第151話 先行偵察
小型戦闘艦の有人航行試験を無事終えると次の目標へと向かうこととなった。小型戦闘艦を船内ドックに収納する。
準備が整ったところで次の目標へとディープドライブにて向かう。
ディープドライブ中は亜空間に落ちるように進むため外に出れない。その為、今回小型戦闘艦で出た要望などを聞き改修を加えることにした。
その要望とは有人の場合、コントロールルーム・仮眠室・アーマー格納庫のみの為、シャワールームと小規模な食堂をタキノとルカにより提案された。
コウはこれを了承。元々、小型戦闘艦内部には余裕があった為にそれらの機能を追加した。まだまだ余裕があることから将来的にはディープドライブ装置の設置も考えている。
数日間のディープドライブを終えると目標星域近くに到着した。
「ナブ、船に問題はないか?」
『はい、マスター。問題ありません』
「目標である星は?」
『存在を確認できました』
「分かった。予定通りに小型戦闘艦による先行偵察を実施してくれ」
『はいマスター。予定通りにサイ、ルカによる小型戦闘艦での先行偵察を実施します』
「問題ないわね」
とルカは先行偵察に出た小型戦闘艦のコントロールルームでデータを確認して呟く。データを確認して安心した彼女はコントロールルームを出て新たに設置された食堂へと向かう。
小型戦闘艦内の居住空間の設備は仮眠室最大10名(1人部屋2、4人部屋2)、食堂最大30名(簡易自動調理器)、シャワールーム5、トイレ5となっている。
食堂に着いたルカはサイが何やら書物を読んでいるのを目の端で確認しながら簡易調理器のメニューを操作して紅茶を選択する。数秒でカップに入れられた紅茶が出てきてそれを掴んでサイの座るテーブルへと近づく。
「また魔導書を読んでいるの?」
ちらっとサイはルカを見て書物に目を戻しながら、
「ああ」
と素気なく返す。
「やはりこないだの戦闘の事かしら」
とルカが言うとサイは魔導書をテーブルに置いてルカをみる。
「何の事だ」
とサイは厳しい目でルカをみるが、ルカはサラッと流し、
「コウの戦闘のことよ」
とルカが言うとサイは苦い顔をしながら、
「まあな」
とルカから目を逸らす。
「コウはコウだし、サイはサイだから別に気にする事はないんじゃない?まぁ、同じ魔法師としてはあれはショックよね」
とルカは遠い目をする。
「確かにあれは絶望を感じたわ。私も魔法を使えるようになって、いつからかコウに近づけたのではないかと思っていたからね」
とルカは俯きながら言うと、
「そうだな、俺も追いついてはいないだろうが、足元には行っていると思っていたんだがな」
と悔しそうな顔をする。
「でもあれね。倒しがいのある目標ね」
とルカは明るくサイに言う。
「ああ、目標は高い方が良いからな」
と天井を見上げて何かを振り払うように振る舞いサイは言う。
「そういえばナブには相談した?」
「いやしていないな。なんでナブなんだ?」とサイが疑問をルカに言うと、
「だってナブって古代からの情報を持っているじゃない。だったら魔法力を上げる方法も知っているんじゃないのかしら」
とルカはあっけらかんとサイに告げる。
「そう言うことか、それは考えていなかったな。サンキューなルカ」
とサイは何か光明を見たかのような顔でルカに言う。
「私もね皆んなに負けたくないからナブに相談してるのよ。今はデータ処理とか魔導システムの原理とかね。特に魔導システムの原理については難しいけどためになるわ。将来的はシステムの構築とかもしてみたいしね」
とルカは目を輝かしてサイに語る。
「色々考えているんだな」
とサイは感心したようにルカをみる。そんなルカはサイの目線に気付かずに、
「本当に昔の私では考えつかない位に楽しいわ。コウには感謝ね」
と眩しい笑顔でサイをみる。それを見たサイは苦笑をしながら、
「そうだな」
と同意する。
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