第144話 エルフの同行者
翌日、この国での目的を達成したコウ達は港を目指す。街の中を歩きながら港町に通ずる街道に繋がる第2級民地区との境の門手前で昼食を取る事にする。
「ここが中々イケると評判の食堂よ」
とルカの案内で食堂に入ると案内されて6人掛けのテーブルに座る。
「何が美味いんだ?」とタキノが聞くと、
「港町から運ばれて来る魚介を使ったランチが美味いのよ。朝採れた魚介が昼前に届いて新鮮なのよ」とルカは嬉しそうに答えてメニューを見る。
それぞれが注文し終わると、
「次の町までは近いとか言っていたな」とサイが言えば、
「そうですね宿で聞いた所ではここを出て4時間で着きますね」とコウが答える。
ふとコウが何かに気付いたのか食堂の入り口を見ているとフードを目深に被った者が入って来る。その者が案内されずにコウ達が座るテーブルの横を通り過ぎようとした時に、その者のフードがハラリと採れる。それを見たコウが、
「エルフ」
と呟くと、エルフと呼ばれた者が振り向く。
「今、エルフと言ったのはお前か」
とその者はコウを見て言って来るとコウは、
「申し訳ない。この辺では見なかったもので」
と謝るが、
「ん?お前、エルフに会ったことがあるのか?」
「はい、知り合いに何人もいますが」とコウが言うと、
「何!それは本当か!」とコウに詰め寄る。それを見たサイが、
「おいおい、まあ落ち着け。まずは空いている席にでも座れ。皆、いいか」とサイが言うと他の3人が頷く。落ち着いたところで、
「どういう事ですか?」とコウが事情を聞くと、この国というかこの大陸にはエルフは、このエルフ1人しかいないと言う。両親は何処かの大陸から、この大陸に渡って来てから“彼女“が生まれて15歳の時に失踪した。両親が失踪してからも彼女は方々を探したが見つからず途方に暮れていたところにコウの“エルフ“と言う言葉を聞いて焦って詰め寄ってしまった。それが今の状況らしい。
「そうでしたか。確かに私はエルフだけの国や、その同族であるブラウンエルフの国にも行ったこともありますし、交流もしていて地元にもエルフ達はいます。え〜と・・」
「ああ、失礼しました。私の名前はヘルミナと言います」
「はい、私はコウです。それでご両親が失踪したのは何年前ですか?」
「それはそうですね。私が15歳の時ですから25年前でしょうか」
とヘルミナが言うと20歳に見えない容姿を見てタキノが、
「なんだババアかよ」と小さく呟くと場が凍る。それに気付いたタキノがギギギとヘルミナを見ると背後に般若が見える。すると、
ゴン!ゴン!
と音がして、
「痛え!」「なんで俺まで!」
と言ってタキノとサイが頭を押さえてルカに文句を言うが、
「あんた達!失礼なのよ」
とルカがフライパンを右手に持って振りかぶる、
「ま、待て!俺は何も言って無いだろ!」
とサイが言うが、またしても
ゴン!ゴン!
とタキノとサイの頭をルカのフライパンが襲う。そしてサイとタキノは蹲り唸っている。それを見たヘルミナは溜飲が下がったのか笑顔だ。
「本当にあんた達は!御免なさいねヘルミナさん」
とルカが言うと
「フフフ、ありがとうね。え〜と」
「あっ、私はルカです」とペコリとルカは頭を下げる。
「ルカさんね。よろしくね」と2人は顔を見合わせて微笑む。
「じゃあ、コウ。話を続けて」とルカがコウを見て言うとコウは強張った顔で、自分もババアとは考えていなかったが結構歳が行ってるんだなと思っていたと悟られないように、一つ咳払いをして、
「25年前ですか。う〜ん、これから私たちは一度、私の拠点に行きます。その時にそこにいるエルフに聞いて見ますがどうでしょう?」
「行きます」
「え?なんですか?」
「ここで待つのも何ですし私もついて行きます」
「はぁ〜」
とコウはため息をつくと、
「分かりました」と俯いて言う。それを聞いたヘルミナとルカは喜ぶ。
コウ達は食事を食べ終えて街道を目指す。
「おい、なんか増えたぞ」とタキノが小声で言うと、
「やり辛えな」とサイはルカとヘルミナが前を並んで喋っているのを見る。それを見ていたコウが、
「聞かれたらルカのフライパンが飛んできますよ」とコウが言うとサイとタキノはササッとコウの後ろ移動して素知らぬ顔をする。
それを見たコウはやれやれと空を飛んでいる風魔を見て歩いていく。
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