第161話 村人
人類が戦争で絶滅したと思われる惑星から原初の船を回収して次の目標へと向かう。
コントロールAIは小型戦闘艦3番艦“はるなみ“と名付けられた船に移設されて空間拡張機能は主にドック拡張に使われて4番艦まで収納可能となった。当初の空間よりも5倍となった。
船内に増やされた空間はドックだけでは無く、一部コントロールルーム周辺にも追加された。
これは無重力訓練ルームと展望フロアで無重力訓練ルーム、その名の通り無重力空間での行動を訓練する部屋である。展望フロアは全面モニターとなっていて宇宙空間の景色を堪能できる。寝転べる座席が用意されておりリアルタイムの宇宙空間やプラネタリウムが楽しめる。
コウは自室のベッドに寝転んでジャンクなバーガーセットの袋に入っていた紙片を改めて眺める。
これはどんな確率だろう?
紙片に書いてあるのは“これを召喚した異世界人へ、お前は元地球人か?地球から転移または転生したのか?連絡を乞う“と書かれていて最後に警察官である刑事の名前と電話番号が書いてある。
ここで悪戯心が芽生えたコウはもう一度魔法陣を取り出して真ん中に金貨と手紙を載せて発動すると目の前にはジャンクフードの袋が目の前に現れて金貨と手紙は消える。
ジャンクフード中身には余計な紙片は入っていなくいつものジャンクなバーガーセットだ。
手紙は刑事に届くだろうか?届いたら面白いな。
◇地球 日本 東京某所
「毎日俺は何をしているのだろうな」
と呟きながらいつもルーティーンでジャンクフードのいつものセットを頼んで受け取ると袋を開けて懐から紙片を入れる。
ジャンクフードのセットが消えてなくなり代わりに金貨が残されるという現象が、特にここ東京で起きてから毎日ジャンクなバーガーセットを買っている。
若干、飽きてきており今日も食べるのかとゲンナリする。
すると持っていた紙袋が輝くと消えて無くなった。それを男は呆けて見て手のひらに金貨があるのを確認する。
「おお!成功だ」
と男は喜び、自身が配属されている警察署に急いで戻ると鑑識に金貨を渡し検査を依頼する。
翌日、刑事であるこの男、逸見道成は驚くこととなる。その手元にコウの手紙が届く。
母船さくらはディープドライブを抜けると通常空間に出る。次の惑星がある星域に到着した。
数日で目標の惑星に到着すると周回軌道を回りながら探査を開始する。この惑星の大きさは地球の2倍あり、あまり目立つ程大きな大陸は存在していなく、中規模の大陸が数多く点在していて海洋国家が多いようだ。ナブの探査結果においても魔法も進んでいるが造船技術も進んでいると探査結果が出ている。
あまり関わり合いはしないが、今回は中規模大陸の一つの農村部に原初の船があるということで降りることになった。
今回もフルメンバーだ。
一行は原初の船がある場所を目指して歩いていく。この辺には村がいくつか存在するが何処にもよる予定はない。
今回降りたのは気晴らしがメインだ。森に分入りルカが先頭で一列で進む。
もう少しで原初の船がある場所だという所でナブから連絡が入る。
『マスター緊急事態です』
「何があった!」
『数百万の宇宙害獣がこの惑星に近づいています。直ぐに原初の船に接触して撤収してください』
「分かった」
とコウは言うと他の4人も会話を聞いていたので原初の船へと急ぐ。原初の船のマスター登録をコウが済ますと直ぐに船の発進をさせる。
ナブから送られてくるデータを見るともう直ぐ先頭の宇宙害獣が惑星へと辿り着く。船を発進させるとルカが何かに気付いたのか苦虫を潰したような顔をする。
どうやら村の子供たちを見てしまったようだ。コウはそれを見て決断する。出来る限りの人を助けようと。
船を操作して近くの村に降りていくと村人達は宇宙船を見て驚き跪く。何か神様か何かと勘違いしているようだが、この際は都合が良いとして次々に村人達を船に乗せていく。村人の話を聞いて他の村へと誘導してもらい5つの村、合計620人の村人を回収することに成功するが空を飛んでいると眼下では宇宙害獣が次々に地上部分に突っ込み食い荒らす。所々で火の手が上がりパニックとなって散り散りに逃げていくのが見えるが、早く母船と合流しなければとてもではないが数百万を超える宇宙害獣を相手にすることは出来ない。
合流した2隻は魔導リンクを確立すると直ぐにディープドライブにてその場を離れる。
地上の被害状況を見た村人達は一様に安心しているようだ。
とりあえず、村を母船の中に作っていき移住させる。元の村単位で村を作り相談して畑や畜産といった作業をさせる。
今回の原初の船は母船内の空間拡張とコントロールAIはメインAIへと吸収された。母船内に新たに草原や第2の森も作られた。
5つの村ができる頃には移住者も母船内になれてきていた。というか何が違うのか分からないらしい。
監視の為に置いてきた探査ポッドから送られてくるデータを見ると1ヶ月もしないうちに惑星は宇宙害獣によって崩壊した。虫食い状態となり最後に分裂しデブリとなった。
現状の戦力では1万程度なら対処できるがそれ以上だと対処できない。今回のような数百万の害獣に対処する方法は無い。
一応の解決策は練ってはいるがそれが実現できるかは分からない。惑星1つを守る機能を作成するには大規模な工事や人々の協力が必要だ。
とりあえずは戦力を増やしつつ対処していくしか無い。
一緒に寮で暮らしていた子供たちは一番近くの村へと引っ越した。その村は子供も多いし遊び相手が増えたのは良いことだろう。今後は読み書きや簡単な算数も教えたい。
あとは各村の3男坊や家を継げない者たちが戦いを学びたいと言ってきたのでタキノとサイに任せて訓練させることとなった。一応、ルカとヘルミナもサポートに入る。
それに伴い訓練生は全員寮に住まわせて訓練施設も急ピッチで建造されている。
訓練は体力訓練から始まり、魔法訓練、アーマー操作訓練と厳しく行われている。かなり厳しい訓練だが訓練生は目を輝かせて訓練している。
魔法が使えるのが嬉しいらしい。
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