第155話 街の散策と迷惑な女
多少のトラブルはあったが無事にお金も降ろせたし5人は宿を取ってから散策することにした。宿はギルドで聞いた宿を紹介してもらい。それもお詫びとして1泊はタダで泊まれるようになった。宿の場所だけ確認したら散策だ。
商業ギルドカードは流石の謎カードだ。どういう原理で動いているのだろうか?謎だ。
宿の確認も出来たので散策をする。確かに店が多い。
それに気づいた事がある。道行く人から感じる魔力が多い。子供でもリンドルンガにいる大人と変わらない程に魔力があるようだ。
これは子供の頃から魔法に慣れ親しんでいるのだろう。
あちこちで簡単な魔法である生活魔法が使われている。タバコに火を付けたり、店の前に水を撒いたり、生活魔法の送風を使い声を乗せ拡散させたりと工夫が見られる。面白い。
路地裏では幼い子供達がしゃがんでアリの巣を生活魔法の穴掘りで小さくだが掘り返していた。
店を覗くと魔導具も多く使われており、普及しているのが分かる。かなり魔法が普及、進んだ国なのだろうな。
4人にある程度の資金を渡すとサイとタキノは武具・魔法具店へ。ルカとヘルミナは服飾店を見て回るようだ。
俺はテラス席があるお店で休憩だ。
適当なハーブティーを頼んで飲んだら、これが当たりだった。絶妙なブレンドで香りも良く美味しい。
ブレンドされたハーブを買えるなら帰りに買いたい。
テラス席に座りながら道行く人々を見る。一様に顔が明るい。善政が敷かれているのだろうな。浮浪者のような者も見ない。
どこかに闇の部分もあるのだろうが、ここからは感じられない。
良い所だな。
ふと服飾店の方を見るとルカとヘルミナが店から出てきた。店から出てきた2人はこちらに気付いて手を振りながら近づいてきて、同じテーブルの空いている席に座る。
何を飲んでいたか聞かれたので中々美味しいハーブティーだと言うと2人は同じ物を頼んで飲んでいる。どうやら気に入ったようだ。
それにしても2人はよく喋る。キャピキャピと10代前半のように喋る。
ルカはもう20を過ぎていてヘルミナは40過ぎているのになと考えていると、2人の声が聞こえない。
ふと2人を見ると2人ともこちらを冷えた目で見ている。
「コウ、あなた今何かよろしくない事を考えた?」
とルカが言い。ヘルミナが追随するように、
「確かに不穏な感じがしたわ」
とジトーとした目で見てくる。背中に冷たい汗をかきながら、務めて冷静に
「特に何も考えてないが」
と白を切り、カップに残ったハーブティーを飲み干す。それで心を落ち着かせてメニューを見て焼き菓子があるのを確認してオススメの焼き菓子を頼むと、これまた当たりの焼き菓子でその場を誤魔化すことに成功する。
暫くすると武具・魔法具店を見ていたサイとタキノが来るが2人はこれから飲み屋に偵察と情報収集に行くようだ。
用事もないのでルカとヘルミナを連れて宿に行き部屋に案内されて休む。ルカとヘルミナは買った服を着てみるようだ。
軽く睡眠をとって起きると昼を過ぎたようで軽い食事でもとロビーへと降りると何やら争う声が聞こえる。
「お客様、先ほどから申し上げている通りに今日の当店のスイートルーム全ては埋まっております」
「そこをなんとかするのが支配人じゃない。私はこの国の宰相の娘よ。なんとかしなさい」
「そう言われましても無理です」
と支配人は言うが、相手は引き下がらない。
う〜ん、確か・・・ルカとヘルミナが2人部屋でサイとタキノも2人部屋でどちらもスイートだな。ああ、俺の部屋も2人部屋だが1人で使っているがスイートだった。
これは1部屋譲るか?俺もベッドを用意してもらってサイ達と3人で泊まっても良いもんな。と考えて支配人のところに行く。
「あの〜、宜しいですか?」
と支配人に声を掛けると
「これはコウ様。お騒がせして申し訳ありません」
と支配人は頭を下げると宰相の娘という女はこちらを睨む。女の後ろにいる鎧を着た護衛の者たち2人も剣に手をかけて警戒する。
「何か問題でも?」
「いえ、何も問題ありません」
と支配人は言うが女は
「大有りよ」
と激昂して
「早く、スイートを用意しなさいよ!」
叫ぶが支配人は、
「申し訳ありませんが、今日は満杯です」
と頭を下げるが女はそんな支配人の下げた頭を叩く。バシンっと音がするが支配人は姿勢を変えない。プロだな。
そんな支配人の頭をもう一度女は叩こうとするが俺はその手を掴んで阻止した。女は顔を真っ赤にして
「離しなさい!」
と言うので離せばゴロンと後ろに転ぶ。それを見た護衛の者が抜剣して切り掛かってくるが結界で阻止する。
ガキン!ガキン!
と結界に剣が当たる音がロビーに響くと外で待機していた他の護衛3人がロビーへと入ってくる。事情も聞かずに3人は抜剣してコウを囲むが支配人が、
「その方に非はありません」
と言うが女が
「私の手を掴んだのよ!非があるわ!斬ってしまいなさい」
と言うと護衛5人が一斉にコウに斬りかかる。
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