第270話 新しい宇宙 サイとヘルミナ④
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称は架空で有り、実在のものとは関係ありません。
◇新しい宇宙 サイ
前方には五百を越える魔物が土煙を上げてこちらへと迫ってくるのが見える。展開した数十の魔法陣は頭上で瞬き今か今かと魔物を喰らうために待機している。
チラリと横にいるヘルミナをみると楽しそうに魔力の矢をつがえて弦を引き絞っている。
そうだよな、コウたちと逸れてここまで苦労は無かったが精神的に鬱憤が溜まっていた。その鬱憤を晴らすには魔物に八つ当たりでもしないとな。まぁ、俺もだけども。
もうすぐ射程圏内だ。3、2、1
「いけ!」
その言葉と共に魔法陣が解放されて数十の炎の矢が飛び出していく。ヘルミナも魔力の矢を射出してすぐに次射の用意を始める。
俺も負けじと魔法陣を数十展開すると始めに放った炎の矢は確実に魔物の眉間を貫き絶命させている。ヘルミナだなの矢も途中で十に別れてそれらも正確に魔物の眉間を貫いているのが見える。
そこからは繰り返し魔法陣を展開して魔物を屠り、ヘルミナも魔力の矢を連射して魔物を殲滅していっている。
三十分は経っただろうか、殆どの魔物は俺とヘルミナで殲滅していた。横にいるヘルミナも満足そうにして弓を下ろしている。
「終わりだな」
「そうね」
とヘルミナがこちらに振り向き笑顔で答える。どうやら鬱憤は晴れたようだ。暫くすると土煙も収まり現場の全貌が見えてくるとかなりの五百を越える魔物の死骸が転がっているのが見える。
「かなり倒したな」
「ふふふ、やり過ぎたかしら」
とヘルミナは楽しそうだ。俺はふぅと息を吐き出して空を見上げて
「俺は何をやっているんだ」
と思わず呟く。
「ふふふ、相変わらずサイは真面目ねぇ」
ヘルミナはこちらを楽しそうに見ながら俺にそう言ってくる。ハァ〜、コウ以外は本当に能天気だよな………。
そういや、タキノは元気かな……。どうもアイツと絡まないと調子が崩れる。
ふとヘルミナの後ろを見るとポカ〜ンと口を開けて呆けている冒険者だか探索者が多数見える。
本当にやり過ぎたと俺は思わず頭を掻く。
暫くすると呆けている冒険者や探索者を掻き分けてガタイの良いオヤジが俺らの前に来た。
「うん?」
「お前らは見ない顔だな」
「ああ、ここいらの者では無いな」
と答えるとヘルミナも気付いてこちらを向く。流石に警戒してくれているようだ。
「俺はここの街の冒険者兼探索者ギルドのギルドマスターだ。先程までのお前らの活躍は見せて貰った。報酬の件もある、一緒に来てくれないか?」
と言って来たのでヘルミナをみると頷いている。
「分かった。付いて行こう」
と答えるとギルドマスターは背を向けてまた冒険者たちを掻き分けていく。その後ろを俺とヘルミナは付いていくと盾に剣が二本交差している看板がある大きな建物に入っていく。
建物の中に入ると正面に幾つかのの窓口がある受付。左には食堂兼酒場があり受付右側に階段がありギルドマスターはその階段を登っていく。
ギルドマスターに付いていき二階へと上がり廊下を歩いて突き当たりのドアへとギルドマスターは入っていく。
俺らも続いて部屋の中へと入ると、
「そこのソファーへ座ってくれ」
と質素だが程度の良いソファーを指差す。
それに従い俺とヘルミナがソファーへ座るとドアをノックする音が聞こえ、物腰が柔らかで綺麗な女の子が入って来た。
「メイか、申し訳ないが三人分のお茶を用意してくれ」
「はい、畏まりました」
とメイと呼ばれた女の子は一度頭を下げると部屋を出ていった。暫くするとギルドマスターも対面のソファーへと腰を下ろし、
「それでお前らは何処の所属の冒険者だ?」
俺とヘルミナは一度顔を見合わせてから俺が答える。
「いや、俺らは冒険者では無いな」
「うん? どういうことだ」
とギルドマスターは眉を顰める。
「ああ、なんというか転移魔法中にトラブルが起きて俺らだけここに飛ばされて仲間と逸れた状態にある。なのでここが何処かも分からない」
「て、転移魔法だと! それは既に失われている魔法だぞ!」
「と言われても俺らは普通に使っているが、トラブルは今回が初めてだ。多分だが外部からの干渉があったと思っている」
「そ、そうか。この大陸の者ではないと?」
「う〜ん、信じて貰えるか分からないが、この星の者ではない」
「星? 星とはなんだ!」
とギルドマスターが立ち上がると同時にドアがノックされてメイがお茶を運んで来た。
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