第17話 醤油
この日はお金に少し余裕が出来たのでパンを作りたいし聖域にも行きたい。
まずはマッドボアの魔石を収納からだして自分の魔力に変えて宿の部屋に置いておく。
そして転移しよう。ああ、聖域にある魔石を感じられるよ。転移。
一瞬で視界が切り替わり懐かしい我が家。まぁそれほど日は経っていないけれどもね。
まずはパン作り。これもサクッと作成。久しぶりに野菜類と果物を採取。勿論、生命の実も1つ齧りながら全て採取する。
そうだそうだと昨日採取した麹カビをクリーンを掛けた器をだして、その中に入れる。軽く炒った小麦を入れて塩水を撒く。これで準備OK。
さて実験だ。器を結界で覆う。
時空間魔法を意識して発酵促進を念じる。ああ、なんてことでしょう。みるみると炒った小麦が白い菌に覆われていく。出来た。麦麹の完成だ。ぐふふ。
よしよし、次だ次。大豆を水で洗い水につける。これも時空間魔法で浸漬を進める。ある程度の所で柔らかく煮る。小麦を炒ってから細かく砕く。
それらと麦麹と混ぜ合わせて塩水を入れる。もろみの完成。そして結界で包み込んで発酵促進!ハハハハ!ポコポコとなって来た。少しずつ量が減って来た。
量が大分減った所で完成だ。
結界で覆ったまま、その下に容器を置く。そして結界内を上から圧縮。結界下部に極小の穴をいくつも開けるともろみが絞られて醤油が滴り落ちてくる。少し濁ってしまったが許容範囲だ。
少し醤油を舐めると、
「美味い!」
絞った醤油を80度位の温度で20分程度火を入れる。はい、完成だ。これで発酵は止まるし長持ちする。何故か風味も良くなる。
これでカツル!
もろみはとっておく。これも酒のツマとしても良いし米が見つかれば炊いたご飯に乗せて食べるもよし。楽しみだ。米はどこだ?
もう昼過ぎだ。昼食を食べたら宿の部屋へと戻る。視界が変わり宿を出る。
食料品を売っている店に行くとそら豆っぽいのが売っていたので購入。鑑定結果はこちら、
《ソリラ豆(そら豆)・・・・食べられる》
いつの間にか異世界の名前が前に来ている。まぁ良いか。
食料品店の親父から毎日早朝に東門の広場で市がたっていると聞く。これは行かねば。
さてと暇なので冒険者ギルドに行くと何やら騒がしい。誰ぞが何か喚いている。
立て込んでいるようなので帰るかと思えば、
「商会長あいつです!」と知らない奴に指を差される。
「何!お前かクレアに失礼な事をしたのは!」
「そうですこいつです」と別の奴だ。こいつは見たことあるぞ。初日に絡んで来た3人の内の1人だ。
「おい、ギルドマスター!こいつの冒険者の資格を剥奪しろ!」
「なんでそんな事をしなければならない?」とギルドマスターは呆れたように言う。
「何!ギルドは我が商会に逆らうのか!」
「あ゛あ゛、おい!たかが辺境の商会ごときがギルドに楯突くのか?」
「ふん!ギルドごとき造作もないわ」
「そうかそうか、よかろう。我がギルドはトルド商会と言ったか?そのトルド商会からの一切の依頼は受けない。これは全ギルドへと通達する」
「ふん、後で吠え面掻くなよ」と出て行こうとするとそこに、
「商会長!大変です」と男が駆け込んで来る。
「何だ!どうした」
「こ、これを」と男は紙を取り出して渡す。それを見たトルド商会長は、
「な。何だと!バカな!」と急いで出ていく。
とりあえず訳も分からず買取カウンターへ行って見るとおっちゃんに肩を叩かれる。
うん、分からん。
翌日、耳にした事はトルド商会は横暴な振る舞いを各所でしてギルドからは依頼拒否、領主様からは領内での商いの禁止。追放を命じられたとの事。
聞いた話では自業自得だな。何か勘違いしたみたい。
その話も実は朝の市で聞いた。市は盛況で色々な食材や物が所狭しと売られていた。
チーズとか牛乳?とか蜂蜜もあったので購入。砂糖は高過ぎて見送り。あまりお金が無くて買えなかったがお金を貯めてまた行こうと思う。
この日も採取と狩りをして過ごす。幾日かして採取と狩りを終えて冒険者ギルドにいくと、
「おい、聞いたか。この都市から出た王都方面への街道でゴブリンの群れが出たってよ」
「ゴブリン如き大丈夫だろ」
「それがなかなりの群れだったらしくてな、移動中の商会の集団を襲ってな商会の奴らは全滅だとさ」
「?、どうやったら商会の集団が全滅するんだ?それほどのゴブリンの群れだったのか?あっ!もしかしてキングがいたのか!」
「落ち着け。そうじゃねぇ。ほらアレだ例の商会だ。はぐれの冒険者崩れを護衛にしてたらしいが、ゴブリンの集団にあった途端に商会を見捨てて逃亡したらしい」
「ああ、トルド商会か」
「おい声がでけえよ」
なんて話を耳にした。何か御愁傷様です。
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誤字報告ありがとうございます。お詫びと感謝で17:00にもう1話投稿します。
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