所も考慮されて選ばれた」
「そうなんですね」
「来年の2月に王都で試験を受けてもらう。これは合否試験ではない。クラス分けのための試験だ。他の者は違うがな。2月近くなったらまた知らせる。行くときはギルドで馬車を仕立てて行くから快適だぞ」
これは断れないパターンですね。それも異世界定番の学院編です。はぁ〜メンドクサ。
「分かりました」
「うむ、では後で資料を渡すからよく読んでおいてくれ」
帰りに受付で資料をもらいギルドを後にする。何か憂鬱だ。王都とかもう厄介事の匂いしかしない。
萎えるわ〜。
宿で資料を読むも内容は薄い。でもアレだ図書館だけは楽しみだ。見栄の為に古代書が並んでいると良いのだけれど。
翌日、雑貨屋に行くと古代書が2冊入荷。買いました。雑貨屋に貢ぎました。
帰りにギルドに寄り学院について聞くと皆に心配された。よく聞くとどうやら毎年冒険者は学院に何人かか行かされるが、その殆どが半年で辞めている様だ。貴族や上級商人の虐めが酷いのだとか。益々、憂鬱になる。メテオ発動しそう。出来ないけど。
宿に帰り古代書を確認する。息抜きは必要だ。
今回の2冊は大当たりだ。
1冊目は魔導工学の本で2冊目は戦略級集団魔法陣についての本だった。面白い。
魔導工学の本は機械工学と魔法陣による魔導機の作成について書かれていた。魔法による加工技術により精巧に加工された機械を魔法陣を使い動かすと言うものだ。
加工方法や使われる魔法陣や改善方法などなど多岐に渡る。
これは読んでて飽きないね。初めの方に書いてある初期の魔導機はまんま蒸気機関だね。熱源が魔法陣でエネルギーは魔石だ。今度作ってみようかな。凄いなー、水の補充も自動で魔法陣で供給するとかね。でも制御は機械的なんだね。熱量は一定で機械的に操作することでコントロールか面白い。
加工技術も何とかなりそうだな。現実逃避に作ろうかな。作る場所は聖域が良いな。
最後の講義が終われば作りに行こう。
この日は講義の最後の日だ。
マリオさんの拠点に行くと既にいつものように4人揃っている。
「今日は最後なので個別にスキルを覚えましょうか。では先ずはマリオさん」
「はい!」何か今日のマリオさんは緊張気味だ。
「ではマリオさんは商人という事で鑑定なんか如何ですか?」
「鑑定ですか?私が鑑定を覚えられるのですか」と目を見開く。
「ええ、そのつもりです」
「分かりました頑張ります」とやり方を教えていき、何とか名前を鑑定することに成功する。あとは何回も使って習熟度を上げて行くだけだ。
さて次は冒険者3人。3人には結界の応用を教える。
3人と共に外へ出る。マリオさんは必死に鑑定をしているから置いてきた。
「では始めましょうか」と始める。先ずは雨よけがわりに頭の上に結界を展開。日差しが強ければ光を遮って結界が白くなる。
足場がわりに結界を使う。階段のように次々に生成すれば宙空を歩ける。勿論、結界に乗り操作して動かす。これは獲物を運ぶにも良いかもしれない。怪我人とかもね。
他にも水だけ透過させたり火や熱を透過させたり遮断したり。風を通したりそれを調整したり、竈門を結界で作ったり、カップや皿や鍋やフライパンなども作ってみせる。お風呂もね。火魔法使いがいるからね。水魔法使いには血抜きの仕方も教えた。土魔法使いには落とし穴の有用性と水魔法使いとの連携の仕方とかね。要はアイデア次第で色々と出来ると教えた。
3人は話し合い、ああでもないこうでも無いと言って楽しんでいる。それでいいと思う。楽しまないとね。
これで講義は終わり。これからは各自頑張って欲しいと思う。勿論、楽しんでね。
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