第171話 巨獣討伐と専用兵装
サイとタキノの機体は巨獣に攻撃を仕掛けてはいるが、
「サイ!攻撃が効かねえ!」
『こちらの攻撃も効いている様子が無い。何らかの魔力的防御が働いているのだろう』
「どうすんべえ」
コウはそんなサイとタキノの通信を聴きながら巨獣の上空を旋回して打開策を模索していた。そこに、
ズン!
とヘルミナの機体が撃ったレールガンの砲弾が巨獣へと着弾。魔法攻撃への過剰な防御力を誇っていた身体に穴を穿つ。
巨獣は痛みに抗えず咆哮を上げる。
「ギュアアアアアアア!」
巨獣が停止したことを好機とみたタキノとサイの機体は攻撃を仕掛ける。
タキノの機体は傷口にビームサーベルを深々と差し込み、サイの機体は魔法攻撃を連射してその傷口を広げる。
ヘルミナの機体が持つレールガンは第1射目を撃ち終わると砲身が回転して新たな砲身へと切り替わる。
自動で次弾を装填してエネルギーを充填していくとブーンと音が鳴り充填率が上がるに従って音の音量が上がる。
充填が完了するとヘルミナは躊躇する事なくレールガンの引き金を引く。
ズドン!
という音と共に発射された砲弾は魔法で加工され大気摩擦にも溶解せずに巨獣へと着弾する。その着弾した傷口をさらにサイとタキノが攻撃をする。
それを嫌がったのか巨獣は後ろ足でだけで立ち、前足で鬱陶しそうにサイとタキノの機体を払う。
ヘルミナの攻撃である3射目が着弾すると巨獣は硬直する。それを見たコウは魔法の準備をしつつ巨獣へ肉薄。
用意の完了した火魔法を傷口に至近から放つと傷を抉り、傷の中で火の玉は分裂して高温になり巨獣の体内を焦がす。
巨獣は苦しみもがき口を空に向けるとブレスを吐く。そのブレスが徐々に収まると巨獣の目は光を失い体のバランスを崩して倒れる。
ズズン!
と言う巨獣が倒れる音が鳴り響き巨獣の討伐が確認されると街の外壁上にいる騎士や兵士、冒険者は歓声を上げる。
コウ、サイ、タキノ、ヘルミナの機体は母船に帰還し、他のアーマーはナブの希望に従い巨獣の亡骸を回収する。
機体を降りたサイとタキノは不完全燃焼というような顔をして食堂に着くと冷たい水をゴクゴクと飲む。
「ああ、完敗だった」
とタキノが言うとサイも
「そうだな歯が立たなかったな」
と2人は席に座る。そこにコウとヘルミナが食堂に入ってくる。
「お疲れ〜」
ヘルミナがお気軽に言うとコウも
「お疲れ様」
とサイとタキノに声をかける。憮然とした表情のタキノはコウに
「コウ!俺の機体も何かドカンと行ける装備が欲しいな」
とリクエストをするとサイも
「そうだな俺の機体も何か欲しい」
とリクエストをする。
「う〜ん、わかったよ。ナブと相談して何か用意する。完成したら試験は頼むよ」
「それぐらいは任せろ」
とタキノは胸を叩く。
数日は惑星の周回軌道で旅の準備をして次の目標へと旅立つ。
ディープスペースに入るとコウはナブと巨獣の亡骸を解剖する。取り出した魔石は大きく直径が3mにもなるものだった。
他の体内に関しては特筆するところもなく、この魔石による身体強化が問題だったと推察するに至った。
試しにコウのアーマードアーマー内部にこの巨獣の魔石を取り付けて魔力を流すと機体構造が強化されて機体表面に魔法攻撃耐性膜が展開される事を確認できた。
次のディープアウト時にはどの程度の魔法に耐えられるかをテストする予定だ。
航行は順調に進み数日で次の目標である惑星の星域へと到着する。
他の宇宙船の気配が無いことからこの宙域で試作の兵装の試験や例の巨獣の対魔法性能のテストをする。
まずは無線誘導でアーマードアーマーを宇宙に浮かべると魔法攻撃をする。徐々に威力を上げながら母船から攻撃をしてアーマードアーマーにダメージが入ったところで実験を止める。
かなりの威力の魔法攻撃に耐えられる事が確認されてアーマードアーマーは格納庫に戻される。巨獣の魔石は特に使う予定の無いことから、そのままアーマードアーマーへと搭載される。
次の試験はタキノ用の専用兵装の試験だ。
タキノの機体の左腕に取り付けられた機体の全長と同じ大きさの兵装は魔導パイルバンカーだ。今回の魔法耐性の高い敵に対する超近接装備となる。
目標となる隕石へとタキノは機体を操作して肉薄すると左腕を隕石へと叩きつけるとパイルバンカーの杭の先が隕石に食い込む。その瞬間に杭が魔法により射出されるとパイルバンカー後部から反動を抑えるためにスラスターが大きく噴き上がる。
杭は隕石奥深くまで食い行こんで内部で爆発を起こして隕石は爆散する。爆発を感知したパイルバンカーの先端部分から物理防御結界が展開されて機体を守る。
成功だ。
タキノは結果に満足して機体を操作して帰還する。
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明日からは水曜日、日曜日に1話投稿に戻ります。
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