第122話 上級魔法師
「その方、今何をしたかわかるか?」と趣味悪魔法師が言って来る。
「結界を張っただけですよ?」とコウは言いニコリと笑う。
「ほほう、結界を張っただけとな。それが失礼であると言っておるのだ」と悪趣味魔法師がふんぞりかえる。
「何が失礼なのかわかりませんが、街中で魔法を行使しようとする貴方達こそ失礼なのでは?」
「ふん、何も知らぬ小僧が。良い、この小僧を連れて行け」と趣味悪魔法師が命令するも他の魔法師は結界で覆われていて動く事ができない。
「何をグズグズしている早くしろ!」と趣味悪魔法師が叫ぶが勿論、他の魔法師は動けない。
「もう良い!ワシがこの者を連れていく」と言って動こうとするが結界に阻まれて動けない。それをコウはニヤニヤしながら見ている。
そこに宿の支配人が来る。ああ、ここに放置したら迷惑ですよね。という事で結界ごと外に出しておく。何やら喚いているが関係ない。見せ物になってもらいましょう。
宿で休んでいると2時間が経過したところで部屋の扉がノックされる。扉を開けるとそこにはこれまた豪奢なローブを着た男が2名。
「貴方がコウさんかな?」と40代と思われるローブを着た男が聞いてくる。
「そうですが貴方は?」う〜ん、この人達は自分から名前を名乗るという事ができない様ですね。社会人としてはどうなのでしょうか。
「これは失礼した。私は国の魔法師の1人である魔法師ランス・ベルナーです」するともう1人の男も挨拶した。
「私はベルナー家次男のアルスター・ベルナーです」
「それで何の用ですか?」
「それなんだが外で結界にて捕まっている者らを助けて欲しいのだが」
「お断りします」
「貴様!下手に出て入れば図に乗りよって!」と次男君が吠える。
「アルスター!やめんか!」とお父様の一喝。
「どうもこの国の魔法師は程度が低いのですね。それで能力も無い。あの程度の結界なら何とかなるでしょうに」
「き、貴様!」次男君、またもや叫び私の胸ぐらを掴もうとしますが結界に阻まれます。お〜痛そう突き指ですね。
「本当に詠唱がないとは・・」とかお父さんは言っているしね。
「もしこれ以上の干渉をされるなら戦闘行為と見做して国が管理している地域を破壊しますよ」と魔力を抑えている結界を解除する。辺りには濃厚で空間を歪めかねない程の魔力が漂う。
「くっ!」とお父さんは膝を突き、次男君は尻餅を突き後ずさる。コウは体表に結界を張り直して魔力を抑える。おお、次男君震えていますね。やっとどう言う相手に喧嘩を売ったか分かったかな?
「また来ます」とお父さんは離れていく。勿論、次男くんもね。
「父上良いのですか?」
「あれは我らでは無理だ。叔父上に出張ってもらわねばな。それでも駄目かもしれんが・・」
「そ、それ程ですか?」
「ああ、あれは本当に街を消し飛ばせる魔法を使えるのだろう。それにあれ程の濃密な魔力だ。あれ程の魔力保有量を持つ者など私は知らん」とランスは言うと次男はごくりと唾を飲み込む。
「例えるならば伝説のグリフォンやエンシェントドラゴンに匹敵すると思える程だ」とランスは宿を振り返る。
「国にはあの者に手を出してはいけないと報告する」
「国は納得しますでしょうか?」
「しないだろうな」
「ではどうすれば」と次男は苦い顔をするが、
「最近の国はどうかしているとしか思えん。これは神が与えてくれた国が転換する良い機会になるのかもしれん」と言いコウがいる宿を見て目を細める。
数日が経つと国の使いと名乗る者がコウの元を訪ねる。ローブを着た魔法師が20人。
勿論、コウはお断りする。またもや20人の魔法師は魔法を詠唱しようとするが全員結界に囚われて自滅する。当然、外で見世物となる。
コウは溜め息を吐く。こいつらは成長しないなぁと。
また数日が経つと上級魔法師を名乗る者がコウを尋ねる。
「私は国指定上級魔法師のイル・ランディと申す」と頭を下げる。
「それで何用でしょうか?」
「今まであったことは水に流すゆえ、どうか魔法を教えないで欲しい」
「今まであったことを水に流す?本気で言っていますか?」
「ああ勿論だとも、今までの事は国としては無かったことにしてコウ殿の事を一切罪には問わぬ」
「話になりませんね。襲ってきたのはそちらですよ」
「うん?聞いていた話と違うが・・・どう言う事ですかな」という事で今までの経緯を話すと、
「本当ですか?」
「本当ですよ。ここの支配人にも聞いてください。迷惑しているのはこちらです」
イルは腕を組み少しの間考え込むと、
「分かりました。帰りに支配人にも聴取しましょう。今回はここまでとして私に話を預けて欲しい」と部屋を出ていく。
これでどうにかなる様な者達ではないでしょうね。
それでも何かを仕掛けて来るなら返り討ちにします。
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