第121話 魔法講習
それから数日経つと魔法ギルドから呼び出しがあり、魔法を講習する日程を話し合い、それにより週に3回講習することとなった。
最初の講習に参加するのは秘密裏に選ばれた魔法師5人となる。まだ素性は分からないがそれなりの魔法師だと説明された。
講習の日になり魔法ギルドへと向かう。今日も良い天気だ。
魔法ギルドに着くと会議室に案内される。そこには既に5人の魔法師が椅子に座り待機している。
私が会議室に入ると直ぐにギルドマスターが入ってくる。
「諸君、既に揃っている様だな」と座っている5人と私を見る。
「ではコウさん、こちらへ」と呼ばれたのでギルドマスターの横に並ぶ。
「こちらのコウさんが、魔法の講師となって諸君らに新たな魔法を伝授する」
「おいおい、待ってくれ。その小僧が講師だと?巫山戯るのもいい加減にしてほしい」と一番右に座る30代くらいのイカツイ魔法師が声を上げる。それを見たギルドマスターはニヤリとして、
「ほう、文句があると?」
「ああ、どう見ても10代前半の小僧だ。そんな小僧が我々に教えることなどできるはずが無い」と男がいうと他の4人も頷く。
「では百聞は一見にしかずともいう。演習場でコウさんの実力を見てもらおうか」とギルドマスターを先頭に演習場へと移動する。
「ではコウさん」とギルドマスターに言われて前に出ると右手を的に向けて翳し魔法を放つ。数十の火の玉が浮かび、それが一斉に的へと着弾。
それを見た魔法師の5人は口をアングリ開けてもう無くなった的を見ている。
「これでコウさんの実力は分かったかな?」とギルドマスターが5人にいうとコクコクと5人は頷く。
会議室に着くとギルドマスターはコウに任せると言って部屋を出ていく。それからは魔法師がコウを質問攻めにする。切りの良いところで実践をしてみる。
コウは右手の掌に炎を出す。それを見た5人はホウっと声を上げる。
無詠唱のやり方を見せ、5人に好きな属性でやってみるように言うと、5人は唸りながら得意の属性を掌に出すように考えている。
初めに成功したのは、コウが炎を出したからなのか、火属性の得意な2人が火を無詠唱で出すことに成功。
まだ出来ない3人には、それぞれ得意属性を聞いてコウが無詠唱で属性魔法を見せる。
早かったのは水。コウは水道の蛇口から水が出るように出したが、これを見た水魔法が得意な魔法師2人が20分程度で成功。
更に最後の魔法師は土魔法が得意だと言うことで土を掌に出した。これを見た最後の魔法師も30分で土を出すことに成功する。
それからは魔法はイメージという事を刷り込んで、属性魔法は無魔法により加工されると言うことを前提として講習が進む。
練習方法として無魔法の結界を使う練習方法の後は、他の属性も使えるかも知れないからと魔法師に挑戦させると、やはりいくつかの属性魔法に目覚めた。
それから順調に講習は進み、属性魔法、無魔法の使い方や応用といった事に及び、1か月と短い期間ではあったがある程度身に付いたということで、第一期の魔法講習は終了となった。
それから半年の間、講習を続けて続々と無詠唱が使える魔法師が増えていった。そんなある日・・・。
国の魔法師と思われる者から接触があった。その男は豪華なローブを身に纏いフードを目深に被って、これも豪華な魔法の杖を右手に持っている。その男はコウの行手を遮ると、
「お前がコウという魔法師か?」
「あなたは?」
「そんな事はどうでも良い。俺に付いて来い」
「断ります」
「はぁ?何を言っている。俺に逆らうのか?痛い目を見たいのか?」
「お断りします」
男は道の真ん中で人の往来があると言うのに魔法の詠唱を始める。それを見たコウはその男を結界で包む。そして男は、
「死ね」といって魔法を発動させるが結界内で暴発。その男はボロボロになる。
それを見ていた民衆は喝采を上げる。そこに男の配下と思われる者が数人現れて、気を失いボロボロとなった男を連れていく。
その際、その者らにコウは睨まれたが・・。
まぁ、自業自得ですね。
ふふふ、面白くなってきました。また、来ますよね。楽しみです。
コウはそのまま魔法ギルドにいって、今回起きた事をギルドマスターに伝えるとギルドマスターもニヤリとして「存分にやってくれ」とお墨付きを貰えた。ギルドも何か国に対して思う事がある様ですね。
この日の講習を終わらせると少し商店を周り必要な物を買うと宿へと戻る。すると宿の前に豪奢な馬車が止まっている。
宿に入ると宿の支配人がこちらへと来る。
「コウ様、お客様がいらっしゃっています」とロビー横にある喫茶コーナーを見る。そこには場違いに感じるほど豪華ではあるが趣味の悪いローブを着た男が、数人の簡素なローブを着た男達を従えてお茶を飲んでいる。
こちらに気が付いたのか背後に控えるローブの男が1人、こちらへと来る。
「あなたが魔法ギルドで講習をしている魔法師ですかな?」
「そうですが何か?」
「国家魔法師である魔導師ギルス様が貴様に用がある。来てもらおうか」
「断ります」
「貴様!失礼だぞ!」
「朝の者もそちらの者でしょう。往来での魔法の行使ですよ。どちらが失礼なのでしょうか?」
「確かに朝の者もこちらの配下の者だが、そんな事は関係ない。さっさと来い!」
「断ります」というと男は詠唱を始めるが直ぐに結界で覆う。懲りていませんね。
そして結界内で暴発して男はボロボロになると、ゾロゾロと趣味悪魔法師を先頭にこちらへと来る。
「その方、今何をしたかわかるか?」と趣味悪魔法師は声を上げる。
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