第131話 道中
コウ達3人は街道を歩く。タキノの話によれば次の町がこの国の首都となる。この国は魔物が多い山地を塞ぐようにある事から、他の国からは魔物の防波堤として存在していた。現在では魔物は少なくなって、この国にはこれといった産出物が無く、ただ農業と畜産が盛んだと言う事で半ば放置されている国だという。
一見、農産物や畜産物で潤っているかというとそうでも無く、岩塩も無く海も遠く塩を手に入れる為には、いくつかの国を越えるしか無く、それにより塩の値段が高く、国として貧乏だと言うことだ。
この日は街道沿いで野営することとなった。道程としては首都まで3分の1を消化した程度。タキノの話では通常なら朝町を出れば夕方には着く距離だという。
では何故3分の1しか進んでいないかというと、それはサイとタキノに原因があった。
この2人は直ぐに口論となりその延長で道を逸れて模擬戦に突入してしまう。それを30分おきに行うために中々進まない。
戦績は5分。
コウは特に気にする事なく2人の模擬戦を眺めて楽しんでいる。焚き火を囲んでそろそろ夕食かと言う頃に、
「テメエ!今なんて言った!」
とサイが怒り始めてタキノが、
「ああ?クソはクソと言ったんだ」
とニヤリと笑う。
「お前は本当に死にたいみたいだな」
とサイが言うがタキノは、
「はんっ、テメエがそんな事言っても怖かねえよ」
と涼しい顔。それを見たサイは、
「おいっ、そっちに広くなっている場所がある。いくぞ」
とサイは立ち上がり歩いていく。それを見たタキノは渋々といった風だが楽しそうに向かう。20分もすれば気が済んだのか2人は帰ってくる。今回は引き分けだったらしい。
2人は引き分けだった為か不機嫌そうに焚き火を間に挟んで座り目を合わさない。
「夕飯にしますか」
とコウが言うと、
「「おう」」
と2人の声が重なる。
「2人は仲良しですね」
とコウが言うと、
「「そんなことあるか」」
とまたまた2人の声が重なる。コウは楽しそうに2人にボアカツ丼と漬物、そしてビールを出す。それを2人はガッツクように食べてビールを飲む。何回かお代わりして満足したのか2人はその場に寝転ぶ。
「タキノ」
とコウは声を掛けると、
「なんだ」
とタキノが答える。
「タキノは魔法を使わないのですか?」
とコウが聞くと、
「魔法なんてのは金持ちのボンボンか国のお偉いさん位しか習えねえよ。ツテもねえし金もねえ」
とタキノは不機嫌そうに答える。
「そうですか。では魔法を覚えますか?」
とコウは楽しそうに言うと、
「ン?俺が魔法を覚えられるのか?」
と興味を引いたのかタキノは体を起こす。
「覚えられますよ。ですがサイ程は使えないとは思いますけどね」
とコウが言うと、
「それでも使えるなら使いてえ」
とタキノは目を輝かせる。
「ではサイ。タキノに教えてください」
とコウが言うとサイはガバっと体を起こして、
「はぁ?俺がか?」
と呆れた声で言う。
「そうですよサイ。サイの勉強にもなりますしね」
とコウが言うとサイは少し考えて、
「分かった」
と小さく呟くとタキノに近づいて魔法を説明し始める。コウはその様子を見てニコリと笑う。それからサイはタキノに魔法を教え始めてタキノはそれを吸収していく。
タキノの魔法力はそれ程でも無いが、剣術の中で自然と身体強化と剣に魔力を纏わせるなどできていた為に、それらの補助魔法は結界魔法と共に習得していった。
タキノの使える属性は風、水、土の3属性。
中でも風属性は得意なようで風魔法で移動速度を上げたり風魔法で剣を強化して切れ味を増したりなど出来る様になった。
その結果、サイとタキノの模擬戦はタキノが勝つことが多くなってきていた。
その結果にサイは悩んでいたが、タキノとの模擬戦の最中にコツを掴んだのか覚醒することとなる。
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