第26話 属性魔法講義
8の月の半ば、狩りと採取を終えるとギルドへと向かう。精算を済ませて帰ろうとすると他の冒険者の声が聞こえて来た。
「おい、聞いたかCランクパーティーの銀狼の咆哮がBランクに上がったってよ」
「本当かよ。すげえな」
「すげえよな。なんでもパーティー単独でオーガの巣を殲滅したそうだ」
「本当かよ、すげえなんてもんじゃないな」とか話していた銀狼の咆哮は頑張っているようだ。
宿に着くとウリルから伝言があった。何やら祝勝会を開くそうだ。お呼ばれした。
「おう、来たな」とはウリル。指定された場所に着いた早々奥の個室に連れ込まれる。若い女の子なら良いのだがムサイ男だからな。
個室に入ると大きなテーブルには所せましと料理が並んでいる。適当な席に座らされて宴会が始まる。
説明を聞くとオーガの巣に行ったのはたまたまだったらしい。そこで死闘を演じたとか。そこで役に立ったのが結界と身体強化だった。
多数に囲まれたが結界で防いで1体1体倒したとか。普通ならオーガの皮膚は硬くて剣が通らないが身体強化された力で強引に叩き切り倒したそうだ。あっ、この炒め物美味しいな。
倒したオーガも残らず収納で持ち帰りホクホクだとか、それで俺もお呼ばれしたという訳だ。役に立って良かった良かった。おい、それは俺のだ返せ。ビッグバードの炒め物を引ったくる。
次の講義は来週らしい。マリオさんの商売も絶好調でウハウハだとか。
翌日はお休みにして久しぶりに雑貨屋に行くと例の本が入荷している。勿論、購入。何かこの雑貨屋は俺の懐具合を知っているのだとしか思えないな。またお金が無い。
明日からまた地道に狩りと採取をしなければ。
今回の古代書は3冊、1冊が魔道関係で後の2冊は冒険の物語と文芸作品。魔道関係はとても面白い。紋様の成り立ちとか新しい紋様の可能性とかが書かれていた。紋様は新たに生み出せるのだとか、ふむ興味深い。
紋様集は着々と書き溜めている。最近やっと纏まって本として魔法で印刷して状態保存の魔法陣を書き込んだ所だ。
最近、コンロの魔導具を試作した。2重魔法陣で1つは火の魔法陣でもう1つが制御の魔法陣。制御の魔法陣で魔法陣からどれくらいの位置に火を出して幾つの火を出すかを制御。勿論、現代のコンロのように円形の物からガスがいくつもの穴から出て火が付く様に小さな火を20個出して火加減はその数を増減させることにした。ツマミを作り1〜20まで火を調節できる。
四角い魔法陣の素材で箱を作り中に魔法陣を収納した。魔石を交換するときは蓋を開けて魔法陣を引き出して交換する様にした。五徳は鉄で作成。これを3つ作成した。1つは自分で使い。1つはマリオさんにサンプルとして、もう1つは銀狼の咆哮にテストで使ってもらうために渡した。
テストの結果は上々。いくつかの改善点を指摘されて改造。改善点は火の調整の仕方。1〜20では無く。4、8、16、20とした。1とかだと偏りが出来て4、8、16、20なら平均して熱せられるのではないかと改造した。他は少し五徳を低くして携帯性を上げた。これくらいだ。特に売り出すつもりは無いが、売るとしたらマリオさんに任せるつもりだ。
講義の日になった。久しぶりのマリオさんの拠点だ。中に入ろうとしたら荷馬車が変わっている。小さい馬車が1台で馬も減っているようだ。
なかに入ると銀狼の咆哮の3人は既に来ている。マリオさんも元気そうだ。
近況を聞いてみるとマリオさんは順調で収納のお陰で荷馬車を減らして小さな馬車にして馬の負担を減らせて馬も減ったので維持費も減ったのだとか。それは何よりだ。
少しコンロの話をして銀狼の3人も売るべきだと主張。作り方をマリオさんに教えてマリオさんに売ってもらうことにする。それで俺も商業ギルドに登録することになった。どうやら魔法陣が画期的で登録しないと誰かに真似される可能性があるのだとか、まぁ真似されても良いのだけどね。みんなが言うことに従おう。今日、講義が終わり次第にマリオさんの紹介で商業ギルドへと登録しにいく事となった。
まずは講義だ。
今日はそれぞれの属性を調べる事にした。その結果はマリオさんが水と光、ウリルが火と風、ダリスが水と風、ランガが土と風となった。
銀狼の3人は全員風属性が使える。何か面白いね。
マリオさんに馬車を用意して貰って都市の外に出て訓練することになった。危ないからね。
都市の外に出てしばらく馬車を走らせて人がいない場所で停止する。
魔法の訓練だ。
まずは属性魔法単体で発動してもらう。水なら綺麗な水が流れ落ちるイメージで風なら強い風が前に吹くイメージで土なら大きな落とし穴が出来るイメージで火なら大きな炎が立ち上るイメージでそれぞれ離れて練習してもらう。
初めの内は苦労していた様だが30分も練習するとそれぞれの属性をコントロールできる様になる。
次は無魔法を使ってみる。
水なら水の球を生成して飛ばすイメージ。風も土も火も同じだ。
それぞれがウンウン唸りながら練習。2時間もすればそれぞれの属性球を飛ばせるようになった。まだ速度は遅いし距離も30m程度だが練習すればよくなるだろう。
終わった時には全員満足そうだ。これも練習してもらい1ヶ月後を目処に講義を行うこととした。帰りはこのまま商業ギルドへと直接向かう。銀狼の3人も一緒だ。
商業ギルドに入るとそこは役所のような雰囲気だ。
マリオさんは知っている職員を見つけて個室へと入っていく。当然、俺らもついていく。
「さて今日はどうしましたマリオさん」と軽薄そうな職員だ。
「ええ、実はこのかたの登録と新たな商品の登録に来まして」
「ほうほう、新たな商品ですか」とあまり興味がなさそう。
「まずは彼の登録をお願いします」とマリオさん。
「ではこの紙に必要事項を書いてください」と紙を渡されたので書き込んでいく。書きおわり書類を渡すと、
「では登録に銀貨5枚が掛かります」というとマリオさんが銀貨5枚出す。
「少しお待ちください」と男は出ていく。
「あの人、大丈夫ですか?」と不安になったので聞いてみると、
「大丈夫ですよ、軽薄ですけどね」と不安になる様なこと言うマリオさん。
暫くすると男は持ってきてカードを渡される。
「それはFランクのギルドカードです。そのカードですと行商か屋台しか出来ません。実績を重ねるとランクアップしますが、その分年会費も多く掛かります。Fランクですと年に銀貨2枚ですね。先ほどの5銀貨の内、3銀貨は登録料で2銀貨は年会費となります。来年の今頃にお支払い下さい。忘れますと失効になります。では新商品の登録に移りましょうか」
お読みいただきありがとうございます。
明日からは1日1話に戻ります。
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