第170話 変異体とスタンピード
島に残る村人達に見送られながら母船は飛び立つ。あまり日を置かずにまた来る予定だが何だか寂しい。
ディープスペースに入ると何かルカに食堂に来いと呼ばれた。
ルカがニヤニヤしながら待ち構えている。手渡された物は缶詰。
カジキマグロもどきのツナ缶と同じく味付けフレークだ。いつの間にか船内に缶詰を作る工程があるようだ。
ルカの監修のもと各種味付きの魚の缶詰が村にも配られて奥様方には好評なのだとか。いつの間に・・・。
缶詰を収納にしまうと手招きされて座れと言われる。少し待っていると目の前には大きめのチーズバーガーと一緒の皿に盛られた細めのフライドポテト。
まずは大きめのチーズバーガーを食べると美味しい。なんというかキングでグリルなチーズバーガーだ。美味い。
ポテトも食べるとピエロな定番のポテトだ。美味しいよ。好みだ。熱々だしね。
次に喉が乾いたかなと思っていたら謎の透明なペットボトルもどきに入った黒いドリンクを渡される。よく冷えているようだ。
赤いスクリューキャップを開けるとシュワっと炭酸が弾ける音がする。一口飲む。
ああ、あれだ。コーラだ。Cと言うよりはPに近い味のコーラだ。好みはCだがこれも悪くない。ゴクゴク飲む。
「プハァー」
と息を吐くと目の前にはサムアップしてドヤ顔のルカがいる。少しイラッときたが美味いので許す。
相変わらず謎の再現度だ。ナブが絡んでいることは間違いない。
数日が経った頃には目的である惑星の軌道上へと到着。問題無く原初の船を回収すると、そのコントロールAIはメインAIと統合されて空間拡張機能を移設されて船内空間は当初の9倍となった。
ふとナブにこの惑星の文明度が低い事を質問すると、どうやら原初の船でこの惑星へと到着する前から船内で争い事が起きて小さなグループに分裂。地表に降りた後も協力することなく各地に分散。文明を築くも、ことある毎に争い、文明が育たない状況だと言う。
そんな話を聞いているとナブから緊急報告がなされる。
『マスター、すぐ真下の大陸にて魔獣のスタンピードが発生しました』
との報告の後にモニターが表示されて魔力の濃い森から魔獣が1000以上溢れる光景が映し出される。
「原因はあるのか」
との問いにナブは、
『これが原因だと思われますと』
溢れる魔獣の後方に見える体長が100mを超える魔獣が魔物達を追い立てるように歩いているのがモニターに表示される。
「これは何だ?」
『ベヒモスの変異体だと思われます。対応しますか?』
モニターをみると魔物達が進んでいく先に大きな壁で囲まれている街が確認出来る。
「そうだな対応しよう」
コウが答えると緊急警報が船内に鳴り響きナブは各所に連絡をとり準備を始める。
ナブから説明を聞いたルカはパイロット達に説明を始める。今回の作戦ではルカはナブと共にコントロールルームにて監視と補助作業を行う。
コウ、サイ、タキノ、ヘルミナと全パイロットは出撃となる。説明を聞いた各パイロットは格納庫へと駆け込んで自機へと乗り込んでいく。
準備が出来た機体は次々に射出されて発進していく。
各パイロットは作戦通りに配置につくとアーマー魔法機部隊は街の壁の前に着陸して結界を広域発動して防御を固め。他のスタンダード機はその前で迎撃に当たる。ヘルミナの機体もその壁前で迎撃に当たる予定だ。
出撃したコウ、サイ、タキノの機体は溢れかえる魔物の上飛んでいく。状況を確認したコウは、
「サイ、タキノ。巨獣の足止めをお願いします。私は一度戻り兵装を交換してきます」
「おう!了解だ。巨獣は倒しちまっても良いんだろう」
とタキノはニヤリと笑い、サイと共に巨獣へと飛翔する。
ヘルミナの機体は街の外壁前に到着すると迎撃を開始する。魔導ビームライフルから光線が伸びて魔物を倒す。若干の大気の干渉を受けたビームは多少ズレを生じるがヘルミナは即座に修正して射撃を続ける。
結界を張る魔法機の前に陣取るアーマー達は片膝をついた姿勢で魔導ライフルを連射。湿度の高い大気に触れてプラズマが発生して飛び散る。装甲を焦がしながらライフルを撃ち続けて魔物を狩って行く。
一度、母船に戻ったコウは機体の副腕に取り付けられてある魔法触媒を交換。大きなルビーの魔法触媒に交換する。
交換が終わると直ぐにコウの機体は飛び出して魔物が溢れる現場へと急ぐ。
外壁の上に陣取る騎士、兵士、冒険者達は現状に理解が追いつかない。魔物のスタンピードが起きたと緊急の鐘が鳴らされて集まってみれば外壁の外には見たことも無い金属の巨人が魔物を食い止めている。
何が起きているのだ?。それは誰にもわかる事なく状況だけが変移していく。
コウの機体はヘルミナの横に静止すると副腕を展開。赤く光るルビーの魔法触媒はコウの魔法行使に反応して魔法陣を生成。
一瞬、光ると大きな火の玉が飛んでいき、途中で数百の小型の火の玉に分裂するとそれが地表に着弾。その高熱で地表を溶解して魔物を飲み込んでいく。
それを左右に4発撃つとあらかたの魔物は飲み込まれて残りの魔物はスタンダード機部隊が殲滅するために飛翔する。
その状況を確認して離れても問題がないと判断したコウはサイとタキノが足止めをしている巨獣の元へと機体を操作して飛翔する。
ヘルミナはルカと通信して自機の装備を変更する事を申請、受理される。
ルカはヘルミナの要望によりコンテナを投下。無事コンテナはスラスターを噴射してヘルミナの近くに着陸すると同時にコンテナを展開する。
ヘルミナは自機のライフルをコンテナに収納するとコンテナの中から大きなレールガンを取り出す。
レールガンを装備してレールガンから伸びるエネルギー供給ケーブルを自機に繋げる。
『ヘルミナ、データは送ったわ』
「ありがとう、ルカ」
とヘルミナは軽く答えてレールガンを構えてルカから送られて来たデータを入力していく。ふぅ〜と一息吐くと
「行くわよ」
と巨獣を狙う。
お読みいただきありがとうございます。
いつも誤字報告ありがとうございます。お詫びと感謝でもう1話17:00に投稿します。
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