第182話 地球②
宇宙空間に母船から引き出された2等辺三角形の形状の物体に、サイとタキノのアーマーが近づいていく。
タキノの機体は先端部近くに収納されて、サイの機体がその後ろに収納される。上部が濃い緑で腹部が濃いグレーに塗装されている大きな機体はゆっくりと動き出す。
「こちらは問題ない」
とタキノが言うとサイも、
『こっちも準備完了した』
「では試験飛行を開始する」
とタキノが宣言するとタキノは機体を加速させる。内臓されている重力ドライブが前方に機体を引っ張り進み。後部スラスターが全力で機体を推しだす。
急激に加速された機体はデブリの中に突っ込んでいく。タキノの眼前には様々な情報が浮かんで危険なデブリにはマークがされる。
それらを避けるか全面左右の辺に格納された大型の副腕が素早く動くと大型魔導ビームサーベルがプラズマを散らかしながら伸びて邪魔なデブリを切り裂く。
細かい欠片が結界に当たり緑に光り弾ける。
『俺の方も試験を開始する』
とサイも宣言すると機体を囲むように魔法陣が展開されて、四方八方に光の矢が飛んではデブリを破壊していく。
この機体のコンセプトはタキノの機体が機体を操り、高速での近接戦闘を行い。サイの機体がこの機体に内蔵された補助AIの力を受けながら魔法攻撃をばら撒く。
そういう機体だ。
タキノとサイは満足したのか母船近くで機体を切り離して母船へと戻る。
サイとタキノは食堂に着くと興奮したようにコウ達に報告する。
「思った通りに力を発揮できて良かった」
とコウは笑顔で頷き。サイとタキノも笑顔で頷く。3人は缶ビールで乾杯をしてルカが作ったツマミを食べては「美味え、美味え」と唸り食べる。
そこに、
『マスター、例の害獣の群れが速度を上げました』
と目の前に立体ホログラフが浮かび、群れの位置と太陽系の位置との間に線が引かれて地球の位置に予想到達期間後2〜3年と表示されている。
地球の危機と言うはこれなのか?
「ナブ、もう少しモニタリングをしてくれ。もう少し様子を確認したい」
と言った後にサイ、ルカ、タキノ、ヘルミナが見ていることに気づく。
そしてコウはため息を吐くと事情を説明する。
「そんな事が」
と4人は考え込むがルカが、
「そう言う事ならコウを手伝うわ」
と言うと他の3人も頷くのだった。コウは
「ありがとう。その時は頼む」
と言ってビールを飲み干す。
1ヶ月後、1隻の原初の船を回収してAIの統合と空間拡張を追加すると、
『マスター、害獣の群れの方向は変わりません』
とコウの目の前に立体ホログラフが表示されて群れと地球の位置のマークがされると群れの位置から線が伸びる。
すると予想到着2〜3年と表示される。
「分かった。ナブ、害獣が危機の原因として対策を立案しよう」
『はい、マスター』
それから数時間の間、コウとナブは話しあいをしたが良い解決策が浮かばない。ナブの地球での探索結果から予測される、この事を開示した場合の予測行動に纏まりがなく、地球全体を纏まって救う事は困難だと結論づけて地球の日本と言う国に初めにコンタクトをとり、それから他の国に広げていくという結論に至った。
あとは救う方法だ。
これは魔力の少ない地球では拠点の惑星のように結界で覆う訳には行かない。ではどうするか?
これは一時的に拠点の惑星に移住する計画を立てる。そして原初の船を回収した惑星の中に地脈が安定していて先住民がいない惑星がある事を思い出し、最終的にはその惑星に地球人たちを移住させることにした。
移動方法はゲートを使う。
数日前に拠点の惑星との間をゲートで行き来する試験を成功したのだ。
コウ達は早速準備にかかる。
まずは整地した拠点惑星の日本と同じ大きさの島に四角の大型トラックが通れる程のゲートを設置してゲート周りに居住施設をとりあえず5000人分用意する。そして魔物がゼロではないのでゲートを中心にして直径10㎞の円状に高さ10mの外壁を設置。出入り口も四方に設置した。
そして一度ゲートで母船へと戻り地球を目指す。
数日のディープスペース航行を終えると火星付近にディープアウトする。ここからは重力ドライブ航行で進む。母船には光学迷彩と電波吸収の結界を展開して航行する。
月の横を通過すると青く輝く地球が見える。
「何か懐かしい景色だな」
とコウは地球で画像で見た地球の映像を思い出す。
「あれがコウが生まれた星なのね」
とルカが横から言うと、
「ああ、正確にはちょっと違うかもしれないがそうだ」
ともう一度地球を見る。
お読みいただきありがとうございます。
特に意味はないのですが改題しました。
『神様のミスで異世界にポイっとされました ~元サラリーマンは自由を謳歌する~』です。シンプルになったかと思います。
改題記念で17:00にもう1話投稿します。
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