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第271話 新しい宇宙 タキノとルカ④

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称は架空で有り、実在のものとは関係ありません。

◇新しい宇宙 ルカ


「見えてきたわね」


まだ少し遠いが高い壁に囲まれた街が見えてきた。あまり発展はしていなそうに感じるわ。


「ドラゴンさん、あの街のかなり手前で降ろしてもらえるかしら。ドラゴンさんが近づくと街がパニックになる可能性があるわ」


『そうか、分かった』


とドラゴンさんが答えると徐々に高度が下がり街道から外れ開けた場所に降り立った。ドラゴンさんから降りて


「ドラゴンさん、ありがとうね」


『なんということは無い』


と言って飛び立っていく。タキノは相変わらず不機嫌な顔をしている。ふぅ、本当にタキノはお子ちゃまだ。そのお子ちゃまが武力を持っているのだからタチが悪い。


「いくぞ」


とタキノはぶっきらぼうに言うと街道の方へと歩き出す。その後ろを私はため息を吐きながら付いていく。


街道に出ると街の方向へと歩き、四十分も歩けば壁のある大きな門に辿り着いた。


「並んでやがるな」


とタキノは舌打ちして最後尾に二人して並ぶ。


「少しかかりそうね」


とタキノの顔を覗き込むように言うと、


「なんだ?」


「まだ、不貞腐れているのかと思ってね」


と笑いながら言うと、


「不貞腐れてねえし」


とタキノはソッポを向く。そんなにドラゴンと戦いたかったのだろうか。


脳筋め!


二十分もすると私たちの番が来て、


「ここに来た目的は?」


と門番に聞かれ、


「田舎村から出てきました。働き口が見つかればと来ました」


「そうか」


と門番は答えると何かが書かれた木切れを渡される。


「これで十日は滞在出来る。期限が切れるまでに何処かのギルドに入会してギルドカードを手に入れろ。それが身分証に

なる。そうしたらこれを、ここまで返しに来い」


と門番に告げられて街に入る事を許された。


街の中に二人して入ると特に珍しくもない街並みが並ぶ。ふと店舗の前に掲げられている看板を見ると雑貨屋と読めた。


先ほどの門番との会話もそうだが、言葉を交わせるし文字も読める。


どういう事だろうか? 本当に違う宇宙に来たのだろうかと疑問に思う。チラリとタキノを見ると余り気にしていないようだ。これだから脳筋は……。


広場に着くとそこには色々な出店が並んでいる。殆どが食べ物に見える。


冷やかしながら情報を収集すると、この街はアリスト辺境伯領の最奥にある街、リアンテという名らしい。この辺境伯領が所属する国の名はガリストン王国。


このリアンテの街を囲むように深い森があり、奥にいくにつれて強力な魔物がいるとの事。多分だが私たちが余り魔物に出会わなかったのは、あのドラゴンの縄張りだったからだろう。


客と店主とのやりとりを見ていると流石に流通する貨幣は私達が使っている物とは違うようだ。これは金策をする必要がある。


確か収納に魔石がかなりの数があった筈だから、それを売ればなんとかなるか。色々と聞いて周り、魔石を買い取ってくれるのは冒険者ギルドか魔道具屋、雑貨屋になる。場所も聞いたので、まずは雑貨屋へと向かうと適正かは分からないが金貨十枚程になった。


これで今夜の宿に泊まれるし、食事もできる。まぁ、食事は材料も含めてかなりの数が収納にあるのだけど。


次に冒険者ギルドで登録して木切れを返しに行き、ついでに良さげな宿の場所も聞いて宿へと向かう。


一泊朝晩の食事が付いて一人一銀貨。私の感覚だと高い気もするが清掃の行き届いた宿に見えるし、この受付のある横は食堂で美味しそうな匂いが漂っている。これは期待できそうだ。


タキノは既に食堂へと気が行っている。今にも涎が垂れそうな顔をしている。


とりあえず一泊分のお金を払い、部屋へと案内される。二階の角部屋で今回は空きがなかったので二人部屋だ。


野営では隣で寝た事もあるし問題ないわね。こいつはお子ちゃまだからベットに入るとすぐ寝るしね。


もう晩の食事ができるということで食堂に向かうと既に食堂は混み合っている。席を探していると先程、部屋へと案内してくれた女の子が席へと案内してくれる。


泊まり客の食事は決まっているらしく、エールだけ二人分、別に注文して食事がくるのを待っているとジョッキに入ったエールが運ばれてくる。一口飲むがぬるい。


隠れてジョッキを魔法で冷やして、再度冷えたエールを飲む。


美味いわ。


タキノも魔法で冷やしたらしく、ごくごくと喉を鳴らして飲んでいる。すぐに2人共に飲みきり二杯めを注文する。


暫くすると食事とエールが一緒に運ばれてくる。今夜のメニューはステーキとパンとザワークラウトっぽい物だ。


香草がよく効いているのかステーキから良い匂いがする。タキノを見るとステーキをナイフで切り分けて口に運んでいる。


とても満足そうな顔をしているから不味くは無いのね。私もステーキを切り分けて一口。


うん、美味いわ。ここは当たりだ。魔法で冷やしたエールを流し込んで口の中をサッパリとさせてステーキ肉を食べる。美味い美味い。


三杯目のエール飲み切ると部屋へと戻ろうと席を立ち、満足したお腹をさすっているとタキノがニヤニヤしながらこちらを見ている。


「何よ!」


「胸より腹が出ているんじゃねえか?」


ガンッ!!


「痛え!」


本当に失礼なやつだわ。フライパンを頭にうけて蹲るタキノをほっといて部屋へと帰る。体にクリーンの魔法をかけてベッドに入るとタキノがブツブツ言いながら部屋に入ってきた。


タキノもクリーンを掛けてからベットに入るともう寝息が聞こえて来る。


そんなタキノに背を向けて目を瞑るとすぐに眠りに落ちた。

お読みいただきありがとうございます。


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