第157話 ことの行方とタキノの期待
翌朝、コウ達は侯爵家からの詫びの金貨の入った皮袋を受け取り宿をでる。コウは宿を出ると空を見上げる。
「良い天気ですね」
と呟くと歩き出す。先頭はルカとヘルミナが並び、朝から騒がしく喋っている。その後ろを気だるげにサイとタキノが続き、最後尾をコウが歩く。
首都アズラを出るとナブの誘導により原初の船がある場所を目指す。この場所はアズラの人達には聖域とされて人が入ることが出来ない場所とされていた。
「コウ、来てるな」
とタキノがコウに言うと、
「はい、30人はいますね」
と返す。
◇首都アズラ 侯爵邸
「侯爵様」
「どうしたアレク」
「昨夜、居なくなっていた使用人が今朝帰ってきまして問いただした所、お嬢様の使いで裏の者を雇ったと」
「何だと。狙いは宿の客か?」
「はい、そうでございます」
「アレク、至急我が家の騎士団を派遣しろ。一刻も早くだ!」
「畏まりました」
と執事のアレクは執務室を出ていく。
「実の娘とはいえ、厄介な事をしてくれる。葬るしかないか・・・」
寂しそうに侯爵は呟く。
「遅れるな!」
と先頭の馬に乗る騎士が声をあげると、その後ろに続く騎馬9騎が速度を上げる。その勢いのまま首都アズラの門を抜けると森を目指す。
情報ではこの先の聖域方面に居るはずだ。
森に入り開けた場所に着くとそこは異様な風景となっていた。
「こ、これは」
騎士達が乗る馬は足を止めてその風景を見る。人相の悪い男達30人が首だけ出して身体は全て地面に埋まっている。
騎士達が馬を降りて検分しようとした時、
ゴゴゴゴゴ!
という地鳴りがしたかたと思えば聖域方面の空が光る。
「な、何だ!何が起きている!」
と騎士達が光る空を見上げると何か見た事もない大きな物体が急激に上昇していく。
「あれは何だ!」
騎士達は埋まっている者達はとりあえず放置して聖域を目指す。聖域にある今まで結界があったと思われる場所に到着してみれば結界がない。
恐る恐る聖域に入っていくと何かがあった思われる空間がポッカリと開いている。それを確認した騎士が首都へと連絡に走る。
母船と軌道上で合流した原初の船はナブの意見を聞き入れて空間拡張機能は母船にAIは小型戦闘艦2番艦コントロールAIとなる事となった。
更に空間拡張機能が追加された母船の内部空間は当初の3倍の空間となりドックも拡張された。
コウはナブからの意見として母船と小型戦闘艦2隻に艦名をつけることとなり、母船を“さくら“、小型戦闘艦1番艦が“はるかぜ“、2番艦が“はるゆき“となった。
小型戦闘艦2隻は母船さくらのドックに収納されて次の目標へと向かう。ディープドライブを発動させた母船さくらはその姿を消す。
タキノは新たに船内の拡張された山岳地帯をピョンピョンと跳ねながら登っていく。時折、眼下を見ながら呟く、
「これが船の中って言うんだから面白え」
この山岳地帯の下には湖が見えている。その湖にはポツンと船が浮いている。それを見たタキノは、
「ルカ達も楽しんでいるな」
とニヤリとして山を登っていく。山頂に着くと適当な岩場に座り休憩をする。
ふと今までの事が思い出される。
コウに出会ってからは目まぐるしく物事が進み、今では宇宙を旅している。
「本当に面白え」
収納から水筒を取り出して冷たい水をゴクゴクと飲むと濡れた口元を雑に袖で拭うと水筒を収納する。
これから何が起きるのか何を体験できるのかワクワクが止まらない。
コウ達に出会えて良かった。
つくづくそう思う。
この出会いは人生の転機。そう言える。
自然と口角が上がる。
楽しくてしょうがねえ!
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