第164話 宙賊
『ディープスペースアウト、ディープスペースから浮上します。浮上後周辺探査実施します・・・・・実施しました。多数の宇宙艦を確認しました』
とナブの声がするとコウの前には100を超える宇宙艦が母船がいる宙域に屯っている様子が立体ホログラフで表示される。
『宙域に展開する艦艇が動き出しました。その艦艇より通信です』
「つないでくれ」
『はい、マスター』
『ディープアウトした艦船に告ぐ。武装を放棄して投降せよ。我ら宙族“暁の宇宙“。繰り返す、武装を放棄して投降せよ。我ら宙族“暁の宇宙“』
「拒否する」
とコウが冷たく言い放つと、
『こちらは100を超える艦艇を擁している。無駄な抵抗はよせ。投降せよ』
「拒否する」
と再度コウが言うと、
『強制拿捕を行う。覚悟されたし』
と通信が切れた。
「ナブ、小型戦闘艦全艦発進応戦せよ!アーマー部隊万能機部隊全機出撃敵を撃破せよ。魔法機部隊は母船周囲で警戒、迎撃にあたれ」
『はい、マスター』
母船内に警報が鳴り響くと小型戦闘艦4艦が次々にドックから出ていき母船の上下左右に展開する。
スタンダードアーマー機も準備の出来た機体から次々に射出されていく。アーマー全機吐き出して各機は2機1組となり敵艦艇へと向かっていく。
敵小型艦艇からの実弾による砲撃が開始されるが全て結界に弾かれる。母船を守るように展開する小型戦闘艦4隻から魔道ビーム砲による射撃が開始されて次々に敵艦を撃破していく。
魔導リンクで情報を共有しているアーマー各機は戦術AIに誘導されれながら敵艦に近づいて魔導ビームライフルにて攻撃を開始。数発の射撃で敵艦を破壊して目標を変えながら敵艦の間をすり抜ける。
AIの誘導によりアーマー編隊2組4機が敵旗艦と思われる艦艇に肉薄して攻撃を仕掛ける。敵旗艦も激しい応戦をするがアーマーの結界を破ることは出来ずに一方的な攻撃を受けて撃沈。
それをみた敵艦隊は散り散りになりながら撤退を開始。
戦闘開始から15分も経たずに戦闘は終息する。
アーマーは帰還するが母船を守る小型戦闘艦4艦は帰還せずにそのまま周囲の監視をする。
『敵艦隊、周辺にはいません』
「了解した」
今回初陣となったアーマー部隊の戦闘記録を確認してコウは食堂へと向かう。食堂ではサイ、タキノ、ルカ、ヘルミナがモニターを見ながらアーマー部隊の戦果を確認している。
「まあまあだな」
とタキノが言えばサイが
「ああ、だが魔法機の戦闘も見たかったが次回か」
「そうね、敵の連携も酷かったし粘りもなかったからね」
とルカが言うとヘルミナが
「もう少し敵も根性を見せて欲しかったわ。敵は海で言う所の海賊なのかしら」
「統率も何もあったもんじゃねえ荒くれ者の集まりだな」
タキノが吐き捨てるように言う。
「まあ、とりあえずに被害0で戦果も稼げたし問題なしね」
とルカがまとめる。
次々に戦闘を終えたパイロットがホッとしたような表情をしながら食堂に集まってくる。そのパイロットを労うように料理ポッドが冷えたドリンクをパイロットに配っていく。
それをゴクゴクと美味しそうにパイロット達は飲み、安堵の息を吐く。
「よう、みんな頑張ったな」
とタキノが労いの言葉をかけると次々に挨拶を交わしてテーブルに座り戦闘の話題になっていく。タキノやサイ、ルカ、ヘルミナも交えて感想を言い合い。改善点を見つけて訓練にフィードバックしていく。
その光景をコウは優しげに見つめて安堵の溜め息を吐くと食堂を後にする。
コウは自室でナブに敵通信回線やデータハッキングの成果を聞き、敵の背景を知る。
敵はコロニー国家と主惑星国家に分かれて戦争をして主惑星側が勝利。負けたコロニー側が宙族となり宙域を荒らしているのだと言う。
背景は分かったが関わり合う気はないので原初の船との合流を目指す。
ナブの報告から既に原初の船との通信は確立されており、原初の船も合流を望んでおり主惑星へと向かっている。
ある程度の安全が確認されたので小型戦闘艦4艦をドックに回収して母船はステルス機能を全開にして航行する。
主惑星には見つからずに原初の船と合流することに成功。
惑星をナブが収集したデータを確認したが酷い物だった。海、大気は汚染され貧富の差が激しく低級の者達は奴隷のように扱われている。
特に戦争に負けたコロニーの民は食事も満足に与えられずに鉱山などで働かされているようだ。
どうすることも出来ないのでコウ達は惑星を後にして原初の船を取り込む。コントロールAIはメインAIと統合して空間拡張機能も移設して当初の空間の7倍となった。これにより森林地域を拡張した。
艦内では子供達を主にした読み書きや算数の授業が始まり、大人達も時間がある時は習っているようだ。
母船さくらは次の目標へと向かう。
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