第192話 会見
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称は架空で有り、実在のものとは関係ありません。
コウ達が地球に来てから1年半が経った時、ナブからの報告で宇宙害獣の群れが約1年の距離に来ている事が確定した。既に斥候と見られる低級害獣が先行して近づいてきており、早ければ1ケ月後に地球に到達する事が判明した。
この事実により日本政府は国民に対して宇宙害獣の接近や地球の戦力では害獣の群れを殲滅できない事、それに対応する為には他の惑星に移住をしなければいけない事、そして既に移住先の惑星を確保してあり、移住するための移動方法も獲得していることを発表する事を決定した。
◇日本政府 緊急記者会見場
総理を先頭に日本政府首脳が会見場に姿を現すと一斉にフラッシュが焚かれる。
官房長官の司会で会見が始まり総理が演壇に立つ。
「これより日本存亡に関わる重大事案を公表します」
この一言で会場はピタリと静まり返り総理の一言に集中する。
「まずは1年半前に宇宙害獣という宇宙に存在するエネルギーや資源を喰らい破壊尽くす存在が地球に向かっていると情報を得ました」
という言葉と共に会場のモニターに宇宙害獣の姿が映し出される。
「これが宇宙害獣です。これからお見せする映像はその宇宙害獣がある惑星を破壊尽くす映像です」
とモニターの画像が切り替わり数百万の害獣は次々に惑星に突っ込んで行き惑星が徐々に破壊されていき、最後には粉々になる様子が早送りで流れると会場は騒然とする。
「これらの映像はある地球外の人たちによって齎されました。その事については後ほどお伝えします」
と一旦区切り、
「この宇宙害獣ですが地球上の兵器は殆ど効きません。そして地球に向かっている害獣の数は500万を超えます。更に映像にありました害獣よりも強力な害獣も多数含まれる事も確認できました。この事により日本政府としましては地球外の人々の力を借りて他の惑星へと移住することを決定し、既に一部の人々はその惑星にて移住の準備を進めています」
と移住する惑星の位置情報がモニターに映ると会場はその距離を見て騒がしくなる。
「静粛に」
と官房長官の声がすると会場が静まる。
「勿論、移住の為の移動方法も確立され実働しています」
という言葉と共に惑星アイアの映像と拠点の整備が進む映像が流される。記者会見場に集まる人々は食い入るようにモニターを見つめる。
「そしてこの惑星は剣と魔法の世界です」
と総理が言うと一気に会場が沸き立つ。
「更にこの星に暮らす先住民の方々には空想物に出てくるような種族の方々がいます。例を挙げるならエルフ、ドワーフに各種獣人族です」
と総理が言うと各種族の映像がモニターに映し出される。ザワザワと会場が騒めき騒がしくなる。総理は騒ぎが治まるのを待つと、
「その世界では魔導工学という魔法と科学が融合したものがあり、それを今回我々に提供していただき移住が可能となりました」
とまた映像が切り替わり空を飛ぶ人型の魔導機械が映し出される。
「勿論、魔物という危険な魔力由来の生物もいますが移住先には弱い魔物しか存在しませんし討伐も自衛隊が行っており安全です。移住した際は殆ど日本と変わらない生活が送れます。仕事の方も現在の仕事に沿うようにサポートします。1週間後にはこの移住計画が推進されます」
と総理は一息ついて、
「そしてこの危機を知らせてくれた存在ですが現在日本上空に宇宙船で滞在しています。明日以降に時間を取り彼ら参加の元に会見を開きたいと思います。以上で会見を終了し質問に移りたいと思います」
と言ったところで会見場の熱は上がって行った。
◇東京 居酒屋個室
「これで一息つけるか?」
と逸見が磯山に言うと、
「逆だな。もう電話が鳴り止まないよ」
と苦い顔をする。
「逸見達も来週にはあっちに移動だろ」
「ああ、移住が始まる前に治安活動ができるように準備を始める」
「異例の抜擢らしいじゃないか」
と磯山は悪戯小僧のような顔で言うと、
「まあな、あっちの人間と顔がしれているからな」
と生ビールを飲んで肉じゃがの入った小鉢を箸でつつく。
「でも警察も思い切ったな。小型だが警察用の人型の魔導機が導入されたんだろ」
「ああ、小さいが暴動鎮圧なら過剰戦力だな。まあ、魔物に対処することを考えたら妥当だがな」
逸見は生ビールを追加注文すると枝豆を食べる。
「俺らは多分最後に移動になるな」
「そうなのか?」
「ああ、移住計画にも関わってしまったからな」
「それはご愁傷様だな」
「来週には各都道府県に資料配布が始まるよ。まずは職員の教育からだな」
「大変そうだな」
と追加された生ビールをゴクゴクと飲む。
「お前らも移住が始まれば忙しくなるぞ」
「まあ、ぼちぼちやるよ」
と夜が更けていく。
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