第153話 惑星への降下
ヘルミナは森林公園のジョギングコースを走っていた。これはナブにトレーニングを相談した時に作ったメニューの一環である。
このトレーニングメニューは魔法の練習をするにつれて上がった魔法力や魔力の増量に対応するために器である身体を鍛えるメニューだ。
私たちエルフの魔力量は元々多くて寿命も長い。それが最近の魔法の練習でかなりの魔力量が増えた。ナブによると出会った時と比べて倍だと言う。
そんな魔力量を支える身体を機械トレーニングやランニングで体を鍛えている。何にしてもこの森林公園の空気は美味しい。
サイにしてもタキノにしても、勿論ルカもかなりの魔法の練習や色々な勉強、武術の訓練をしている。
彼らの実力は私ではまだ太刀打ちできないくらいの差がある。でもナブによるとあと少し練習をすれば、その差は格段に縮まると言われた。
疑問はあるが自分の能力が上がるのが分かるので楽しくて訓練をしている。
本当に彼らに会えて良かった。
ランニングが終わり寮の前の広場に着くと何やら人族の少女が見本を見せつつ、その前で獣人の子供たちが体操をしている。
少女の名前はマリンちゃん、13歳。栗毛色の髪で色白の目がクリクリしている可愛い女の子だ。
狼獣人の元気な男の子はロックくん、6歳。やんちゃでいつも走り回っている。次の子も狼獣人でロックくんの弟のクロウくん、5歳だ。この子はいつも兄であるロックくんの後をついて回ってはロックくんの真似をしている。
最後に猫獣人の女の子メルちゃん、5歳。この子は元々ロックくんたちの家の隣に住んでいた幼馴染。この子もロックくん達の後ろをついて周り駆け回っていて元気だ。
こんな子達がぎこちないながらも体操をしている。聞いた所によるとこれもナブによる教育の一環らしい。他にも文字の簡単な読み書きの勉強もしている。
その子達の横を通り寮に入り。シャワーを浴びてさっぱりする。
シャワーを浴びた後は食堂でフルーツ牛乳と言う飲み物を飲む。これが美味しい。
最近のお気に入りだ。
さて今日はルカもいない事だし、この後はアーマーのシミュレーションでもするかな。
目標の星の周回軌道を回っている小型戦闘艦のコントロールルームでルカは探査ポッドから送られてくるデータを見ながらナブと意見を交換する。
「ナブ、データからすると私たちの星程度の文明かしら?」
『はい、ルカ。どちらかと言えば魔法に特化した文明でしょうか。どうやら魔法はルカ達の星よりも進んでいるようです』
「これなら降りられそう?」
『はい、ルカ。多分大丈夫でしょう』
「それは楽しみね。コウに連絡してもらえる?」
『了解、ルカ』
ナブの報告を受けた母船は目標の星へと向かい、現在は小型戦闘艦を回収して星の周回軌道を回っている。
母船のミーティングルームでコウ、サイ、タキノ、ルカ、ヘルミナがナブから星の調査結果を聞いていた。
「ではナブ、この星の一番大きな大陸中央にある国の首都近くに原初の船があるのだな」
とコウがナブに聞くと、
『はい、マスター。ダズラル大陸、ダズラ中央王国の首都アズラの北東へ約5㎞の地下に秘匿されています。現王国になる前には原初の船との関係は無くなっています』
「どんな種族がいるのかしら」
とヘルミナが聞くと、
『はい、基本は人種で、その他にも各種獣人やドワーフ、エルフがいます。比較的にダズラ中央王国は差別が少なく、満遍なく各種種族が住んでいます』
「言葉や文字は?」とサイが聞き、
『サイ達が住んでいた星と変わりがありません』
とナブが答える。
『追加情報ですが商業ギルドがコウが住んでいた国と同様にあります』
それを聞いたコウは苦笑する。謎カードは使えるのかどうなのかと。
それからは服装などを一般的なダズラ人と似たような物を用意したりして準備をした。数日後、準備も整ったと言うことで首都アズラ近郊に降りることとなった。
今回はフルメンバーでコウ、サイ、タキノ、ルカ、ヘルミナの5人で降りる。
一行はアズラから10㎞離れた森の中に降りてそこから森を抜けて街道を目指す。
街道に着くとそこには行商が護衛を連れて荷馬車で移動しているのが見える。まだ、出会ってはいないが魔物が多いのだという。
盗賊は王国の騎士団が定期的に街道周辺を巡回して討伐していることから少ない。
これらの情報は地上に降りた探査ポッドから放たれた虫型マイクロポッドにより収集された情報である。
今回の活動には風魔は帯同していない。
陽気の良い街道をゆっくりと一行は進む。
遠くの空に鳥の魔物が見える。ビックバードだろうか?唐揚げが美味しいんだがとコウは考えながら歩く。
後ろから何やら急いでいるらしい豪華な箱馬車が迫ってくる。コウ達は急いで道から避難して馬車が通り過ぎるのを待つ。
箱馬車の側面には大きく紋章が書かれているが、勿論分からない。
箱馬車の後ろを遅れて騎士らしき者達が騎乗する馬が早足で5騎通りすぎる。
街道に戻り道を行くと貴族と見られる箱馬車を避けるために道の外に避難していた荷馬車が丁度街道へと戻る所に出くわした。
丁度良いので護衛の者に箱馬車の事を聞いてみれば現宰相の家の馬車だと言う。
関わるつもりも無いので挨拶をして荷馬車と別れた。
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