第169話 猫とカジキマグロもどき
コウは早朝の白浜を歩く、静かに打ち寄せる波を避けながら沖に目を移すと海面が朝日を反射してキラキラと光る。
コウは空を見上げて雲がない事を確認すると、
「今日も良い天気だ」
とご機嫌に呟いて散歩を再開する。
暫く歩いているとガサガサと茂みが揺れてひょっこりと普通の猫からすれば2回りは大きい猫が顔を出す。
何か警戒しているようで体全身は出さずに顔だけ出してこちらを見ている。そんな猫をコウは見て昨日釣り上げた魚を収納から出して、猫の前にポイっと投げると恐る恐る魚に近づいて匂いを確認すると、ムシャムシャと食べ終わる。
魚を食べ終わった猫は物足りない顔をしてこちらを見てくる。コウはもう1尾魚を出すと目の前におく。すると警戒心が薄れたのか猫は寄って来て魚を食べる。
魚を食べ終わった猫は満足したのか、その場で毛繕いを始める。それを確認したコウは笑顔になりその場を後にする。
暫く歩いて振り返り帰ろうとすると、猫と目があった。すると
「なぁ〜」
と猫が鳴いてコウの脚に身体を擦り付けて甘えてくる。コウは気にせずに歩いて戻り、その後を猫が追いかけてくる。
コウはふむと猫を確認すると抱き上げて母船に入っていく、寮の近くで地面に下ろすと興味津々で周りを見ながら着いてくる。寮の入り口でバッタリヘルミナに出会うと、猫を見つけたヘルミナは猫を撫で回す。猫も満更では無いようで喉をゴロゴロと鳴らす。
コウは問題ないだろうと寮の中に入っていき食堂に入ると何やら人だかりが出来ている。
近づくとどうやらルカが何かやっているようだ。
それを確認するとテーブルの上には何やら見た事があるような無いような物が複数置いてある。
ああ、あれだいつだかナブに話をしたカップ麺だ。どうやらルカの監修で作成したものを試食をしているようだ。
それを見ているとパイロット達は魔法でお湯を作りカップに注いでいく。収納から箸を取り出して器用に麺を啜る。
ほほう、訓練で複合魔法でお湯も出せるし収納も使えるのか。
使っているカトラリー類はナブがコウが使っている物を参考にして規格化して配布した物だな。
コウもいくつかのカップ麺を試しに食べてみることにする。テーブルの上にあるカップ麺は緑の蕎麦と赤いうどん、ヌードル各種だ。ヌードルは醤油、シーフード、カレーだ。
ラインナップを見るとナブに話したまんま作成したようだ。
まずは赤いうどんを食べる。うん中々だ。お揚げも美味しい。
次は緑の蕎麦。これも美味しいね。うんうん。
お腹は一杯だがヌードルの醤油も食べてみる・・・美味しい。かなりの再現度だ。俺の感想からよくもまあ再現したものだ。
何かルカを見るとドヤ顔している。まあ美味しいから許すよ。
いくつか貰って自室に行くとシャワーを浴びる。さっぱりしたら冷たいスポーツドリンクを飲んで落ち着く。
ナブと会話をすると今はルカとカロリーな非常食バーを試作しているのだとか・・・。頑張って。
ふと思い立って新設された売店に来てみると色々と追加されていた。お菓子類が多い。
ついつい包装された各種ポテトチップ、コンソメ、海苔塩などを貰い受けてドリンクも謎素材の透明な容器に入ったジンジャエールを2本貰って自室に戻る。
コンソメ味のポテトチップを開けて食べる。普通に美味い。乾いた喉にジンジャーエールを流し込むと口の中が弾けてさっぱりとする。
良いね。
何か最近謎に充実して来ているね。誰のせいだろうか?
ナブか・・・・と言うことは俺の影響?考えないことにしよう・・。
ふとモニターを見ると港が映されている。何やら人が集まっているようだ。
興味が湧いたので港に行ってみる。
港に着くとどうやら造船所で新しくできた中型の魔導漁船で漁に出ていたらしい。それが帰ってきた。
人だかりの中心にはタキノがいた。どうやら漁に同行したようだ。
タキノの横に吊り下げられた4mを超えるカジキマグロのような大きな魚が見える。話を聞くとタキノが死闘の末に釣り上げたのだとか・・・。
何か今日は情報量が多い・・。
そこにルカが現れてみんなに昼
、カジキマグロもどきを振る舞うと言うと歓声が上がる。タキノも嬉しそうだ。なんだかんだ言ってルカとタキノは仲が良い。
自室に戻ってナブから報告を聞く。
もう既に計画していた事項は全て消化しており、この惑星を旅立てると言う報告を受けた。
少し寂しい気もするが予定がある。旅立たなければならない。
統合されたメインAIは各コントロールAIの情報の差異を精査。その地域の差からナブが知らない原初の船の位置を数少ないながら探りあてた。
それらの船の数は多い。まだ増える可能性がある。全ての船を回収できるか分からないが出来るだけ回収したい。
明日にはみんなに伝えて旅たつ準備を始める。
さて昼時だ。
カジキマグロもどきは美味しいのだろうか?
ルカのことだ。上手く料理しているのだろう。
楽しみだ。
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