第174話 群れ
拠点のある惑星から旅立ってから3ヶ月が経過した。
一応、仮称だが拠点のある惑星の名前を大地の意味がある“アイア“とした。
この3ヶ月で5隻の原初の船を回収している。拡張空間は当初の14倍、ドックにも1つ空間拡張を追加してドックも拡張し、コントロールAI3つはメインAIへと統合され、残り2つは新たに建造された小型戦闘艦“はるうみ“、“はるやま“の2隻に搭載された。
これで母船の上下左右前後に小型戦闘艦が配置可能になり、防御力を増すことになった。
「タキノ、そっちに2体行ったわ。大丈夫かしら」
とルカが観測データを見ながらタキノに通信すると、
『ああ、こちらでも確認した。問題ねえ』
とタキノが返す。
タキノは自機を操作してスラスターを噴かす。あっと言う間に敵である低級宇宙害獣2体へと迫る。
ブーン!
とタキノのアーマーが魔導ビームサーベルを振るうと害獣は真っ二つになる。もう1体の害獣はそれを見て怒ったように腹側にある折り重なった体皮をブブブブと鳴らす。
それに構わずタキノはスラスターを巧みに操作して方向転換を行うと、怒りを表す害獣へと迫っていく。
害獣は体当たりをしようとタキノの機体へと飛び込むが、寸前でタキノはスラスターを横に全力で噴射して躱すと直ぐに逆噴射して機体を静止させ、更に害獣に向かっていく。
害獣は直ぐに旋回しようとするがタキノはそれを許さずに背後から害獣を切り伏せる。
『タキノ、全ての害獣は駆除されたわ。帰還して』
とルカから素気なく通信が入り、
「ああ、分かった」
と通信を返すとタキノは機体をゆっくりとロールさせながらスラスターを最大に噴かして母船を目指す。
遠くにサイの機体が加速して同じ方向に飛行しているのがモニターに映る。それを目の端で確認するとタキノは楽しそうに機体を操作して帰還していく。
「今回の群れは低級害獣20体か?」
『はい、マスター』
「この7日間で計83体か・・少し接触頻度が上がってきたな」
『はい、探査データでもこれから先に宙域には5つの群れを確認しています』
「数の少ない群れから対応だな。データの方は集まったか?」
『はい、大体の害獣の身体の構成データは揃いました』
「中級害獣のデータが無いのが気になるが・・」
『推測になりますが低級害獣の戦力概算で100倍ほどかと』
「それだと通常兵器では効かない可能性があるか・・・ナブ、アーマードアーマーの改修は終わったか?」
『はい、マスターの希望通りに完成しています』
「これである程度の数には対応できるか・・ナブ、次の群れを選定してくれ」
『はい、マスター』
コウは母船のコントロールルームから出て食堂に向かう。すると、
「なうぅ」
と猫が擦り寄ってくる。
「ミロ」
とコウは猫の名前を呼びながら頭を撫でる。ヘルミナとルカで名前を付けたのだとか。
食堂に着くと今回出番の無かったパイロットが今回の戦闘データ表示されているモニターを見ている。
今回、出撃したのはルカ、サイ、タキノとスタンダードアーマー8機である。被害は無し。
寛いでいるヘルミナが座るテーブルの席に座りハーブティーを注文する。
「今回も問題無かったようね」
とヘルミナが声をかけてくる。
「そうだな、行動データ、生体データも揃ったからな、あの数程度では問題ないな」
と返して配膳されたハーブティーを飲む。
「確か5つの群れが見つかっているのかしら」
「ああ、5つ見つかっている。4つの群れは最大で低級が40程度で問題ないんだが5つ目がな」
「多いの?」
「まあな、多い上にまだ戦った事のない中級が3体確認されている」
「そうなのね。やらないの?」
「いや、やる予定だ」
「ふふふ、そうよね」
とヘルミナは嬉しそうに笑う。
「タキノは喜んで中級へ突っ込んでいきそうね。ふふふ」
とヘルミナは何かを思い出したかのように笑い言う。
「ハハ、確かに突っ込んでいきそうだな」
とコウも笑う。
そこにドタドタと足音が聞こえ、
「手応えが無かった」
と不満そうにするタキノが食堂に入ってくると、
コウとヘルミナは顔を見合わせて笑う。
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