第16話 マヨネーズ
ギルドプレートを見せて門を潜ると冒険者ギルドへと向かう。冒険者ギルドの中に入ると受付に並んでいる冒険者はまだ少ない。
まずは買取カウンターへと向かう。
「おっちゃん頼む」と薬草とホーンラビットを広い机の上に出すと、
「おい、これ今日1日でか」
「そうだが何かまずいか?」
「いや、そんなことはねえ。うむ、ホーンラビットの処理も良いな。昨日と同じで良いか?」
「ああ」
「ちょっと待ってろ」とおっちゃんは薬草とホーンラビットを台車に乗せ替えて裏に運んでいく。暫くすると、
「待たせたな。ホーンラビットが魔石込みで色を付けて1匹1200リルで8400リル。薬草が全部でヒーリ草とリーラ草合わせて240本で24束、1束400リルで合計9600リルだ。状態も随分良いな。色は付けられねえが今後もこの調子で頼む。合計が18000リル、銀貨1枚と小銀貨8枚だ。後なこれは常時依頼だこの紙を受付にプレートと一緒に出せ」
紙とお金を受け取り、いつもの受付の女性の所へと行く。
「これをお願いする」とプレートと紙を渡す。
「はい。え〜とこれは今日1日でですか?」
「ああ、何か問題か?」
「いえ、問題ないです」と女性は慌てて処理をする。
「コウさん、今回の依頼達成で冒険者ランクがGからFに上がりました。おめでとうございます」とプレートを渡してくる。受け取って確認するとFと変更されている。
なんか簡単に上がったな。プレートを見つめていると、
「え〜と、GからFに上がるのに依頼達成が20件となっています」と笑顔で言ってくる。
そう言うことかと納得してギルドを後にして夕暮れ亭へと向かう。
夕暮れ亭に着き部屋をキープ。小銀貨9枚渡して3日分キープする。これで少し安心だな。女将に食料品を売っている場所を聞き行ってみる事にする。
言われた通りに進むと店仕舞いをしようとしている店につく。ここか。
もう終わりらしいので手早く店内を見ていくが目当ての物が無い。
「何かお探しかい?」と店の親父が聞いてくる。
「卵と凄く酸っぱい果物か何かが欲しいのだが」と周りを見ながら言うと、
「卵は朝に採れた物だが足が早いよ。それでも良いかい?」
「ああ、頂こう」
「酸っぱい物か・・このリモンかスウがあるが」と店の親父がレモンっぽい物と何か瓶を持ってくる。瓶の中身を確認するとどうやら酢だ。
「そのスウは酒を長期にほっとくと出来る物だよ。まぁ酒の失敗作だな。安くしとくよ」
「どちらも頂こうか。リモンは6つでスウは1瓶でいい。卵は8つもらおうか。いくらだ?」
「そうだなリモンは6つで大銅貨3枚、スウは瓶代合わせて大銅貨5枚、卵は大銅貨1枚でいいよ」
「合計で大銅貨9枚か」と小銀貨1枚渡し大銅貨1枚のお釣りを貰い宿へと戻る。
鍵を貰って部屋に入ると早速マヨネーズを作る。結界でボールを作り卵3個分の卵黄を入れる。ここで鑑定。
《卵黄・・・まだ食べられる》
と出たのでクリーンを掛けると殺菌済みと表示が追加される。その卵黄に塩、酢とリモン4分の1程入れて良くかき混ぜる。良く合わさった所で少しずつ聖域で絞った大豆油を足してかき混ぜていく。勿論、結界で泡立て器を再現して無魔法で回転させていく。分離せずに良く混ざったら完成だ。
早速、パンを収納からだしてトマト、レタスを挟んでマヨネーズも掛けて食べる。
あああ、なんと言うことでしょう!口の中がオアシスじゃああ。
久しぶりに食べたマヨネーズは美味しかった。これは常備せねば。そういえばパンも少なくなってきたな。明日か明後日あたり焼くかな。
翌日の朝はギルドに寄らずに直接採取と狩りに向かう。
昨日とは場所を変えながら採取と狩りをしていく。昼食の時間になるとまずは結界で竃を作りフライパンを熱していく。城塞都市に着く前に狩って解体した残りのホーンラビットの肉を薄切りにしたものを塩、胡椒で焼く。焼き終わったらパンにレタス、玉ねぎの薄切り、トマトにマヨネーズを掛けて焼いた肉を挟んで齧り付く。
ああ、美味いよ美味い。
こうなると他の調味料や香辛料も欲しくなる。
そういえばと地球日本での事が蘇る。あれは就職して2人目の彼女の時かな。毎日、上司や取引先の人と飲みに連れて行かれて、土日も釣り、キャンプ、バーベキュー、ハイキング、登山、サバゲーなどなど連れ回されてた時の事。その頃の俺は聞き上手だったらしい。連れ回された相手は多数いてそれぞれが色々な趣味を持っていた。その趣味のことを俺は嫌がらずに聞いていた。うんうんなるほどと、その中に酒好きが拗れて酒造りにも詳しくなり、その延長線上にある味噌や醤油作りについて聞いた事を思い出した。確か麹カビだ。
鑑定があるから探せるかももしかしたら醤油ができるかもしれん。ああ恋しいなぁ。
えっ、2人目の彼女?勿論、ほっとかれたと言われて別れたよ。グスン。
その後だな。あまり人の言う事を聞きすぎるのは良くないとか思い始めたのは・・・。まぁ、結局は聞いたのだけどね。
そんなこんなで早く切り上げてギルドで精算を終わらせれば、周囲を鑑定しまくる。夕方まで変な人を見る目で見られながら鑑定しまくり、なんとかそれらしいカビ菌を見つける。
ああ、これでできるかも。と考えながら歩いていたら、またしても4人の男に囲まれる。
「おい、お前。大人しくついて来い」
「お断りします」
「あんっ!おい、舐めてんのか!あー」
はぁ、ホントメンドクサイメンドクサイ。と無視していたら、
「舐めんじゃねぇ」と殴りかかってきた。
もういいや。と囲んでいる4人の足元に土魔法で穴を開けて落としたら土魔法で顔だけ出させて埋める。
仕上げに結界でトントンと押し固めて出来上がりだ。遠目に見ていた人に衛兵を連れて来てもらう。
「なんの騒ぎだ!」と2人の衛兵が来た。
どうしてこうなったかを衛兵に説明している間も顔だけだして埋められている男たちは、
「俺らはトルド商会の者だぞ!こんな事して後で吠え面掻くなよ」
とか吠えている。それを聞いた衛兵が何か納得したのか、
「事情は分かった。連れていくから穴からだしてくれ」と言われたので4人の男を魔法で穴から出すと4人は衛兵に連れて行かれる。
はぁ、と溜息を吐いてから宿へと向かう。
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