第243話 見えた先
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称は架空で有り、実在のものとは関係ありません。
◇演習宙域 母船内コントロールルーム
「練度は上がっているようね」
とヘルミナがモニターを見ながら呟くと、
「そうなのよね」
とアーマー隊が二手に分かれて模擬戦を行っている様子をルカはモニターを見ながらヘルミナへと返す。
「剣聖さんのおかげかしら?」
とヘルミナがおかしそうに言うと、
「そうなのよ。剣術訓練だけではなくて射撃訓練も積極的にこなす様になって、しかも剣聖さんの模擬戦を見てからは魔法訓練も積極的になったわ」
とルカは肩を竦める。
「ふふふ、タキノとサイもかなりのレベルアップしたしね」
とヘルミナはルカをチラリと見ながら微笑む。
◇母船内拡張空間 タキノ
タキノは全速に近い速度でランニングロードを走っている。
「はっはっはっ」
と息を弾ませながら疾走する。
“まだだ、まだ届かねえ!“
タキノは心の中で吠える。タキノが漠然と見ているのは今ここにはいない剣聖の姿。頭の中では幻覚のように剣聖が縦横無尽に駆け、宙を舞い剣を走らせる姿が思い浮かぶ。
フルフル
とタキノは頭を横に振ると走ることに集中していく。
“足らねえ所は他で補うしか今はねえ“
と自身の最近の動きをイメージしていく。
ふと、何かが頭によぎる。何かとにかく大切なことのように感じるがハッキリとしない。
それでも思考を途切らせずに身体強化を重ねがけして走る。
ふと空を見ると擬似的な空を風魔が気持ち良さそうに飛んでいる。
「うん?」
とタキノは何かに思い届き足を止める。
“そうか“
と心の中でタキノは一つ得心がいくと嬉しそうに笑い、停めていた足を動かして走り出す。
◇母船内コントロールルーム
「今日で10日目だ。タキノ、サイ。もう良いか?」
とコウはタキノとサイを見る。
「もう十分だ」
とサイが言えばタキノも満足そうに頷く。
「そうか。明日朝にはここを出発する。今日はゆっくり休んでくれ」
とコウが言うとその横にいるルカが、
「何あんた? 何か嬉しそうね。剣聖さんにやられ過ぎておかしくなった?」
とタキノを見て言うと、フッとタキノは微笑みバカにした様に、
「まっ、チビには分からんだろうな」
とルカを見る。
「な、何よ」
とルカもタキノを睨むが。そのスッキリとした顔をしているタキノを見ると何も言えなくなる。
「ふふふ、タキノは何かを掴んだようね」
とヘルミナはルカを肘で小突きながら言う。更に、
「でもサイはどうかしら?」
とヘルミナは挙動不審なサイを見ると、
「お、俺は俺で大丈夫だ」
とサイはプイッと横を向く。
「期待しているわ」
とヘルミナはそんなサイを横めで見ながら言う。
コウは拡張空間にいくと山の山頂にある展望台へと向かう。身体強化を使ったコウの足では数分とかからずに山頂へと辿り着く。
そこには展望台のベンチに胡座をかいて座るタキノの姿があった。
コウは何も言わずに横に座り収納から缶ビールを出すとタキノに渡す。タキノも何も言わずに受け取るとプルタブを開けてゴクゴクと飲む。
コウも自分の分を収納から出してビールを飲む。
拡張空間とはいえかなりの広さまで拡張された空間は他の惑星で見る景色と変わらない。そこに、
「ここにいたか」
とサイも現れて空いているコウの横に座る。コウはサイにもビールを渡すと三人で軽く乾杯をして飲む。
「良い感じか?」
とコウがタキノに問えば、
「ああ」
とタキノは短く答えてビールを飲み干す。
サイは後ろで手をついて目を瞑り風を感じ、コウは飲み干した缶ビールの缶を収納すると新たに冷えたビールをタキノの分も取り出して渡して二人で旨そうにゴクゴクと喉を鳴らして飲む。
そして一息吐いてふと目線を上げると風魔が三人を見守るように旋回しているのが見えた。
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次の投稿は2023年4月23日(日)になります。
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