第139話 ドワーフの少女
村に着くと村人が一斉にこちらに向く。そして外で遊んでいた子供達は焦ったように家に入り、大人達も直ぐに家に入り扉を閉ざす。
村に入って行くが誰も出て来ない。
参ったな。
仕方がないので村を後にする。
「なあコウ。何か変だよな」とタキノ。
「ああ、俺もあれは異常だと思う」とサイも同意する。
「そうですね。あれでは何がどうしてなのかもわかりませんね」とコウは後ろを振り返り答える。
「まぁ、次の村か町に急ぎましょうか」とコウ達は道を急いで歩いて行く。
翌日昼には次の村に到着する。村に入ると村人達は珍しい物でもみるようにこちらを見てくる。だが前の村のように直ぐに家に隠れるような事は無い。そんな中から、
「あんた達は何処から来なさった」
と老人が声を掛けてくる。
「俺らか?俺らは海を越えて来た」
とタキノが答えると老人は、
「なんと!海を越えて来なさったか」
と細い目を大きく開けて答える。
「ああ、それで聞きたいのだが前の村でな・・」と言おうとした所老人が、
「そのことじゃがの、この辺の村は閉鎖的での中央に近づけばそうでもないんじゃが、この辺はダメじゃな」
と困った顔をする。
「どうしてなのですか?」
とコウが聞くと、
「ここらにいる者らはの、中央から追い出された者達なのじゃよ。悲しいことにな」
と老人は苦い顔をする。
「特にの、その村は中央にいた時は羽振りが良かったそうなのじゃが、政争に敗れて一族郎党や取り巻きを含めて、こんな辺境に追い出されてな。それで人を信用しなくなって我らの村ともな行き来は無いのじゃ。困ったことじゃて」
「そういえば、港の村に人は居ませんでしたが」
「うむ、人があまりにも少なくなって、この村に吸収したのじゃよ。まだこの村の方が塩害も少なく農地を広げ易いからの」
それからこの老人が村長だと分かり、今夜は村長宅で泊まることとなった。その中でこの大陸の事を教えてもらった。
中央にあるのはマグノリア聖教国。創造神を崇める宗教を中心にした宗教国で教皇が国を納めているという。そこの民は上級民とされ聖教国を囲む様にある州にいる民を第2級民としていて2級の民は教国には入れない。
更に州の外にある地域は第3級民地域とされ、その3級民地域の外を最下級の者が住む外界として下民が住む地域とされていて、この村のある地域も外界とされる。
村長に俺たちが聖教国に入れるか聞いた所、海を越えて来たと証明出来れば可能だと教えてくれた。ナブの解析だとあの転移の魔法陣を使ったのは聖教国だと判明しているので、それを追求する為にも、聖教国に入れるのはありがたい。
翌日には村を出て第3級民地域を目指す。それから数日かけて幾つかの村を通りながら第3級民地域に入る為の関所にたどり着いた。
コウ達は関所に着くと尋問されたがコウが他の大陸の国の貴族の証を見せて難なく通過することになった。サイとタキノは護衛の魔法師と剣士として通過した。それから2つの村を過ぎて第2級民地域に入る前の村に着いた。
「おい、混ざり物!何でお前が道を歩いているんだ!」
とドワーフの男がドワーフの少女に怒鳴っている。少女は身を縮ませて怯んでいる。
「さっさと目の前から消えろ!混ざり物が!」
とドワーフの男は拳を握り少女に殴りかかろうとした所をタキノがドワーフの男の腕を掴む。
「大の大人の男が少女を殴るなんてのはいただけねえよ」とタキノはドワーフの男を睨む。
「くっ!煩い!人種との混ざり者を虐げて何が悪い」とドワーフの男はタキノに怯みながらも喚く。
「私の知っているドワーフはどんな人種とも仲良く物作りをしていますが、あなた達はその誇りも何もない様ですね」とコウがドワーフの男を睨む。
「離せ!混ざり者を庇うのか!」とタキノを振り切りコウに殴りかかろうとするが、
「させんよ」とサイが結界を張る。ゴギンと男の拳が結界阻まれて男は拳を掴んで蹲る。男は拳を掴みながらこちらを睨んでくるのでコウは結界で抑えている魔力を解放すると男は尻餅をついて股間にシミを作る。
「ヒィィィ!」と言って後退り泡を吹いて気絶する。
タキノとサイは男を見てやれやれとコウの元に集まる。
「あのう、あ、ありがとうございます」
とドワーフと人種のハーフと思われる少女が頭を下げてお礼を言ってくる。
「良いってことよ」とタキノが答える。
「そういえばお腹が空きましたね。この辺で何か食べる所を知りませんか」とコウが少女に聞くと
「えっと良ければ、私がお世話になっている宿の1階の食堂は如何ですか?」と言うのでその食堂に案内してもらう事にした。宿に着くと、
「ルカ!お前何フラフラしているんだい。とっくに昼時だよ。早く店を手伝いな」と宿の女将さんと見られる女が少女を怒鳴る。
「俺らがこの子にここまで案内して貰ったんだが、何か問題でも有るのか」とタキノが女将を睨むと、
「い、いえ問題なんてありませんよ」と女将は目を逸らしてコウ達3人をテーブルに案内する。3人は席に着くと、
「どうやら女将もドワーフでしたし、ここはドワーフの村の様ですね」とコウが言うと、
「確かにドワーフだが知っているドワーフ達とは違う様だな」とタキノが言うとサイも、
「ああ、違うな」と女将に小突かれながら慌てて用意をする少女を見つめる。
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