第130話 続タキノ
「ふふふ、たかが剣士風情が本物の魔法師に勝てるとでも」
とコウは首を傾げて笑いタキノを煽る。それを聞いたタキノは半身の姿勢で剣を体で隠し摺り足で距離を詰める。
「ほざけ!小僧!そして死んで後悔しろ!シッ!」
と抜剣。鋭い剣戟はしかしコウの結界に阻まれる。がその結界には白く剣げきの筋が浮かぶ。
「私の結界に傷を付けるとは大した物ですね」
とコウは感心した声色で喋り、後ろを振り返らずに、
「サイ、結界の強度はいつもの倍で」
とサイに告げる。それを聞いたサイは頷く。
「いつの間に結界を張りやがった!しかも俺の剣戟が結界を貫けないだと!」
とタキノが言うがコウは、
「上には上がいると言うことですよ」
と涼しい顔で言う。それを聞いたタキノは苦い顔をしながらも、
「これが俺の全力だと思うなよ」
と何やら構え直すと体が一瞬光り、「シッ!」と抜剣!鞘から抜かれた刃は鈍く光り鋭くコウの結界に当たるとパキィィィンという音と共にコウの結界が弾けるが直ぐに新たな結界が張られて剣を阻む。
「くっ!これでも抜けねえか!」
とタキノは悔しそう言う。そしてコウは、
「いえいえ、誇っても良いですよ。1枚とはいえ私の結界を割ったのですから」
と目を見開き感心するように言って、
「ではそろそろ私の番で良いですか」
とコウは頭上に火の玉を作り出す。
「おいおい、詠唱はどうした!だが魔法を斬れないとでも思うなよ」
と剣を鞘に戻し吐き捨てるように言うと、コウは更に頭上に数十の火の玉を作り出す。
「おいおい待て!それは反則だ」
とタキノは焦り出すが、コウは
「では行きますよ」
と火の玉を一斉にタキノ目掛けて飛ばす。ゴゥっという音と共に数十の火の玉がタキノ襲うがタキノは必死に剣を降り火の玉を幾つか切り裂き消滅させるが間に合わず火の玉がタキノを襲う。
「くっ!」
とタキノは覚悟して目を瞑るが火の玉は襲って来ない。意を決して目を開けると自身の周囲を火の玉が囲む。それを見たタキノはしゃがんだかと思えばその場にどかっと座り、
「俺の負けだ。煮るなり焼くなり好きにしろ!」
とタキノは開き直る。コウは振り返りサイを見るがサイは首を振って苦笑いをする。
「私はあなたに興味がありませんよ」
コウはサイと共にその場を去る。この争いは店の前で起きた為に騒ぎの音を聞いた野次馬がなんだなんだと店の中から多数、外を覗き込んで、
「おい、あのタキノが魔法師に負けたぞ」「口と態度は悪いが腕は確かなタキノがだと」「嘘だろ」「ザマァみろ」
などと騒ぎ立てる。そんな喧騒を気にする事なくタキノはその場で大の字で寝転んで星空を眺める。
「上には上がいるか」
とタキノは呟き、次の瞬間獰猛な笑顔になる。
「コウ、あの剣士どうだった」
とサイがコウの後ろを歩きながら声を掛ける。
「そうですね、少なくとも私が今まであった剣士の中では一番ですね」
とコウは思い出すかのように言う。
「そうか、俺では危なかったかもしれないな」
とサイが言うと、
「今のサイとあの剣士は5分5分でしょうね」
とコウは真剣な顔で言う。
「俺もまだまだと言うことか」
とは言うがサイの顔は笑顔だ。
翌日の朝、コウとサイが次の街へと移動するために宿を出ると、
「遅いじゃねぇか」
となぜかタキノが声を掛けてくる。
「なぜお前がいるんだ!」
とサイはタキノに向かって言うと、
「お前ら商人なんだろ、俺が護衛してやる。勿論、金はいらねぇ」
とタキノはニヤリとして言うがサイは、
「おいおい、昨日魔法師に負けたお前が護衛に付いたって役に立たねえよ」
とサイが言うと、
「うるせぃよ。金魚の糞は黙ってろ」
とタキノがサイに言うとサイは、
「てめえ、何が糞だ!お前こそ道端の犬の糞だろ!踏まれてしまえ!」
とサイは口から唾を飛ばしながら言うとタキノは、
「ああ、やだねえ。これでから世間知らずのおぼっちゃまは」
と憐れんだ目でサイを見る。
「なんだと!」
とサイが言うとコウが、
「まぁまぁ、サイ。タダで護衛をしてくれるなら良いでは無いですか。連れて行きましょう。それに我々よりもこの先の事には詳しそうですしね」
とコウが間に入りタキノが一緒に同行するのを了承する。サイは溜め息を吐いて、
「コウがそう言うなら良いけど・・・テメエは大人しくしていろよ」
とサイがタキノに向かって言うとタキノは、
「へいへい」
と両腕を頭の後ろ組みコウとサイの後ろをついていく。その空には雲が流れて風魔が気持ちよさそうに3人の上を旋回している。
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