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第117話 別れと反攻

コウの攻撃により少しの間が出来た。コウは柵の中に入ると兵士に抱えられているエイダイを見つける。


「エイダイ殿!」とコウはエイダイに近づく。エイダイは薄らと目を開ける。


「コウ殿・・・来てくださったか・・・ははは、面目無い。やられてしもうた」と笑うがゴフゥっと血を吐き出す。


「エイダイ殿、しゃべってはいけません」とコウは治療魔法をエイダイにかけて傷を塞ぐが、


「はぁはぁはぁ・・・ははは・・もう助からないで・・ね。分かります・・・・コウ殿・・コウ殿・・もう一度一緒に飲み交わした・・かっ・・た」とガクッと事切れる。


「エイダイ殿!!」とコウはエイダイを呼ぶがエイダイは動かない。コウは顔を上げて兵士に問う。


「親父殿は?」と兵士に聞くと兵士は項垂れながら、


「エイダイ殿がやられた後に激昂して敵に突っ込んでいき・・その中で・・」


「くっ!私は敵を殲滅してきます」と門を出る。


許しませんよ。


コウには珍しく魔力を時間をかけて練る。濃厚に圧縮された魔力が、コウを覆う魔力を抑えていた結界を抜けて辺りに漂い出す。


それは空間が歪むような魔力となり、


「1匹残らず殲滅します」


コウの頭上に魔法陣が浮かぶ。それが3重となったところで緑色に光り、ゴゥっという音ともに不可視の風の刃がフナイ軍全体に向けて万単位で水平に降り注ぐ。


一瞬にしてフナイ軍全てが上下に分かれる。中には足のみ切断されたものがいるが殆どの兵士が上下に分断される。


戦場に静寂が訪れる。


それを成したコウは冷たい目で戦場を見つめる。


砦周りのコウがいる以外の場所でも変化が訪れる。フナイ領主を含めた主戦場側が全滅したと触れ回り情報が行き渡ると残りのフナイの兵士は一斉にフナイ領へと散り散りになりながら戻って行く。


数時間もするとコウが率いていた兵士と魔法師が到着し、壊された門は応急処置をしてなんとか修復。


伝令により領境の砦からもフナイ軍は撤退したと連絡があった。


これで少し落ち着くことができる。


夜になるとコウは篝火が焚かれている砦の壁上で星空を見上げていた。


「コウ殿」


コウは振り返る。


「マイドニ殿・・」


「今回は助かった。礼を言う」


「いいえ、私は間に合いませんでした」


「そんな事は無い。親父とエイダイは失ったが領を守ることには成功した。エイダイも親父もそれで満足な筈だ」マイドニはコウから目を離して遠くを見つめる。


コウは奥歯を噛み締めて、


「それでもまた親父殿やエイダイ殿と酒を酌み交わしたかった」と顔を伏せる。


「そうですな。私もそれは残念でしょうがありません。子供の顔も見せられなかった」と星空を見上げたかと思うと目を瞑り、一筋の涙がこぼれ落ちる。


「はい」とコウは力無く言うと、マイドニは顔をコウに向けると、


「コウさん、魔法国へはいつ頃?」


「まだ決めていません」


「それではもう少しの間、我々に力を貸してもらえませんか?」


「はい、私で良ければ」


それから2日経った時、領主軍が戻って来た。


親父殿とエイダイ殿が亡くなったと聞いた領主は嘆き、フナイ領への反攻を誓う。


親父殿とエイダイ殿の葬儀を終えるとフナイ領への反攻作戦のための準備がなされる。数日が経つと軍の編成も終わりフナイ領へと進軍する。


目の前にはフナイ領の砦が見える。


コウは事前にマイドニ殿と相談して砦を囲んだ後に一番大きな砦の門へ魔法攻撃をすると領主に伝えて了承を得ていた。


コウはフナイ軍の砦を囲んだ軍から前に出る。砦から矢が降ってくるが全て結界で阻む。


コウは徐に右手を門へと向けると火の玉を撃ち出す。ゴウッと言う音と共に門へと着弾。


バコォォォンという音がして門が弾ける。


そこから軍を突入させて砦を制圧。殆ど被害を出さずに砦を奪取することに成功する。


それから4つの砦を落としてフナイ領の3分の1を制圧。


フナイ領はマルノス領の3倍の広さがあった。3分の1を制圧したことによってマルノス領と同等の領地を手に入れたことになる。


フナイの領都に迫るがフナイ側より和睦の申し出があり、マルノス領主はこれを受け入れた。


マルノスはフナイの3分の1を手に入れて、賠償金は取らない事となり最低限の守備兵を残してマルノス領へと帰投する。


コウは、この反攻の成果によりマルノスの名誉住民の栄誉を得て金銭の褒賞を得た。


コウは親父殿とエイダイ殿の墓前で頭を垂れる。


「お世話になりました」とコウは呟き歩き出す。そこに、


「コウ殿」とマイドニが声を掛ける。


「ああ、マイドニ殿」


「出発ですか」とマイドニは寂しそうに言う。


「用が済んだらまた来ます」とコウは微笑む。

「そうですか。お待ちしています」とマイドニは言い、コウと握手を交わす。


コウは街道を魔法国へと歩き出す。

お読みいただきありがとうございます。


明日からは1日1話に戻ります。


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