第176話 対中級害獣リザルト
タキノは焦ったように機体を操作して急いで機体を後退させる。
「ルカ!専用兵装アーリーデリバリーオーダーだ!なんでも良いから急いげ!」
『何よ!アンタ落ち着きなさい。焦っても良い事ないわよ』
とルカは言うが、
「いちいち煩えんだよ!さっさと寄越しやがれ!」
『何よ!帰ったら覚えて起きなさい』
と言いながらもルカはタキノ機の座標を入力すると専用兵装コンテナを切り離してコンテナを射出する。
タキノは立体ホログラフで向かってくるコンテナを確認して一息吐くと魔導ビームサーベルを格納して受け入れ準備をする。
タキノの専用兵装コンテナは逆噴射して減速する。タキノはコンテナから専用兵装であるパイルバンカーを機体の左腕に装備すると中級害獣がいる宙域へと全力で機体を加速させる。
◇
専用兵装の引き金を引いたサイの機体は、機体エネルギーを振り絞るように専用兵装へと注ぎ込んでいく。
砲身をはみ出るように5つの魔法陣が煌き魔法で加工された砲弾が撃ち出される。
ズドン!
と言う音がするとサイの機体背部のスラスター点火して反動を抑える。
1つ2つと砲弾が魔法陣を抜ける度に加速、次にサイの組んだ魔法陣が即座に展開されて強力な爆裂衝撃魔法が激烈に砲弾を加速させ、その衝撃に耐えるために砲身内に結界が張られて膨張破裂を防ぐ。
3つ目、4つ目と砲身に刻まれた加速魔法陣を砲弾が抜けると更に加速。
その加速された砲弾をサイが追加した爆裂衝撃魔法陣が展開されて、超加速された砲弾をこれでもかと押し出す。
最後に5つ目の砲身に刻まれた加速魔法陣を抜けると、20m先に巨大な魔法陣が2つ展開される、この魔法陣はサイとナブが相談して組んだ、砲弾にエンチャントする魔法陣である。
1つは砲弾内部に強力な爆発魔法を組み込み、もう1つは砲弾先端に貫通のエンチャントをする魔法陣だ。
それが中級害獣へと唸りを上げて迫って行く。
その砲弾が害獣へと着弾。
貫通のエンチャントでやすやすと中級害獣の頑丈な体皮を破り、害獣体内中央部分で砲弾を包んでいた結界が崩壊、元々内部に圧縮されて溜められていたエネルギーが爆発拡散。
更にサイの魔法陣が砲弾内部に仕込んだ爆発魔法も炸裂。
中級害獣は跡形も無く爆散する。
サイの機体は機体前面に結界を張ると専用兵装の砲身部分の冷却ハッチが冷却の為に開く、するとその冷却ハッチ内部に魔法陣が光り冷却を促進していく。
サイは結果をモニターで確認して満足そうにニヤリとするとモニターの端に表示されている冷却完了時間を確認する。
冷却完了まで1分55秒。
サイは肩の力を抜くとゆっくりと状況データを確認する。そのサイの機体の横をタキノの機体がロールをしながら追い越していく。
「ヒャッホー!」
とタキノは謎のテンションで機体を操作して残り2体の中級害獣へと加速させる。
ヘルミナは残り2体の中級害獣を抑制するようにレールガンで射撃していく。既に数発、2体の害獣はレールガンの砲弾を食らっており、パニックに陥っていた。
元々、中級害獣ともなると低脳ながら知性がある。それも今までは何も痛みを感じること無く星を蹂躙してきた。
それが今は意味の分からない攻撃をされて3体の内の1体はその身体が爆散してしまった。
なんだこれは?
と害獣は生じっかある知性が災いしてパニックになる。そして痛い痛いと身を捩る。
そこに・・・・・、
「あばよ」
とサイの機体が中級害獣の体皮に機体左腕のパイルバンカーを叩きつけると、
「さあ、喰らえ!俺は魔法は苦手だがな加速の魔法陣1つくらいなら構築できるし単純に魔法陣に魔力を込める事もできる!単純なことしかしていないがな、これが効くんだよ!」
とパールバンカーを射出。その瞬間にパイルバンカー先端に魔法陣が輝き、機体から魔力が大量に流し込まれる。
杭は射出されて加速魔法陣で暴力的な加速を得る。その反動が起きる直前にパイルバンカー後部から後ろ斜め方向に4つのスラスターが大きく噴き出し、強力な反動を封じ込める。
杭はズブリと体表に食い込み速度を落とすことなく前進、そして奥深くめり込むと杭は爆発。
害獣は少しの間、暴れるが直ぐに動きを止めて沈黙する。
タキノの機体が2体目の中級害獣を倒したのを確認したヘルミナは自機が持つレールガンの追加機能を発動させる。
砲弾を装弾して追加機能が働き、砲身に魔法陣が複数展開されるとバチバチとプラズマが走る。
ヘルミナはデータモニターを確認してエネルギー充填率が臨界を迎えると機体を操作してレールガンの引き金を引く。
ズドン!バチバチバチ
音が鳴り砲弾が撃ち出される。その砲弾の周りにはプラズマが纏わり付きプラズマの尾を引きながら飛翔する。
最後の中級害獣にその砲弾が突き刺さる瞬間放電して害獣を感電させると、更に砲弾は体内を進みプラズマを撒き散らす。
奥深く突き刺さった砲弾は内部に蓄えられたプラズマが拡散して爆発。
害獣内部からプラズマを撒き散らしながら害獣は爆散する。
ヘルミナは状況を確認すると、どうやら低級害獣の掃討も終わったようだと機体を母船へと向けて飛行する。
その後ろを追うようにサイとタキノの機体も母船へと向かう。
遠くにスラスターの光が見える。
他のアーマーも帰途についているようだ。宙域には害獣の残骸とアーマーの光跡だけが瞬く。
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17:00にもう1話投稿。
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