第136話 船出
3人は港町に入る。中々活気がある町だ。
コウはタキノを見ると声を掛ける、
「タキノ、何か悩み事でも?」
というとタキノは、
「いや何でもないぞ」
と横を向きながら答える。それを見たサイは、
「腹が減ったかタキノ」
と笑う。
「違うわ!」
と返すが元気がない。サイも気にしているようだ。宿を見つけて部屋を取る3人部屋だ。夕飯までには時間がある。そこで街を散策することとなった。
店を覗きながら歩く。時折、何か買っては収納していく。コウの買い物は食材や調味料を買うことが多い。サイは魔道具を見ては唸っている。タキノは基本は武具をみる。
そんなことをしていると日が傾いてくる。そんな時コウが、
「タキノとはここでお別れですね」
と笑っていう。タキノは、
「ああ、護衛は終わりだな」
というとサイが、
「俺ら2人に護衛が必要かは分からんがな」
と苦笑する。タキノも笑いながら、
「だが楽しかったな」
というとサイも、
「そうだな」
と笑って夕日を見ながら歩く。
翌朝は早く起きて朝市を見に行く。そこら中に新鮮な魚介類が並ぶ。それらをコウが目の色変えて買って行く。タキノは欠伸をし、サイはコウを見て呆れている。
3人は各々好きな魚介類を出店で食べている。コウは焼き魚、サイは魚介のスープ、タキノは肉串。お腹を満たすとゆっくりと市場を見ながら歩き出す。
この日も良い天気で雲一つ無い。
港に着くと適当な場所に腰を下ろして海をみる。海面が朝日を反射してキラキラと光る。ゆっくりとした時間が流れる。誰ともなくくだら無い話をして笑い合う。
コウはビールを出して2人に渡して乾杯する。プシュっとプルタブを開けてビールを飲む。
「美味いな」
とサイが呟く。その横でタキノが目を細めながらビールを飲む。コウもゴクゴクとビールを飲んで海を眺める。
暫くすると上空から、
「キュウ」
と言って風魔がコウの横に降りてくる。コウは風魔を撫でながら、
「良い天気でよかったです」
というとサイが、
「ああ、嵐に巻き込まれるとしんどいからな」
と顔を顰める。タキノは2本目のビールをちびちび飲んでいる。風が吹き3人の髪が揺れる。サイも2本目のビールを開けて飲み、
「ぷぅ」
と息を漏らす。コウは収納からナッツ類を出してビールと一緒に食べる。そこにサイが手を出してナッツ類を口に頬張る。それに気が付いたタキノも手を出してナッツ類をガリガリと食べてビールを飲む
「美味いなぁ」
とタキノは呟きビールを飲む。3人とも2本目のビールを飲み干した所でコウが腰を上げる。
「そろそろ行きましょうか」
と港の先へと歩いていく。その後ろからサイとタキノが歩いて行く。コウが収納から船を出す。
「タキノ、世話になりましたね」
というとタキノは、
「いや、俺の方こそ世話になった」
とそっぽを向く。サイは笑いながら、
「そうだ世話したぞ」
というとタキノは、
「うるせえよ」
と力なく言う。コウとサイは船に乗り込み。
「じゃあなタキノ」
とコウが言いサイが、
「死ぬんじゃねえぞ」
と笑いながら言う。タキノは、
「死ぬか!」
と怒りながら言うが力は無い。コウが船の中に入ると船がゆっくりと離れていく。タキノは踵を返して歩いていく。
タキノはふと振り向くとコウとサイを乗せた船がゆっくりと離れていく。船の上には既に二人の姿は見え無い。
タキノは空を見つめると何かを決めたかのように船に向かい走る。
タキノは身体強化を使う。更に身体強化を重ねる。
港の突端まで走ると船に向かってジャンプをする。グーンと唸りを上げながら空中を跳ぶ。上空で風魔が鳴く、
「キュウ!」
その鳴き声にサイが反応して船尾に出てくると、跳んでくるタキノを見つけて目を丸くする。すると船まであと少しと言うところでタキノがボチャーンと海に落ちる。
サイは急いで船の中で操船しているコウに船を停めるように言うと船尾に戻り、泳いでくるタキノに手を差し伸べる。
タキノを引き上げるとコウも船内から顔を出し、
「久しぶり」
とタキノに笑顔で言いサイも、
「初めから一緒に来れば良いものを」
と言うとタキノは照れながら、
「うるせえよ」
と言ったところで3人は笑い合う。
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