第156話 侯爵とどうしようも無い娘
コウへと5人の護衛が斬りかかるが、
ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!
コウの結界により護衛の剣は弾かれる。護衛達は再度剣を構えてコウに対峙する。
「何やっているの!さっさと斬ってしまいなさい!」
女はヒステリーに叫び、護衛達を煽る。護衛達はアイコンタクトをとり一斉に再度斬りかかるがコウの結界を破ることはできない。
そこに飲み屋での情報収集を終えたサイとタキノが宿に入ってくる。
「おいおい、おもしれぇじゃねえか」
とタキノはコウの元へと走る。それを見たコウは、
「生捕りで!」
と言うと
「承知!」
とタキノは答えて護衛に肉薄する。あっと言う間に護衛に近づき鞘の付いたままの剣で殴り気絶させる。
1分もかからずに護衛は地に伏せる。
「何事ですか」
とサイがコウに近づいていくと、
「あの女が支配人に暴力を振るっていたところを止めただけなんだけど」
とコウが女を見ると女は魔法を詠唱。コウは咄嗟に女を結界で包む。発動した魔法は行き場を失い暴発。
結界の中で荒れ狂う風の魔法は女を痛めつける。
「ギャァァァ」
と女は悲鳴をあげると意識を失い倒れる。その後は支配人の手配により衛兵が呼ばれてコウ達は事情を聞かれるも支配人のとりなしにより事なきを得た。
女と護衛は連行されていき、尋問を受けるようだ。
タキノはコウに、
「なんで始末しなかったんだ。あんな奴ら盗賊よりもタチが悪いぞ」
と言われたが、
「う〜ん、あの護衛や女を消すのは簡単ですが、後のことを考えて事を荒立てたくなかったですかね。勿論、無視して宇宙に行ってしまえば良いし、何だったらこの国を消してしまう位の戦力は今のわたしたちにはあります。でもそれをやってしまうとあの宇宙害獣と同じ気がして・・」
「納得だ」
とタキノはコウへ親指を立てる。
◇首都アズラ レオナルド・フォン・アズルナリ侯爵邸
「お前は何をやっているのだ!これで何回目だと思っている」
とアズルナリ侯爵は娘であるサリニア・アズルナリに怒鳴る。
「お父様!私は悪くありません。あの下賎な者達が悪いのです。それに元々といえば宿の支配人が部屋を用意しなかった事が問題なのです」
とサリニアは言うが、
「事情は全て調べてわかっておる。既に埋まっている部屋をお前の我儘で空けろと言い、無いと頭を下げる支配人へ暴力を振るい、それを止めた宿泊客に護衛が切り掛かったとな」
「あの支配人は叩かれて当たり前です。高貴な私が部屋を用意しろと言ったのですから用意をするのは当たり前ではありませんか?それに下賎な者を幾ら斬ろうと問題ありませんわ」
とさも当たり前のように言う。それを聞いた侯爵は、
「前にも言ったぞ、次はないとな。お前は侯爵家から追放だ。修道院にでも送ってやる」
「お、お父様!それだけは考え直してくださいまし」
とサリニアは必死に取り繕うが侯爵は取り合わずに部屋を出ていく。サリニアは侯爵が出て行った扉を見つめ、
「あの者達がいけないのです。あの者達を亡き者にすればお父様も考えを変えてくれるに違いませんわ」
と呟く。
応接室を出た侯爵は執務室へと入る。執事にハーブティーを用意させると一口飲んで一息入れる。
「育て方を間違ったか」
と虚空を見つめて呟く。
「アレク、例の宿泊客については何か分かったか?」
と傍に控える執事に声を掛けると、
「はい、少しですがわかりました。商業ギルドギルドマスターからの情報ですが、手を出してはいけない者達だと。一行は5人で12、13歳に見える少年をリーダーとして剣士、魔法師、ドワーフ、エルフの4人が付き従うとあり、その4人はいずれも手練れで4人が4人とも魔力量は魔法師団長の倍以上はあると言っていました。そしてリーダーである少年ですが、通常では何らかの方法で魔力を隠蔽しているが、その魔力量は計り知れなく、年齢も見た目通りでは無いだろうと言っていました」
「あの娘はそんな者達に手を出したと?よく命があったものだな」
と侯爵は目を瞑り考えをまとめると、
「アレク、サリニアは侯爵家から追放して修道院へと入れる。これは決定だ。その宿泊客への対応は金貨100枚を詫びとして直ぐに送ってくれ」
「畏まりました」
と執事は執務室を出ていく。
◇首都アズラ某所 ???
「現宰相である侯爵様の御息女であるサリニア様からの依頼だ」
と男はテーブルの上にガシャリと金貨の詰まった皮袋を置く。それを見た対面に座る男は、
「で、だれをやれば良いんだ」
「この宿に泊まっている5人組だ」
と紙片をテーブルの上に置く。それを対面の男は手に取り情報を確認すると、
「案外と楽な仕事のようだが?好きなようにやっても良いのか」
「ああ、それは任せる」
と言って出ていくと対面の男の後ろから数人の男が姿を表す。その面々に紙片を渡し確認させると部屋から出ていく。
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